みなさま、明けましておめでとうございます!
本年もマイペースにレヴューをしていきたいと思います。毎度毎度あまり大したこと書いてませんけど、みなさんとこれからも音楽への関心の輪を広げていけたらと考えています。
さて、新年一発目はJ-POPですよ! 以前、浜崎あゆみについて何か書いたことあるけど、こうしてアルバムを取り上げるのは初めてですね。たまには日本の音楽も取り上げよう! ということで、この作品を取り上げてみました。
なんていうか、久しぶりに3000円のアルバム買いましたw 洋楽CDってもっと安い値段で売ってるから、たまにこうした国内の作品を買うと、その高さに驚いてしまいますね。ビンボー人には手を出せないシロモノだわと思ってしまいます(汗)
それはさておき、なぜこのアルバムを買おうと思ったかというと、実はわたし昔からZARDの大ファンなんですね。こんなブラックミュージックのサイトやっといて何ですけど、そういう音楽に触れる前に、ZARDを始めとするビーイングの諸作品との出会いというのがあったわけです(まあ、わたしも昔は世の中のヒット曲を聴いて育ったフツーの青年だったわけです。時はミリオンセラー連発の90年代だし。いつからヲキャマ化したのかしらw)。わたしにとってZARDは言ってみれば青春そのものですよ。だから、いまでもコテコテのヒップホップに食傷気味になった時とかに、ふと清涼剤のように昔のアルバムを再生したりするわけです。それは一種のノスタルジーかもしれないけど、いわば心の支えみたいなもんだったりするのです。
そして、そんなZARDの後期(って書き方がとても切ないのですけど)に、数々のヒット曲を提供したのが、今回登場する大野愛果さんです。今作にはそのZARD提供曲のセルフカバーが収録されています。これはとても貴重ですよ。だって、あれだけポピュラリティーのある歌手であるにかかわらず、ZARDのカバーって世の中にほとんど存在しないんですから(オフィシャルなやつでね。非公式にはたくさんあると思います)。
その理由はいろいろ考えられますが、個人的に思うのは、坂井さんがああして悲し過ぎる最期を迎えてしまったということ、彼女のイメージがあれだけミステリアスな存在であったにも関わらず強固であるということ(ZARDのブランド力ですよね)、そしてビーイングがそのイメージを守るために身内以外に使用を許可していないこと、なのかなあと。内在的にも外在的にもカバーしづらいということですね。
ということで、今作はZARDファンにとってもスルーすることができない作品だと思います。
さて、話を大野愛果さんの方に戻しましょう。彼女はビーイング専属の作曲家として、これまでに数々のヒット曲を世に送り出してきました。職業作曲家、しかも女性であるということで、日本の音楽業界においても貴重な存在だと思います。そんな彼女も、作家活動を開始してから15周年という時間が過ぎたそうです(おめでとうございます)。今作はそんな彼女のこれまで辿ってきた「静かな道程」を照らす、セルフカバー集になっています。
彼女の出世作といえば、倉木麻衣さんのデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」が有名でしょうが、彼女が職業作家としてデビューしたのはその1年前。それがWANDS「明日もし君が壊れても」でした。実は、この曲の作詞は坂井泉水さん(後にZARDとしてセルフカバーしています)で、デビューの時からいわば「黄金タッグ」だったんですよね。彼女の原点に坂井泉水という存在がいた。だからこそ、彼女もZARDには特別な思いがあるのだろうと思われます(インタビューではそのことにあまり触れていませんが)。
その大野さんですが、過去に『Shadows of Dreams』『Secret Garden』(ともに2002年)というアルバムをリリースしています。両者ともに他アーティストに提供した楽曲のセルフカバーなのですが、この時は全編英語詞で歌われています。デモテープは英語で歌われることが多いとのことで、その雰囲気を再現しようとするための工夫だとのこと。彼女自体もミステリアスな存在だったので、そのイメージを守るためにそうした方法をとったとも言えそうですね。
作曲家ということもあって、彼女の歌手としての活動は多くありませんが、多くの作品にコーラスとして参加しています。また、ZARDの追悼ライブなどにもコーラスとして参加しており、人前に出る貴重な機会となっています。youtubeではライヴハウスで行われた彼女の貴重なパフォーマンスも公開されていますので、興味があればチェックしてみてください(→たとえばコレとか。意外としっかり歌える人です)。
さあ、そんな大野愛果さんの3枚目とアルバムが今作になります。なんと11年ぶりのリリース。そして、今回ははじめて原曲のまま日本語詞で歌っています。いったいどんな仕上がりなっているのか、さっそく中身にうつっていきましょう。
(1)Get U're Dream(ZARD)
オープニングにいきなりZARDのカバー。これはテンション上がりますね。原曲は2000年、NHKシドニー五輪のテーマ曲として採用されたアップテンポなナンバー。珍しくヴァージョンが複数あって、タイアップとの絡みで試行錯誤したことが伺える作品になっていましたね。この楽曲を、彼女はドラムレスでストリングスとコーラスが主体のトラックで歌い上げています。所々に挿入されるコーラスワークはオリジナルと同じもので、歌声は違えど原曲に通じる爽やかな世界観が表現されているのが素敵です。
(2)key to my heart(倉木麻衣)
今作中、唯一アルバムからのチョイス。倉木麻衣の『Fairy Tale』(2002年)というアルバムに収録されています。とはいえ、ゲームのCMでも使用されていたので聴いたことがある人もいるかもしれません。原曲は2ステップ調のリズムに浮遊感のあるシンセとコーラスワークが印象的な楽曲でしたが、カバーではリズムは控えめで、彼女の美しいコーラスが全体を包み込むような、優しい曲調に仕上がっていますね。沖縄風の音階も取り入れられています。
(3)笑顔でいようよ(三枝夕夏 IN db)
原曲はポストZARD的なポジションを狙っていた三枝さんの2004年のシングル。サビの部分も溌剌でよいのですが、出だしの「同じ星空見上げながら~」が個人的に「いい出だしだな~」と思ったりします。カバーでも、原曲のロックアレンジを踏襲していて、大野さんのイメージをいい意味で裏切られるような、そんな軽快なアレンジになっています。
(4)Time after time~花舞う街で~(倉木麻衣)
オリエンタルテイストの楽曲ですね。原曲は2003年に三ヶ月連続リリースの第1弾として発表され、当時立命館の学生だったということもあり、京都の春を思わせる世界観が印象的でした。カバーでは、やはりリズムよりもコーラス・ワークを際立たせたアレンジで、大野さんのやさしい歌声もよく調和しています。
(5)静かなるメロディー(竹井詩織里)
2004年リリース、竹井詩織里のデビュー曲だそうですが・・・原曲は聴いたことありませんでした(汗) そして、ネットで探しても音源が見つからない。ということで比較することはできませんが、爪弾くギターの音色と3拍子のリズムがオシャレチックな雰囲気を醸し出す、ふわっとしたアレンジになっていますよ。
(6)かけがえのないもの(ZARD)
真ん中に再度ZARDの楽曲をもってくるあたり、こだわりを感じますね。原曲は2004年に発表された珠玉のラブバラード。本当に好きな曲なんですけど、これを大野さんはピアノ演奏のみのシンプルなアレンジでカバーしています。シンプル・イズ・ベスト! ちなみにピアノは西村広文という人が弾いています(youtubeでこの人の演奏見たけどとめちゃくちゃ上手です)。
(7)beginning dream(菅崎茜)
そんな人いましたねー、という菅崎茜のデビュー・シングル。2002年、当時彼女は13歳でした! でも、ヒットに恵まれず、すぐにフェイドアウト・・・売り出し方が下手だよね。まあ、そこまでヒットする要素があったのかと言われれば微妙ではありますが。それはさておき、大野バージョンはいくつものギミックを施し、ファンタジックな要素を盛り込みつつ、よりオトナなパワーポップへと昇華させた感じになっています。
(8)君去りし誘惑(上木彩矢)
上木彩矢もいまいちブレイクしきれず~~、という人でした。和製アヴリル・ラヴィーンみたいな方向性だったと思うけど、二番煎じはやはり受けないということでしょうか。大野版は原曲のロック色は押さえられ、よりライトでポップなテイストになっていますね。何というか、こっちの方が楽曲によくマッチしているような気がします。
(9)1000万回のキス(倉木麻衣)
こちらは2011年の倉木麻衣。比較的最近の楽曲からのチョイスになりますね。原曲はとにかく哀愁漂う曲調で、彼女の歌声にすごくマッチした良曲なのですが、カバーでは大胆にもダンサブルなアレンジを採用、のっけからオートチューン化するヴォーカルにバキバキのシンセサイザー、意表を突く展開ですが功を奏しています。
(10)Forever You~永遠に君と~(愛内里菜)
歌手としては引退してしまった愛内里菜の2002年のシングル。今作では2002~2005年あたりの楽曲がよく取り上げられていますが、作曲家として脂が乗っていた時期ということなのでしょうか。原曲と同じ徳永暁人がアレンジしなおしていて、アップテンポながらよりゆったりとしたグルーヴ感のトラックに仕上げています。そして、大野さんのヴォーカルはとてもふわっとしていて、愛内さんのハイトーン・ヴォイスとはまた違うアプローチを試みています。
(11)君の涙にこんなに恋してる(なついろ)
なついろ、その存在を全く知りませんでしたw 2011年デビューの3人組だそうです。タイアップはコナン、というのもすでに話題性がなく、キレイなお姉さんが歌っているPVが相変わらずのビーイングで食傷気味になりますね。原曲はハツラツとしたポップスでしたが、こちらはボサノバ風のオーガニックサウンド。ガラッと雰囲気が変わりますよ。
(12)don't stop music(the★tambourines)
なんというか、歴史を紐解くということはそういうことなのだなあと思いつつ、この人たちもこそっと活動して、そしていつの間にか解散していましたね。リリースは2005年でシングルしてはこれがラストとなっています。原曲はコケティッシュなロックサウンドでしたが、大野バージョンも負けじとポップさ全開の展開。聴いていて思わず海に出かけたくなるような、そんな楽しいサウンドです。
(13)夏を待つセイル(帆)のように(ZARD)
やはりこのアルバムの核はZARDなんだなと思わせる曲の配置。2005年リリースのこのシングル。そういえば、ZARDの『君とのDistance』ではオープニングでしたが、今作では逆になっていて、そこら辺も意識したかもしれませんね。アコギの音色に導かれるように楽曲は進行、途中からはストリングスも入って楽曲を盛り上げますが、派手な仕掛けはなくとても大切にZARD曲を扱っているなあという感じがしますね。アウトロが彼女らしいコーラスワークで締めくくられるのも素晴らしいです。
全13曲収録。過去の名曲をカバーしたのだから悪いわけないとは思うのだけど、それにしても一つ一つの楽曲のクオリティが高いのには驚きです。アレンジもバラエティに富みつつも品があって、大野愛果というアーティストの個性を際立たせていると思いますね。
何より、歌手としての彼女の声をこんなにガッツリ聴くのは初めてなのだけど、なんとも瑞々しい感じがして、それはとても新鮮な体験でした。もう30代半ばとは思いますが、歌声はとても若い。専従シンガーじゃないからこそかもしれませんが、彼女の新たな魅力に触れた気がしました。
ビーイングファンにはもちろんたまらないアルバムですが、原曲を知らなくても十分に楽しめる良質のポップ・アルバムだと思います。
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