2014年1月21日火曜日

Robin Thicke『Blurred Line』(2013)

年が明けると寂しいもので、話題作のリリースというのが途絶えてしまうのです。みんな年末に大作をぶつけてきますからね~。

ということで、フレッシュなブログネタがない! 仕方なく?去年買ったけどレビューできていないアルバムって何かなかったかな~、と思っていたのですが、そんなときにふとこのアルバムの存在に気づきました。

全米シングルチャートでついに年間1位に輝いたあの大ヒット曲を含むこのアルバム、なのにまだレビューしてなかったじゃありませんかw そりゃ、いけませんね。でも、そういえば、曲単位では何度も聞いたけどアルバムとしてはそんなにリピートしてなかったかもしれない・・・別に内容が悪かったわけではないのだけど、とにかく1曲目のインパクトがデカすぎてw

せっかくなので、今回はこのアルバムを取り上げたいと思います。

ロビン・シック、前作『Love After War』以外は手元に揃っているのだけど、不思議なことに、ジャケ写がどれもこれも垢抜けない人ですねw R.ケリーよりマシかもしれないけど、あまりそういうヴィジュアル面で勝負していない人なのかもしれません(元がイケメンだからか)。ブルー・アイド・ソウルという立ち位置が逆にそうさせているのかもしれませんが、とにかく今作のアートワークも、あのインパクト大のPVに比して平凡なのはなぜなのか、気になってしまいます。

それはさておき、彼の音楽活動を振り返ると、シンガーソングライターとして彼がすでに長いキャリアを誇っていることがわかります。最初にクレジットが確認できるのは、ソングライターとして、あのブランディのデビュー・アルバムに登場します。1994年、いまから20年も前ですよ。逆算すると彼は当時15~16歳ということになりますね。早熟です!

しかし、彼がそれからシンガーとしてブレイクするにはもう少し下積みが必要でした。8年後の2002年に『Cherry Tree Blues』(翌年『The Beautiful World』としてリイッシュー)というアルバムでようやくデビューしますが、これがさっぱりヒットせず。さらに時間が経ち、2005年にはネプチューンズが主宰するスター・トラックと契約。その後にリリースされた2006年の『The Evolotion of Robin Thicke』でいよいよそのチャンスをつかみました。これも、すぐにヒットしたわけではなく、2007年になってシングル「Lost Without U」がじわじわヒットしたことを受けてのブレイクでしたね。ちなみにこの曲、「こんな地味な曲が受けるのかー」という程に、静けさ漂うソウルナンバーなんですが。

それ以降、コンスタントにアルバムをリリースし、客演仕事も着実にこなしてきたわけですが、これまでは、表舞台で華々しく活躍するというよりも、どちらかというと通に愛されるような王道のソウルを地道に生み出す音楽家というイメージでした。

だからこそ、あの「Bluured Lines」のビッグヒットには、本人が一番驚いているのではないでしょうか。自作自演系なのにファレルのレーベルに在籍しているということが、逆に今回のチャンスの一因ではあったのですが、これまでのイメージとは違う「はっちゃけた」彼の姿というのもまた、新たなファン獲得の要因となったのではないかと思います。とにかくインパクトがすごかった!

そんな彼の通算6枚目となる本作をさっそく見ていきたいと思います。基本的には彼と相棒のPro-Jの共同プロデュースですが、何曲かで外部プロデューサーが参加しています。


(1)Blurred Lines feat. T.I. & Pharrell
いまさらながら、2013年の最大ヒットがこれって一体どういうことなんでしょうねw スゴイことだと思いますよ、いろいろと。まず、ファレルがプロデュースということで、いかにも彼が作りそうなパーカッシヴなトラックなんだけど、とにかくシンプルな構成で、こういうの作るのがどれだけ難しいかっていう話ですよね。マーヴィン・ゲイ「Got To Give It Up」との類似性を指摘する声もありますが、古き良きソウルのテイストを現代風にアップデートしたことが幅広い人気に一役買ったと言えそうです。それに、彼お得意のファルセットが効果的に使われているのもポイント。この曲の醸し出すセクシーな雰囲気に貢献しています。そして、なんといっても、ヒットの火を爆発させたのがあのPVでしょう。おっぱいモロ出しのモデルのお姉さんたちと意味なく戯れる例のビデオ(後に修正版が発表されました)、とにかく賛否両論ありましたが、結果的にこの曲のヒットにつながったのは間違いないですね。売り出し方含めいろいろとよくできた曲だと思います。

(2)Take It Easy On Me
アルバムとして問題は2曲目からですよ。とにかく1曲目のインパクトが強かったのでね。この曲では、なんとティンバランドがプロデュースに参加しています。これも、なかなか強力なナンバー。いくらか現代よりなダンサブルなサウンドですが、ティンバらしいビート感とシンセで思いのほかポップな仕上がり。今回のロビン・シックは一味違う! そう思わせてくれるこちらも挑戦的な一曲です。ただ、ジャスティン・ティンバーレイクがやっても違和感ないというか、そこら辺は敢えて狙ったのかなあという気がします。

(3)Ooh La La
自作曲の3曲目にして、ようやく彼らしいグルーヴ感。小気味良いギターフレーズとファルセットが夢見心地な気分にさせる、スムーズなディスコティック・ナンバー。こういう古き良きソウルテイストは、もともと彼が得意とするところ、文句なしにスバラシイです。

(4)Ain't No Hat 4 That
こちらもカッティング・ギターとホーンセクションが鳴り響く、マイケル風の軽快なダンス・グルーヴ。冒頭には実子の声が挿入され、父親のアラン・シックがソングライティングに参加した一家総出な一曲でもあります。

(5)Get In My Way
同系列の楽曲が続きます。前半はディスコ調でファンキーなグルーヴが主軸となっている印象ですね。歌詞はあまり深い意味はなくて、イケイケなサウンドに身を委ねるのが正解、といったところでしょう。

(6)Give It 2 U feat. Kendrick Lamar
サード・シングルです。いまノリにノッているケンドリック・ラマーを迎えつつ、サウンドはこれまたベース音のうねるグルーヴからEDMっぽい方向へと展開する意表を突く流れ。歌はファルセットで攻めています。ドクター・ルークがプロデュース、(1)の続編を狙ったようなPVではリミックス版が採用され、2チェインズも参加しています。
(7)Feel Good
こちらはウィル・アイ・アムがプロデュースした、紛れもなくEDMというかシンセポップな一曲。これはかなり意外なコラボという感じがします。とにかく新しい風をもたらそうということでしょうか。こんなに踊れるロビン・シックのサウンドというのも珍しいですね。PVは、意味なく女性たちを躍らせるというシリーズ・・・さすがに狙いすぎているようなw

(8)Go Stupid 4 U
引き続きウィル・アイ・アム制作。さすがに同じ曲調というわけではなく、アップテンポながらも控えめなグルーヴ感で、ウクレレを取り入れたりして、音にアクセントをつけていますね。とらえどころの難しい不思議な曲です。

(9)4 the Rest of My Life
セカンド・シングルとしてリリースされた楽曲で、従来路線のロビン・シックを堪能できるオトナのバラードです。これまでのファンはこの曲でさぞ安心感を覚えるでしょうw 歌詞は奥様との馴れ初めをモチーフにした内容で、ベタな告白の歌と捉えることも出来ます。

(10)Top of the World
序盤の自作曲よりも控えめながらもスムーズなグルーヴの一曲。注目すべきはラップ調の歌唱でしょうか。どちらかと言えばストーリーテリングっぽいのですが、飛び道具的な展開で驚きでした。

(11)The Good Life
ラストは、ピアノとギターがベタに響くバンドサウンドのロッカバラード風。歌い方もどこか荒々しい部分があって、これも狙ったものなのか、従来路線から外れた熱唱を披露。


全11曲収録。デラックスでは更に3曲追加されています。

全体として"Good Feeling"に貫かれていて、アルバムとしても、とても良く出来ていると思いました。一曲目のインパクトがとにかく強烈なのだけど、その後のグルーヴィーな展開もロビン・シックというアーティストの殻をいい意味で破っていて、これはヒットして当然という気がしました。

欲を言えば、ファレル制作の濃いナンバーがあと一曲あれば・・・と思ってしまうのですが、そうすると彼の色が強くなってしまうということなのかもしれませんね。

まだシングルしかチェックしていないという方はアルバムもぜひ聞いてみて下さい。



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