実はリリースされた当初、このアルバム一度CDショップで試聴したんだけど、そのときは「今回は見送ろう」って思ったアルバムの一つだったんですよね。それほど、パッと聴いたときの印象はそんなによろしくなかった。
それでも、次にCDショップにいった際に結局買うことにしたのは、このアルバムの批評家のみなさんの評価があまりにも高かったから。「え、このアルバムそんなにスゴイの?」と思い、ちょっと高かったけど、わざわざ2枚組のデラックス盤を購入して、聴いたのでした。
でも、何回か聴いて、いつの間にかコレクションの中へ・・・気分の問題もあるけど、そんなにしょっちゅう聴いてられないなあというのが、正直なところです。だって、暗いねんもんw
ケンドリック・ラマーの名前、というか存在を意識したのはThe Gameの『The R.E.D. Album』の2曲目に入っていた「The City」を聴いたときでしょうか。これにはぶったまげました。完全にゲームを食うような感じで威勢よく彼がラップしていたから。スキルもさることながら、なぜ冒頭からこんな主役食いな客演をゲームは採用したのだろうかと。まあ、まだメジャーじゃなかったから、同郷のラッパーとして後押ししたかったのかもしれませんね。結果としていまここまで成功を収めているのだから、親分としての役割はきちんと果たせたということでしょう。
このアルバム、ドクター・ドレーの主宰するアフターマスからのリリースです。今作でもラッパーとして登場してますが、残念ながらビートは提供していません。キャッシュマネーみたいにレーベルとして成功をおさめる気などさらさらなく、いままで何人ものアーティストが塩漬けにされたこのレーベルからアルバムが出たというのがある種の奇跡かもしれませんが、ドレーのOKをもらえたというだけで、もうタダ事ではありませんよね。
さて、内容について何曲か取り上げて触れて行きましょう。残念ながら称賛されている彼のリリシズムについて解説できる力量はないので、ざっくり聴いた印象でしかないですが、まだ聴いてないという方は参考になさってくださいませ。
(1)Sherane a.k.a. Master Splinter's Daughter
カセット再生音やスキットなどサウンドエフェクトが混じりつつ、基本的には音数少なめのダークなビートに、ラマーがひたすらラップする展開。ドレイク以降な感じもするのだけど、こういうダークで静謐なサウンドがベースになってるから、これがダメな人は聞くのが辛いかもしれないです。
(2)Bitch, Don't Kill My Vibe
フックなど含めややメロウな雰囲気の曲で、ラマーのラップも緩急つけた感じ。それでも地味やなという印象。前作からの続投となるサウンウェイヴがプロデュースしてます。
(3)Backseat Freestyle
「アーリンキンキン」という不思議なヴォーカルの反復から始まり、控えめなでエスニックな雰囲気もするビートに乗せてラマーの前のめりなパワフルなラップを披露する一曲。途中でエミネムっぽいフレーズが飛び出したり、この人のスキルの多彩が一曲で堪能できます。
(6)Poetic Justice feat. Drake
ドレイクをフィーチャー。ジャネットの「Any Time, Any Place」をうすーくサンプリングした、3rdシングル。旬なアーティスト同士の共演で、R&B/Hip-Hopチャートでもトップ10ヒットしてますね。二人のラッピングスタイルを比べることができるのがおもしろいです。
(9)Swimming Pools (Drank)
アルバムからの2ndシングルで、アルコール中毒についてラップしたもの。スイミングプールっていうのは、「酒に溺れる」ことのメタファーみたいですね。
(10)Sing About Me, I'm Dying of Thirst
二つの楽曲をくっつけた12分に及ぶ大作。こういうの入れてくるあたり、コンセプチュアルなアルバム制作を志向していることがよくわかりますよね。
(12)Compton
アルバムからのリードシングルにしてDisc1のラストを飾るコンプトン賛歌。ドクター・ドレーが客演した注目曲・・・のはずだったのだけど、チャートアクションはいまいちでしたね。これまでの流れで聴くと、この曲だけ少し音色が違って、重厚な音作りという感じがします。ジャスト・ブレイズが制作しているので、当然といえば当然かもしれませんが、個人的にはこういうサウンドのほうが聴きやすいなとは思います。ただ、途中でなつかしのヴォコーダー投入したり、盛り込み過ぎたのかもw
Disc2には、ボーナストラックとして3曲収録されていますが、3曲目のメアリーJ.ブライジとの共演曲(3)Now or Neverはある意味注目だと思います。この曲だけめちゅくちゃポップな仕上がり。わざわざラマーがしなくてもいいような気もするけど、こういうのもできるというアピールにはなるでしょうね。メアリー好きとしては、たまらん一曲なんですけどね。
ということで、あまり深いところまで踏み込んで書くことできませんでしたが、リアルヒップホップというか、ハードコアなヒップホップを求めている向きには、今作は刺激的な一枚だと思います。
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