さて、今月の音楽業界で一番の話題と言えば、このJTの7年ぶりとなる新作でしょう。現地点で、当初予想された初週50万越えから上方修正され、いきなりミリオンヒットが見えてきたというニュースがあり、今年前半の最大のメガヒット作であることは間違いないでしょう。
それにしても、鮮やかなカムバックだと思います。前作の『Future Sex/Love Sounds』が1年以上にわたり大ヒットしたがた故に、すぐに新作をリリースするとは思えなかったけど(その間、俳優業も積極的にこなしていたし)、7年というのは相当なブランクなはず。にもかかわらず、誰もがそのリリースを待ち望んでいたかのように、そしてその期待に応えるように、JTはまたこの時代に強力な新作を世に送り出してきたわけです。
そして、前作では参加を断られたというJay-Zを迎えての新曲「Suit & Tie」で、突如としてその存在感をアピールしたかと思えば、立て続けにアルバムリリースの発表、自身もTV番組などに積極的に出演するなどして巧みなプロモーション活動を展開。周到な準備を得ての満を持してのリリースです。ここまで見事な復活劇も珍しいのではないかと思います。
もちろん、その前提として、彼の音楽性の素晴らしさというのがあるわけですね。それこそがスターの証でもあるわけだから。期待はずれのものを出しても、それに金を出すほどリスナーは甘くないわけです。
ということで、文脈を語るだけでもたくさんの情報が必要な、このアルバムについて、わたしなりの感想を書きたいと思います。
まず、今作の特徴は、前作と同様にティンバランド(およびその片腕J-ロック)をプロデューサーとして迎え、ガッツリチームを組み一つの作品をつくりあげてきたこと。正規版全10曲という曲数ながら、一曲の演奏時間が長く、1曲の中でもビートが変化するなど、シングル量産というよりは、全体としてのコンセプトを優先した印象ですね。
では、さっそく内容へ。
(1)Pusher Love Girl
ゴージャスなストリングスから始まり、JTお得意のセクシーなファルセット・ヴォイスを生かしたミディアムテンポのブルー・アイド・ソウル。のっけから8分もある長尺曲なんだけど、途中でティンバランドっぽいビートブレイクがあったりして徐々に変化しながら進行するのが面白いですね。これが差異と反復というやつですかね。
(2)Suit & Tie feat. Jay-Z
アルバムからのリード曲で、Jay-Zのラップをフィーチャーした強力な一曲。最初聴いた時、冒頭の「スーアンターイ」の呪術的な響きに驚いたのだけど(たまに頭の中でこのフレーズがぐるぐる再生されたりするw)、その後はホーン・セクションを交えながらきらびやかなサウンドが展開するスムーズな曲になっていますね。気分的に夏あたりに聞きたくなる感じかなあって思います。あと、言うまでもなく、Jay-Zのラップはここでもドープに決まってますね。
(3)Don't Hold The Wall
ティンバランドお得意の中近東的なリズムを取り入れた、怪しげな音像が魅惑的な一曲。歌として聴くと取り留めのないような感じもして、さすがにこれで7分かあ、って感じもするのではあるけど。
(4)Strawberry Bubblegum
タイトルにイメージされるようなスイートソウルな一曲。曲の後半でフュージョンっぽいブレイクが入ったりして、オシャレ感が増大されてますね。こちらも8分の長尺。
(5)Tunnel Vision
細かく刻むようなメロディーとティンバでしか作り出せない特徴的なアップビートが、JTっぽいなーと思わせる一曲。前作のサウンドが好きな人なら、この曲はツボでしょう。カッコイイです。
(6)Spaceship Coupe
再度テンポダウンしたソウルナンバー。ちょっと気だるい感じで、聴いてる方も、なんだかユラユラした気分になりそう・・・後半になるつれ音数が少なくなっていきますよ。
(7)That Girl
本編では一番短い曲(といっても5分弱だけど)。こちらも、緩急おりまぜた展開のセクシーなミッドバラード。今作にはこの手のサウンドが多いから、JT的にはこういうのがしたかったのかなあ・・・と思わせますね。
(8)Let The Groove Get In
意外にもラテンフレイバーを取り入れた聴いていてアツくなるアップテンポなダンスナンバー。タイトル的にもそのまんまですけど、ここで一発かましてきたって感じですね。
(9)Mirrors
セカンドシングルでUKではすでにチャート1位を獲得してますね。イントロのギターフレーズからはどんな曲が始まるんだろうと期待させられるのだけど、そこからあのティンバランドらしい強烈なビートが展開されるわけで、これはもう反則だわ~って思いますねw メロディーラインがアルバムの中でもクリアなので、キャッチーで覚えやすいのがまたいいです。
(10)Blue Ocean Floor
本編最後を飾る一曲。ストリングスを基調とした静かな曲調だけど、ところどころにサウンドエフェクト的なものが挿入されたりして、ドラマティックな仕上がりになってますね。
※これにデラックスではボートラ2曲が追加されるのだけど、ここでは割愛します。
これまでの延長線上にありながら新しい部分も混ぜ合わされ独自のサウンドでまとめあげた、JTらしいアルバムだなあと思います。そして、全体としアダルトな仕上がりで、30代になった彼ならの流儀を披露したという感じでしょうかね。その分、以前の作風で見られたクールなダンス・ナンバーを期待する向きにはやや物足りないかもしれないとも思います。
早くも続編の話が出てきたりもしますが、とにもかくにも、この素晴らしい新作をしばらくの間堪能したいと思います。
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