2013年6月23日日曜日

Chrisette Michele『Let Freedom Reign』(2010)

クリセット・ミッシェルの3枚目となるアルバム。サーカスをイメージしたようなアルバムのジャケ写も印象的で、エネルギッシュで弾けたクリちゃんがアピールされています。

何が本来的な彼女の姿なのかわかりませんが、サーカスのピエロのごとく、ある種の仮構されたイメージが先行した作品かもしれません。ポップでパワフルでエネルギッシュ。過去作に比べて、弾けていてそれはいいと思うんですよね。ただ、彼女のような「声でそれとわかる」ほどの素晴らしいヴォーカリストが目指すべき方向としてこれで良かったのか、という疑念が出ても仕方ないかもしれません。ことばで表現するのは難しいけど、デビュー作で感じられたような「艶」みたいなものは、この作品では希薄になったような気はします。それが好きな人には今作は不満かもしれないですね。

断っておきますが、わたしはこのアルバム、とても気に入っているのです。過去作に比べて批評家の評価がいまいちなのがむしろ気に入らないぐらいなのですが(笑)、それでも、いまや、彼女にとって最高傑作になるであろう『Better』を前にして、そうした控えめな評価を下さざるを得ないのかもしれませんね。

今作では、全曲をチャック・ハーモニーのプロデュースに委ねるという、R&Bでは珍しい(自作自演系は除く)試みをしています。それが功を奏したのかどうかと言われると、何とも評価しがたいものがありますが、相性は決して悪くないでしょう。ハーモニーが一人でここまで多彩なサウンドを作り出せたというのにも驚きですし。でも、メリハリつけるためには、もう少し違う視点があった方がよかったかもしれないですね。


簡単に中身に移りましょう。


メルヘンチックなイントロ(1)についで、(2)I'm A Starが始まります。ニーヨがソングライティングを担当したこの曲、リード・シングルとして発表されましたが、正直言うとあまり好きじゃないかも。ちょっと彼女っぽくないなあと(サーカスの華やかなイメージには合っているんだけど)。アリシア・キーズの某曲にちょっと似てるしw


(3)Number One
これまたアップテンポで力強い一曲。これは好きですね。歌詞は、自分に言い聞かせるように「わたしが一番なの」と歌っていて、こういうメッセージ性ある曲は、R&Bでは珍しいかも知れないですね。

(5)I Don't Know Why, But I Do
ジャズミン・サリヴァンがソングライティング、ジョン・レジェンドがピアノで参加した壮大なバラード。所々にジャズミンっぽいなと思わせる節があって面白いです。

(6)Let Freedom Reign feat. Talib Kweli & Black Thought
タリブ・クウェリとブラック・ソートというコンシャスラッパー二人を迎えて、クリちゅん自身もラップしちゃう挑戦的なヒップホップ・ナンバー。お題は「アメリカ社会と自由」。

(7)Goodbye Game
アルバムからのセカンド・シングルとしてリリースされた、ミディアム・テンポのバラード。後半にかけてクリちゃんの熱唱が凄まじいですが、それと同時にギターリフも鳴り響いたりして、そういう点ではポップな展開ですね。


(8)So Cool
再度ニーヨがソングライティングした一曲で、クリちゃんにしては珍しいライトな4つ打ちのアップテンポナンバー。わたしには違和感なかったんだけど(むしろ好きな部類)、これまでの流れ踏まえるとダメっていう人いるかもしれないですね。


(9)So In Vein feat. Rick Ross
リック・ロスがお返しで客演参加してるけど、まあいなくてもいいかなあという感じ。

(11)I'm Your Life
やっとクリちゃんっぽいなあと思わせる、ちょっとジャジーで瀟洒な雰囲気の一曲。跳ねたピアノの音とかも相まって、ちょっと一休み的な力の抜けたナンバーになってます。

(13)Unsaid
ドラムの音が力強いバラードで、後半にまたしてもギターがw こういうドラマチックな展開好きやなあ、チャック君は。

(14)If Nobody Sang Alone
チェロの音色が印象的な静謐なバラード。ちょっと物悲しい雰囲気ですね。

(15)I Know Nothing
シメとなるミディアムテンポのナンバー。正直ね、後半の楽曲の展開がちょっとマンネリ感が強くて、そこはあんまり面白みがないなと思います。


インタールード含めて全15曲。改めて聴いてみて、やっぱりポップさが全面に出た印象で、そこがうまく行ってない部分なのかなとは思いました。嫌いじゃないんだけど、ちょっとマンネリなところもあるっていうね。歌詞はそれなりによかったりするんだけどな。



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