2013年12月14日土曜日

R. Kelly『Black Panties』(2013)

現在46歳。もうおじさんだと言っていいと思うんですけど、振り返れば20代のときからもうオッサンみたいな風貌してたわけで、いまさらヴィジュルアルのことを気にするような感じじゃないかもしれませんね。しかし今回のジャケ写のヴィジュアルは秀逸じゃないでしょうか(逆にいままでなんであんなに垢抜けないアートワークだったのだろうと不思議なんですけど)。

アルバムのタイトル通り、黒パンティを履いた女性をバイオリンか何かに見立てて弦を引くケルズ氏・・・R&Bではそういう女性を楽器に例える歌詞があっても不思議じゃないけど、まさかこうやってヴィジュアル化するとは思いませんでしたわw しかも、それだけじゃなくて、実際にこの格好でライヴ・パフォーマンスもしちゃったんだから、もう何を言わんかですね。

ちなみに上のやつは通常版ですが、デラックスの方はエラいことになってまして、酒池肉林っていうんですかね、インパクトが強すぎですよ、アレは。出荷される前になってカモフラージュのための紙が追加されるとかね、もう笑うしかない。

枯渇しないエロス、ほとばしる妄想、これぞ絶倫、いや才能ですよね。前作から1年半のスパンを得てリリースされたこのアルバム、ソロとしては通算12枚目になります。ちょうど記念碑的なデビュー作『12 Play』から20年という月日が流れたわけですが、相も変わらず、こうしたギンギンのR&B作品を送り出してきたのですから、もう驚きとしか言いようがありません。デビュー作から自作自演を続けてきた彼が、いまなおこうしてクリエイティヴでいられるのも、あくなき音楽と性への探究心があるからだと推察されるところです。帝王たる所以ですね。

ここ最近の動きとしては、レディー・ガガとの共演が強烈でしたが、それより遡ると、過去2作では彼のソウル愛を感じる、とてもクラッシーな作風で勝負してきたわけです。セールス的にはそれほど伸びたわけではないけど、彼の才能というか実力をまざまざと見せつける、評価の高い2作だったと思います。人気に陰りが見え始めていたところだったので、あれは起死回生の作品だったといいと思います。

ただ、そうしたソウル回帰的なアルバムの発表の際にも、性愛路線の作品に今度は取り掛かるという話はあったわけで、結局彼はR&Bというフィールドにこだわりながらも、ひとつのことに留まることが出来ない人なんだなあと、そう思いますね。そして、それを期待しているファンもいるわけですね。

そんなあれこれがあってリリースされたこのアルバムですが、久しぶりの性愛路線、過去2作で彼のことを知ったリスナーにとってはその作風の違いに驚くこと間違いなしでしょう。ただ、ヒップホップアーティストとの数々の名共演もある彼だけに、こうした作風を待っていたリスナー層も同時にいることだと思います。もう、これはどのケルズ氏が好きかという話なのですが、ワタクシ的には、「あれもこれもひっくるめての師匠よ」と言いたいと思います。


それではさっそく中身にいきましょう。当然のごとく全曲のソングライティング&プロデュースに彼が関わっていますが、今回は全曲、(比較的知名度の低い)多くのプロデューサー達と共作していて、新たな風を吹き込もうとしていることがわかります。


(1)Legs Shakin' feat. Ludacris
のっけからスクリューヴォイスを使用、トレンドを取り入れつつ、基本は指パチをベースにしたしっとりしたトラック。早口歌唱も飛び出し、冒頭からR.ケリーの世界観ですね。そして、歌詞なんですが、たとえば「ガール、約束するぜ、俺なら一晩中君にキスし続けられる」っていうフレーズが登場します。しかも、こうロマンティックな意味合いじゃなくて、それこそ足が震えるほどに・・・という具体的なアレでして、もうオープニングからいろいろと全開なんですね。リュダクリスもそのケルズ氏に応えるかのようなエロいラップを披露しております。

(2)Cookie
アルバムのリリース前に公開されていた曲。こちらも曲調はダーティーサウスな感じで、声もオートチューン化されていて、極めてヒップホップ調。そして、歌詞がオレオという誰もが知っているあのクッキーを題材に、「中身を舐めるのが大好きなんだ、オレオを食べるみたい」と、オレオを女性器とシンクロさせた、子供には決して聴かせられないク◯ニ賛歌になっています。

(3)Throw This Money On You
ミディアムテンポな曲が続きます。「君のためにお金を使いたいんだ。」と女性に対して歌っていますが、その相手はおそらくストリッパー。実際に観てインスピレーションを得たのでしょうか。 

(4)Prelude
3分ほどの電話スキット。インタールードにしては長すぎる! Fワード連発だし・・・スキップするのが懸命だと思います。

(5)Marry The Pussy
でましたよ、またすんごいのが。曲調はミディアムテンポのしっとりした感じなんだけど、のっけから「俺はお◯んこと結婚したい(指輪もつけてあげたい)」って、なにそれw でも、この曲、全編にわたっておま◯このことを歌っていて、つまりはおまん◯賛歌なわけです。いったいどんな神経してるんでしょうw

(6)You Deserve Better
うーん、なんというか曲調がなんでここまで一緒なのよ、っていうぐらいのオートチューン押しですね、今回は。歌詞は、前曲に比べたら穏当な感じがしますが。

(7)Genius
ちょっと曲調が変わって、ソウルではないけど、ぬくもりのあるR&Bの雰囲気ですね。にもかかわらず、歌詞は「ガール、今夜君はセックスの天才といっしょに寝てるんだぜ」と、性豪自慢な内容だったりするのですが。

(8)All The Way feat. Kelly Rowland
本作唯一のゲスト・シンガーとしてケリー・ローランドが登場、曲もスイートソウルな雰囲気でいい人選です。歌詞もそんなにエロくないので、シングルカットされるかも。

(9)My Story feat. 2 Chainz
リード・シングルとして発表されたこの曲。「これが俺のストーリー、カネ、クルマ、オンナ」とラッパーのごとく歌い上げるケルズ氏、人気の2チェインズを迎えて、ストリート感のあるナンバーに仕上げています。

(10)Right Back
ちょっとシリアスな雰囲気で、Nワード連発。ラッパーのごとく、ストリートで生きざるを得なかった同胞たちのことを歌い上げています。

(11)Spend That feat. Jeezy
これまたゴリゴリなヒップホップ調な一曲。ジージィのラップもシリアスな雰囲気。ケルズ氏もラップ調な強面歌唱を披露。ちょっとイカツイですね。

(12)Crazy Sex
再び性愛路線へもどって、狂ったようにセックスしようぜ、と訴えかけるケルズ氏。「Let's Go Twelve Play」という一節もあります。

(13)Shut Up
最後は、ファンとヘイターへ向けてのメッセージのような歌。これも語りのような歌唱で、これまでのケルズ氏のアーティストとしての生き様を振り返ります。ここにきて、この熱い歌いっぷり。帝王らしい締め方だと思います。調べてみると、この曲は2011年頃にすでにネットでリークしていて、時期的には彼が喉の手術を受けて(そんなことありましたね)苦しい思いをしていた時に書かれた曲のようですね。なるほど、という感じです。


通常盤は全13曲収録(デラックスは4曲追加)。

うーん、どうなんでしょうね。性愛路線のエロエロな歌詞は確かに楽しめるんだけど、オートチューンとかスクリューヴォイスを多用した前半なんか、曲調が似たり寄ったりで、正直あまりおもしろくないなと思ってしまいました。いままでもそんなアルバム山ほど作ってきたわけだから別に驚かないのだけど、それほど音楽的な冒険してないし、メロディーとかもっと工夫があると聴きやすいのにというのが率直なところです。

まあ、トレンドヒッター的なところに行きそうで行かないし、逆にいえば何をしてもケルズ氏というあり方も、帝王らしいと言えばそうなのではありますが。



0 件のコメント:

コメントを投稿