2015年2月8日日曜日

Jazmine Sullivan『Reality Show』(2015)

あ、あけましておめでとうございます・・・久しぶりの更新です。

気付けば年も明け、グラミー賞の発表が近づく時期にまで来てしまいましたが、ようやくというか、ボチボチとブログを再開したいと思います。

さて、ジャズミン・サリヴァンです。以前にブログで一度彼女のデビュー作を取り上げたことがありましたが、4年のブランクを経て見事にカムバックしました。一時期は引退宣言もあっただけに、こうして帰ってきてくれたのはうれしい限りです。やっぱり彼女の声は唯一無二のものですからね。裏方としてのクレジットもここ最近チョコチョコとみられるようにはなっていましたが、表舞台に再度あらわれたということでめでたいことです。

でも、まあ、彼女のような才能のあるアーティストが簡単に音楽業界から足を洗うとはだれも思わないですよねw 前作リリース後にはいろいろと不満をぶちまけたりもしていましたが(「わたしはロボットじゃない」なんていう曲もありました)、つまり成熟するために時間が必要だったということだったのではないでしょうか。その結果、彼女がどんな作品を作り出したのか、そこが注目ですね。

まず今作のタイトルですが、「リアリティ・ショー」と名付けられています。R&Bシンガーもその舞台に登場することもあるだけに、このタイトルなかなか意味深ですが、彼女の生きざまを示したものなのか、テレビ的なリアリティを揶揄したものなのか、とにかくこれまでと違うことがこれだけでもわかります。

次に、これは予想できたことですが、今作にはあのミッシーが不参加です。彼女に決定的なヒットを授けてきただけに残念といえば残念ですが、もし新たな道を模索するなら必要な別れだったのかもしれません。替わりに、サラーム・レミ(彼はデビュー作から連続で参加)、新たにキー・ウェインやチャック・ハーモニーといった面々がプロデューサーとして名を連ねています。

それではさっそくアルバムの中身へうつることにしましょう。

(1)Dumb feat. Meek Mill
キー・ウェインとサラーム・レミの共作。リードシングルとして発表されたこの曲ですが、アルバムでは初めてラッパーを起用しています。ミーク・ミルは同郷のフィリー出身ということで、何かつながりがあるのかもしれません。トラックは意表をつくようなホラーチックなサウンドで、このダークな質感のトラックがリード曲なのかと驚いたのだけど(そしてタイトルもね)、彼女らしいパンチの効いた三行半ソングになっています。
(2)Mascara
イントロなくまったりと歌から始まる2曲目。トラックもビートと若干のシンセのみのシンプルなもので、淡々と歌われる感じ。

(3)Brand New
響き渡るトランペットのサウンド。ジャジーな趣なのかと思いきや、そこからジャズミンのラップ調の歌唱へ。トラックもほとんどドラムビートに薄くピアノやシンセを乗せただけのシンプルの極みで、もうここらへんで過去作とは明らかに方向性が違うことが明らかですね。DJダヒのプロデュース。

(4)Silver Lining
こちらもイントロなしで歌から始まります。トラックはまたもやシンプルなドラムループ。タイトルは「(逆境の中での)希望の光」という意味だそうで、「希望の光を探しているの」と歌う主人公は、おそらくは子育てをしながらも貧困にあえぐ女性。苦しい毎日、窮地に陥った彼女が取った行動とは…というなんともアメリカンなストーリーの歌詞になっています。

(5)#Hoodlove
ここまで地味な曲を続けるのはなぜだ・・・という5曲目。怪しげな雰囲気で、サントラの一曲に入ってそうな感じ。歌モノとして聞くと物足りなさを感じるのだけど、ストーリーテリング的な要素を今作は強めているというのはよくわかります。チャック・ハーモニーのプロデュース。

(6)Let It Burn 
ここに来て比較的ストレートなR&Bという印象の作品。歌詞もストレートな愛を歌ったもの。ジャズミンの歌唱にも力が入っています。

(7)Veins
サラーム・レミ単独のプロデュース、これまた怪しげな作風のトラックで、ジャズミンもパワフルな歌をうたうかとおもいきや、お色気的な囁き声を交えたりして、なんとも捉えどころがない曲ですね。

(8)Forever Don't Last
セカンド・シングルとしてリリースされた一曲。アコギの音に合わせて艶やかに歌うジャズミン。しっとりとしたバラードで、「永遠なんてそんなに続くもんじゃないのね」としみじみと歌われています。
(9)Stupid Girl
ここに来て少しノリのいいトラック。デビュー作のボートラに収録されていた「Switch!」ほどにはっちゃけていないけど、サウンド的にはそんなノリのトラックです。

(10)Stanley
後半に来てどうしたんだ!というこの曲。ダ・インターンズがプロデュースしているのだけど、怪しげな80年代ディスコサウンドとでも言いましょうか、これまでの流れを完全に断ち切るような謎めいたトラックですよ。歌詞はダンナにオンナとして扱われない主婦の恨みつらみみたいな内容で、これを妙にテンション高く歌い上げるジャズミンという感じですね。

(11)Masterpiece [Mona Lisa]
実質的なラストと言えるこの曲、「わたしってどの部分も美しいの」とモナリサを例に出しながら、自己肯定を歌い上げる女性賛歌。ビヨンセが歌うと嫌味にしか聞こえないだろうけど、彼女が歌うと妙に説得力があります。

(12)If You Dare
ボーナストラック扱いの最後は、(9)をよりアップテンポにしたようなノリのいい楽曲です。


全12曲収録。前半のダークな曲調から後半のアップな楽曲まで、とにかくこれまでのジャズミンとはひと味もふた味も違う展開で驚きました。いやー、これは攻めてきたというか、ブランクを得て復活するにあたって彼女がいったい何を求めていたのか、よく分かる内容だと思いました。

とにかく、過去のチャートヒットを狙えるようなサウンドを徹底的に排除して、ひたすらディープにオンナの情念や痛みを歌い上げる、そんな彼女のソウルが凝縮された一枚で潔いです。

当然ながらチャートヒットを狙えるような内容ではないとは思いますが、昨年から続く「さまよえるR&B」の時代において、彼女なりの答えをここに提示してきたのだと考えると、感慨深いですね。




1 件のコメント:

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