ブラクストンと言えば、トニー・ブラクストンが有名過ぎますが、そのブラクストン5姉妹(!)の末っ子にあたるのが、このテイマーです。
実は2000年に『Tamar』というアルバムでソロデビューしているんですよね。ただ、セールス的には全く振るわず。それ以降、目立った音楽活動はなかったわけで、いわば今回が13年ぶりにカムバックということになるわけです。スゲー。
ブレイクのきっかけは、ブラクストン姉妹らが出演するリアリティ・ショー『Braxton Family Value』と、そのスピンオフ的な『Tamar & Vince』とされています。アメリカでのリアリティ・ショーの影響力がどれほどのものか、日本にいてもなかなか想像しづらいのですが、そこでのテイマーのセレブっぷりが注目を集めたようですね。
テイマーといえば、プロデューサーのヴィンセント・ハーバートと結婚しており、今年には第1子を授かっていますが、ヴィンセントといえば数多くのアーティストを手がけており、その中にはレディー・ガガの名前も含まれています。彼女のブレイクのきっかけとなったシングル「Love & War」に関して、楽曲のよさに加えて、ガガがツイッターで後押ししたことが影響しているとも言われています。
ということで、紐解いて見ると、いろいろな経緯があって今回のアルバムリリースに至っているわけですが、本作は初登場全米2位をすでに記録しています。R&B作品でこの結果は素晴らしいですね。
さっそく、内容を見ていくことにしましょう。
(1)The One
定番のサンプリングネタであるエムトゥメ「Juicy Fruits」を使用した夏らしい爽やかな一曲。ビギーの"It Was All Dream"というフレーズも引用され、90年代のヒップホップ・ソウルをアップデートしたような感じですね。セカンド・シングルです。
続いては、ゴリゴリのヒップホップフレイバーで攻めてきましたね。「オー」という掛け声にスクリュー声にささやき声にラップ調の声に、とおもちゃ箱をひっくり返したように、3分間の間にいろいろな音や声が飛び出します。
(3)Stay and Fight
正統派なR&Bナンバー。クールな展開だけど、後半にはテイマーの高音も飛び出し、引き出しの多さをアピール。デビュー作にも大きく関わっていたトリッキー・スチュワートがプロデュースしています。
(4)Love and War
ブレイクのきっかけとなった大ヒットシングル。サウンド的に目新しいわけじゃないけど、テイマーの情熱的なヴォーカルが胸打つ、見事なバラードナンバーになっていると思います。歌詞は直訳すると「愛と戦争」で、ざっくりいうと戦場のような過酷な状況においても二人はずっといっしょという内容です。
「愛と戦争」と比較すると地味な印象だけど、この曲は個人的にツボですね。アンダードッグスがプロデュースしているのですが、さすがの安定感と言うべきだと思います。
(6)One on One Fun
ここから変化球な2曲。なんとディプロとシンガー・ソングライターのアンジェラ・ハントがプロデュースした、レゲエテイストの漂う不思議な一曲。なんと2分弱しかありません(汗) インタールード的な感じで、これは遊びゴコロですね。
(7)She Did That
これまた1分17秒しかない、インタールード的な一曲。一転してこちらはヒップホップフレイバー。(2)と同じダ・インターンズがプロデュースしています。
(8)Hot Sugar
前曲の延長のような感じではじまる、ストリート感のあるナンバー。冒頭からテイマーのラップが炸裂しますよ。
(9)Pieces
弾けたモードは終了して、一転して美メロモードへ。流麗なR&Bならおまかせあれのブライアン=マイケル・コックスらがプロデュース。ピアノの使い方がいかにもなミディアムバラードに仕上がっています。
(10)Where It Hurts
引き続きコックスらのプロデュース。ベイビーフェイスがソングライターにクレジットされていますね。サウンドの展開がある程度読めてしまうのがさすが(笑)という感じだけど、この曲ではテイマーの繊細なヴォーカル・コントロールが冴えているなあと思います。
(11)Prettiest Girl
キャー、のろけソングですよw 「彼って、わたしが世界で一番かわいいガールって思わせてくれるのよ」だって~。夫に向けて書いたんでしょうね。
(12)Sound of Love
ビートは少し強めな感じでアクセントをつけていますが、こちらも王道のR&Bで、愛を高らかに歌い上げております。
(13)White Candle
アコースティックギターをフィーチャー、愛の終わりを白いろうそくに例えて歌われています。
(14)Thank You Lord
アルバムの最後は、神様への感謝で締めくくり。テイマーのパワフルなヴォーカルが天まで届きそうな勢いですね。
全14曲収録。デラックス版はなく、非常に潔いと思います。
基本的には王道とも言えるR&Bアルバムです。よくまとまっているなあと思いました。多彩なプロデューサーを迎えていますが(そして夫はエグゼクティヴに徹した形)、途中で遊びのパートがある以外は、どれもテイマーの良さを引き出すことに尽くしていると感じました。特にトニーと比較すると音域が高いこともあり、高音をうまく活かしたヴォーカル・ワークが耳を惹きましたね。ああ、この人こんなに歌えるのね・・・とそういう意外性も同時にあったのですが。
36歳の再デビューとしてはふさわしい内容ではないでしょうか。
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