2013年11月22日金曜日

India.Arie『Songversation』(2013)

インディア・アリーの約4年ぶり、通算5作目となるニュー・アルバムです。

発表されたのは6月。すぐに買ったのだけど、レヴューする機会がなくて、そのままになっていました。

まあ、そういうことはよくあるのですが、音楽っていうのはタイミングっていうのがあると思うんですよね。おそらく、購入した当時、このアルバムをそれほど聞いていたわけではなくて、繰り返し聞きたいフィーリングにもならなかった。そういう場合、そのまま聞かずじまいでお蔵入りみたいになることもあるのだけど、この作品はそうならなかったのです。

そう、ふとしたときにこのアルバムを再生してみて、「ああ、やっぱりいいなあ」と感じたんですよね。そして、「これはやはりレヴューしなければ」と思ったわけです。せっかく自分がいいと思ったアルバムについて、何も書かないなんてもったいない。そして、大して話題にならなかった本作ではありますが、スルーするのはもったいないということを文書化しなければ! ということで、今回は本作を取り上げたいと思います(っていつにもなく熱いですねw)。  

彼女の過去作はどれも持っているのですが、音楽に対して誠実であり、そして、素晴らしい歌詞を書くソングライターだなあという印象を個人的に持っています。きちんと、自分のメッセージを持っていて、それが音楽として表現されているなあという感じです。

デビュー作のタイトルが『Acoustic Soul』であることから象徴されるように、彼女の音楽スタイルはアコースティックなサウンド(特にギター)を基調としたネオソウル~R&Bであり、ヒップホップ時代のR&Bマナーとは一線を画しています。ということで、R&Bが備えるある種の革新性からは遠いところにあり、その分、刺激を求める人にとっては退屈に思えるかもしれません。が、逆に、そういうサウンドに食傷気味な人にとっては、すっとココロに入ってくる、そんな音楽と言えると思います。もちろん、ネオソウル系のアーティストが体現するようなある種のブラックネスを備えていて、濃い部分もあるのですが、彼女の場合、それが官能的な方向に行かないのがポイントですね(笑)

改めてバイオフラフィーを調べると、彼女は現在38歳なんですね。いい歳の取り方をしているなあと思ってしまうのですが、それにしても、これまでにグラミー賞で21ものノミネーションを受けているというのは驚きです。やはり通に愛されるアーティストということなのでしょうか。


では、さっそくアルバムの中身にうつることにしましょう。楽曲の大半を、インディア自身と長年の共同制作者であるシャノン・サンダースがプロデュースしています。そして、今回はトルコのミュージシャンが楽曲の大半で参加しているのもポイントでしょう。


(1)Soulbird Intro
30秒程度のギターイントロ。

(2)Just Do You
これには意表を突かれました! 前作のオープニングも突き抜けるような青空が似合うそんな曲でしたが、この曲も彼女のイメージからはちょっと離れるような、軽快なアップテンポナンバーになっています。力強いピアノの音とコーラス、そして前向きな歌詞。晴れやかな気持ちになりますね。

(3)This Love
一転してテンポを落としつつ、ピアノを主体とした、コーラスも美しいミッドテンポの一曲。愛の諸相を歌いながら、「この愛をあきらめない」というメッセージを打ち出した歌詞も彼女らしいです。

(4)Nothing That I Love More
ギターとパーカッションというお得意の組み合わせによる、アコースティックなサウンド。なんだけど、あまり乾いた感じがしなくて、ストリングスなんかもうまく取り入れておりうまく調和した感じですね。ここら辺はトルコ勢の影響かなあと思います。

(5)Flowers
こちらもアンサンブルが素晴らしくて、いろいろな楽器の音色が調和した、まさしく花のように彩りが鮮やかな一曲です。美しい曲だと思います。

(6)Cocoa Butter
アルバムからのリード曲。彼女らしい低音を活かした、ぬくもりのあるサウンドです。「あなたの愛はまるでわたしのココロのココア・バターのよう」ってすごく独特な表現なんだけど、みなさん想像できますか?

(7)Soulbird Interlude: Trombone
トロンボーンをフィーチャーした36秒のインスト。

(8)Moved By You
静かなイントロから、ピアノとパーカッションが主体のレイドバックしたサウンドへと展開。そして、歌われるあなたへの愛。

(9)Life I Know
アコギと若干のパーカッション。シンプルなサウンドで、彼女の真骨頂とも言える音ですね。歌詞は、おそらく彼女自身のことをうたった内容だと思います。「わたしは母でも妻でもない」「友達はみんな自分の家庭を築いているけど、わたしはまだ完璧な相手が現れるのを待っているの」など、彼女のありのままの姿を歌っていますね。

(10)Break The Shell
こちらもギターをかき鳴らし系ですが、歌い方が誰かに話しかけるようにやさしくて、歌詞の内容からして、子供への語りかけのような雰囲気なのだと思います。「殻を打ち破らないと、飛び立つことなんてできないよ」というメッセージ、歌詞からは明確にわからないのですが、決して恵まれた環境ではない子供へ何かを伝えているのだと思います。

(11)Soulbird Rise
(1)(7)のインストのフレーズが織り込まれた一曲で、静かな始まりから徐々に曲が盛り上がっていきます。まるで鳥が羽ばたいていくかのようです。

(12)Thy Will Be Done feat. Gramps Morgan
本作中唯一のゲストである、グランプス・モーガンは前作にも参加していたレゲエ・ミュージシャン。もちろんこの曲もレゲエ調。歌詞はタイトルの「主の御心のままに」(って訳でいいのか)が示すように、聖書の一節をモチーフにして書かれていますね。

(13)Brother's Keeper
しっかりとしたドラムが入って、力強いトラック。こちらのタイトルも、聖書の一節を引用したものですね。

(14)One
ギターとパーカッションのお得意パターン。興味深いことに、ここでも神様への言及がありますが、最終的な彼女のメッセージは、宗教や人種が違っても、わたしたちは話し合えるし、ひとつになることができるだろうということ。

(15)Soulbird Outro: Clarinet
同じモチーフの反復、最後はクラリネットで。

(16)I Am Light
ボートラ的に収録されたこの曲。「わたしは光」と歌われるのですが、曲の雰囲気から、煌々とした光ではなく、ひっそりと輝く光のような感じがしますね。


全16曲収録。デラックス盤はさらに4曲追加されています。

トルコの音楽家たちとの共演が功を奏したのか、音楽的にアコースティック一辺倒というわけではなく、いろいろな要素が組み合わさって、とても聴き応えのある内容になっていると思います。そして、今回は明るい雰囲気の楽曲が多いかな。

とにかく、聞いているとこっちも晴れやかな気分になる、そんな一枚ですね。



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