いくつかのニュースサイトの情報では、このアルバムリリースの経緯として、カムバック作用に多量の作品を作ったが、名曲が多く一枚でまとめきれないので2部作にしたという話があります。当初からこういう作品として構想されていたということでしょうかね。だから、こうしてリリースしたと。
うーん、何だか潔くない感じもしますねw それを1枚にまとめるから傑作になるんじゃないの、という意見があっても当然だと思います。前作ほどこのアルバムが話題になっていないのは、そうしたことも関係しているかもしれません。ファンとしてはうれしいことだと思うのですが・・・
さて、続編というのは、一般的に言っても難しいものなのだと思います。何かの続きを作るということは、その元となる作品の出来がよいからであって、しかし、その出来が良ければよいほどにそれ以上のものを作るのは困難になる・・・駄作と呼ばれる「続き物」がたくさんあるのは経験的に知るところでしょう。
もちろん、シリーズ化が功を奏するということもあるわけです。だから、その戦略が一概に失敗するとは言えないわけで、そこはもう製作者がどうその作品を捉えるかにかかっていますよね。
このJT作に関して言えば、もともと2枚で完結させようという意図があったみたいですが、前作ほどプロモーションが華麗ではなかったことも影響しているかもしれません。ビルボードでは1位を獲得しましたが、すぐにチャートダウンしてしまいました。リードシングルもそんなにヒットしなかったし、これは前作からのリリース期間が短かったことも大きいでしょうね。普通はレコード会社的にそういうことはしないのでしょうが、それを成し遂げたというのは、これまた彼の力といえばそうなのですが。
ともあれ、アルバムの中身に移ることにしましょう。前作同様、JT、ティンバランド、J-ロックが全編にわたり協同プロデュースしています。
(1)Gimme What I Don't Know (I Want)
いかにもジャスティンらしいコーラス・ワークから始まり、そしてティンバランド色の強いビートで幕を開ける一曲目。途中でサウンドエフェクト的に動物の鳴き声が挿入されたり、賑やかな雰囲気がします。
(2)True Blood
前作も長尺ナンバーが盛りだくさんでしたが、この曲は9分30秒もあります! アップテンポなんだけど、プログレッシブな展開で、少しずつ変奏しながら曲が進んでいきます。まあ、でもちょっと長いよねw 歌詞は、男女の(男目線だけど)駆け引きをドラキュラが血を求めて動き出す様に例えていて、ちょっとホラーっぽいです。
(3)Cabaret feat. Drake
ドレイクを迎えた一曲。ティンバランドのビートでラップするドレイク、というのも珍しいなあと思うのだけど、クールにタイトにしっかりラップを決めているのはさすが。ビートにはヒューマンビートボックスや子供の声などが使われており、これまたティンバランド色が強い印象。
(4)TKO
セカンド・シングルです。7分の長尺曲。バリー・ホワイト曲をサンプリングしてますが、ビートに溶け込んでいて言われないとわからないかもしれません。曲調的には前作の「Mirrors」をちょっとマイナーにした感じかなあと。それにしても、今回はティンバ色が濃厚だなあ。
(5)Take Back The Night
新作の興奮冷めやらぬ中リリースされた、本作からのリードシングル。イントロの豪勢なストリングスなど、前作の流れを組んだ曲調なのだけど、アルバムのこの流れで聴くとやや浮いた感じに聴こえるのが不思議。ホーン・セクションも華やかで、ディスコフレイヴァーのするスムーズなダンスナンバー、ちょっとマイケルを意識したところもありますね。
畳み掛けるようなフックのフレーズがインパクト大なアップテンポな一曲。ミッシー曲でおなじみのトゥンビの音も飛び出します。前作に引き続きジェイZが再登板、オノ・ヨーコとジョン・レノンへの言及から、女に追い詰められる男という曲のテーマをメタフォリカルに表現しています。"murder"って物騒なことばではあるけど、「彼女にイチコロ」みたいな感じなのかな。
(7)Drink You Away
ギターにオルガンに、アコースティックな雰囲気を前面に出しつつも、あくまでビートはティンバという曲。ここらへんはJTの色が出ているのかなあと思います。歌詞は「酒のんでも君の事が忘れられない」といった内容ですね。
(8)You Got It On
ようやく(と言うべきか)テンポダウン。JTらしいファルセット・ヴォイスを駆使した、ミッドテンポのバラード。
(9)Amnesia
ゴージャスなストリングスを投入した、スリリングな一曲。歌詞はちょっと悲しくて、亡くなってしまった彼女のことを思い出そうとするのだけど、段々と記憶が遠ざかっていく、その苦悩みたいなのを表現しています(と解釈したのだけど)。
(10)Only When I Walk Away
イントロのギターフレーズからして哀愁感を漂わせるブルージーなナンバー。ヴォーカルにフィルターがかかっていて、力強くも切々と歌い上げるJTという感じですね。
(11)Not A Bad Thing / Pair of Wings (Hidden Track)
なんとも表現しづらいのだけど、いかにも締めだなあと思わせるようなナンバーです。アコギの音の影響もあるでしょうが、ほっこりした感じがします。そして、隠しトラックとしてJTの単独仕事による曲を収録。こちらはアコギ一本で弾き語り、ちょっとダメ押し感がするのだけど。
全12曲収録。デラックス2曲追加盤は2枚組仕様になります。
海外のレビューを見てみるとあまりよい評価ではなくて、実際に聴くまでは正直どうなのかなと思っていたのですが、全体として決して駄作ではないと思います。相変わらずのヴォリューム感ではあるのですが、今回はアップテンポな曲が多いので、前作のミディアム~スロー主体の構成が退屈だと思った人には、むしろ今作の方がオススメです。
ただ、今回は前作よりもティンバランド色が濃厚で、そこら辺が評価の分かれるポイントになるのかあという気がします。彼のビートが好きな人にはいいのだけど、その分JTらしさとか、アルバムとしてのオリジナリティみたいなものが、やや薄れてしまったような気もするんですよね。
いま、彼の作品に何を期待するのかという話ではあるのですが・・・
個人的には十分に聴く価値のある作品だと思いました。
こんばんは、初めまして。
返信削除最近、こちらのブログの存在を知りレビューを見させて頂いております。
末長くよろしくお願いします。
>SGL様
削除こんばんは。あまり大したことは書いてませんが(そして更新速度が遅いのですけど)、ホソボソとやってますので、これからもよろしくお願いします。