2014年9月11日木曜日

Ariana Grande『My Everything』(2014)

アリアナ・グランデの約1年ぶりとなるセカンド・アルバムです。去年このブログでデビュー作を取り上げてから1年、こんなに早く次作のレビューをするとは思いもしませんでした!

それにしても、スター街道まっしぐらですね。現在21歳ということで、アーティストとしても勢いのある時期だと思いますが、このハイペースでのリリースはもしやポストリアーナ的なポジションを狙っているのかと思わせるほどです。普通、こんなに早いインターバルでアルバムを出しませんからね。

そして、今年に入ってから来日も果たしていて、キュートなルックスも相まって日本での知名度も着々と上げつつあるのが素晴らしい。リアーナよりは確実に日本受けがいいだろうとは思いますが、押さえるところを押さえているのはさすがですw

アリアナちゃんのここ最近の動向を振り返っておきましょう。今年の1月には早くも次のアルバムに向けて動き出しているとの情報があり、実際に4月下旬にはイギー・アゼリアと組んだリードシングル「Problem」を発表、これがいきなりの大ヒットになります。全米チャートで見事2位を獲得、イギー・アザリアの「Fancy」がヒットしていたタイミングでもあり、この時機を得たコラボで一気に流れをつかみます。

そして、このヒットの勢いを保ったまま、次にセカンド・シングルとして「Break Free」を投下、こちらもいま勢いのあるDJ、Zeddとのコラボレーションで全米4位を記録します。さらには、ジェシー・J、ニッキー・ミナージュとのコラボである「Bang Bang」も同時期にリリースされ、こちらも全米4位のヒットとなります。

短期間でこれだけヒットチャートの上位にシングルをランクインさせるのは並大抵のことではなく、彼女の勢いを感じさせる出来事だと思いますが、この勢いのままにリリースされたのがセカンド・アルバムということになります。

では、さっそく中身をみていくことにしましょう。

(1)Intro
1分強のイントロ。アリアナの控えめながら美しいコーラスワークから始まります。静かです。

(2)Problem feat. Iggy Azalea
イントロのサックスからいきなりテンションアゲアゲのリード・シングル。サックスのこの使い方は、おそらくこの曲の肝となる部分で、ちょっと下世話な感じもさせるけど、ヒットポテンシャルを高めるよいフックになっていると思います。ヒットメーカーのマックス・マーティンが制作ということで、納得の出来です。イギーのラップやビッグ・ショーンのささやきなど、仕掛けも多く、あっという間に3分が過ぎてしまいます。

(3)One Last Time
デヴィッド・ゲッタがライティングに関与した楽曲で、プロダクションはスウェーデンのカール・フォークらが手がけています。曲調はベタな4つ打ちのアップテンポで、いわゆるEDM的な展開ではないのだけど、ノリのいい楽曲になっています。アリアナのヴォーカルもここでは控えめで、曲調に合わせた感じかな。それにしても、マックス・マーティンもそうだけど、北欧出身のポップ職人は、アメリカでも着実にいい仕事をしていますね。

(4)Why Try
ライアン・テダ―とベニー・ブランコという意外な組み合わせによるプロダクション。歌詞はベタなラヴソングで、曲調もR&Bというよりミディアムテンポのポップナンバー。アリアナちゃんの大らかな歌いっぷりが心地いいです。

(5)Break Free feat. Zedd
セカンド・シングルですね。最初聴いた時は「ああ、やっちゃったか」とそんな印象でした。前作にもそれっぽい曲は入っていたとはいえ、タイトルに「feat. Zedd」とついている意味ははっきりと「わたしもEDMやるわよ」と、そういうことですよね。そして、そのまんまなサウンドなわけですw まあ、彼女がそれをやっても別におかしくないんだけど、予定調和な感じがして個人的にそれほど好感を持てませんでした。ある種のニーズを満たしていると思いますが。

(6)Best Mistake feat. Big Sean
プロモシングルとしてリリースされた曲で、キー・ウェインがプロデュース。前作に引き続いてビッグ・ショーンをフィーチャーしていますが、曲調は「えっ?」となるような、地味なバラード。流れ的にはここで一度トーンダウンするわけですが、彼のラップが入ることによって、「ああ、これってここ最近のアンビエントな曲調のR&Bね」と理解できたような気がします。

(7)Be My Baby feat. Cashmere Cat
フィーチャーされているカシミア・キャットはノルウェー出身のDJ/プロデューサー。Zedd曲みたいにノリノリな感じで来るのかと思いきや、こちらはミディアムテンポの浮遊感のあるサウンドで、とらえどころのない感じのする一曲です。

(8)Break Your Heart Right Back feat. Childish Gambino
いやー、チャイルディッシュ・ガンビーノですかw どういう理由でこのラッパーを起用したのか、不思議ではあります。何らかの狙いがあるのでしょう。それにしても、この曲も地味にクールなストリート路線で驚かせられるのだけど、ビギー/ダイアナ・ロスの「Mo Money Mo Problem」という大ネタをサンプリングしつつ、あの突き抜けた高揚感を得られないのはなぜだろう・・・と思ってしまいました。敢えて挑戦的な楽曲をここでねじ込んで来たのだろうけど、ちょっとネタの使い方がもったいないように感じました。

(9)Love Me Harder with The Weeknd
次々とゲストを投入していきますが、今度はなんとザ・ウィーケンドとのデュエット! なんだけど、彼が得意とする独特の緊張感のあるトラックではなく、爽やかなポップ路線で、ちょっと肩透かしを喰らいます。ただ、アルバムの流れ的には悪くないです。これは受け入れやすいですね。

(10)Just a Little Bit of Your Heart
世界的にブレイクしているアイドル・グループ、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズがソングライティングに参加したという一曲。ピアノとストリングス主体のベタ~なバラードです。可もなく不可もなく、といった感じではっきり言ってつまらないです。

(11)Hands On Me feat. A$AP Ferg
これはヒップホップ要素が強いですね。一時期流行った中近東系の音階なんかも取り入れていて、懐かしくもありますが、後半にもう一捻りといったところでしょうか。ロドニー・ジャーキンスがプロデュースなので納得ではありますが、エイサップ・ファーグ担ぎ出すとかもうわけがわかりませんよw アリアナちゃんのラッパーの趣味ってマニアックなのね。それにしても、この手の曲を歌うにしては彼女のヴォーカルは端正過ぎますねえ。こういう曲ではもうちょっと遊んで欲しかったなあ。

(12)My Everything
スタンダード盤のラストはダメ押しともいえるバラード。今回はこういう歌い上げ系が意外に多くてびっくりなんだけど、彼女のコーラスワークはさすがと思わせるものがあります。


全12曲収録。ですが、国内盤ではこれに6曲も追加されて18曲の大ボリュームになります。例のジェシーJとのコラボも入っているので、それが気になる人はそっちをゲットしたほうがいいと思います。それ以外にも、デラックス収録曲はけっこう良かったりするので、ちょっと複雑な気分になります。

全体の感想としては、まずマライア・キャリーを今回は意識させないというか、完全にアリアナちゃんだなあーと思わせるヴォーカルだということ。ただ、一方で、バラエティーに富んだ楽曲がいろいろな方向を向き過ぎていて、ややまとまりに欠けるという印象を持ちました。前作のほうがトータルパッケージではわかりやすかったと思います。

あと、アップテンポな楽曲群のあり方に関して、ちょっと物足りなさを感じたのも事実です。「Problem」はわかりやすくてよかったけど、それ以外がパッとしないというか、R&Bやヒップホップ的なアプローチでインパクトのある楽曲が入っていると個人的にはよかったかなと思います。

彼女がもし今後リアーナのようにハイペースでリリースを続けるのであれば、音楽性に対する柔軟な姿勢というのは優位に働く可能性があると思いますが、前も書いたけどアーティストとしての立ち位置をどう持っていくのか、そこが彼女の今後の課題でしょうね。トレンドセッター的なポジションってそれなりに危ういものだったりするので。

ま、でも、業界のいろいろな慣習にとらわれず、いろいろと挑戦して欲しいです。まだ若いんだし。





1 件のコメント:

  1. こんばんは、久しぶりにコメント書かせて頂きます!
    自分が感じた印象なんですが良くも悪くも良く出来たポップアルバムだなと思いました。
    あとはラッパーのチョイスが確かにマニアックだなとw
    ただ、ラッパーを起用するならもっとドープな曲に挑戦してほしいてのはありましたね、、、

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