さて、今回はシーアの最新作です。通算7枚目となる本作ですが、前作ほど注目度は高くなく、1月にリリース(リアーナとかぶってますね)されたはいいがいつの間にフェイドアウトしていた、というほどのものでした。
ところが、ここ最近になってチャート再上昇、6位まで浮上しています。というのも、本作からのシングルのリミックスとなるショーン・ポールをフィーチャーした「Cheap Thrills」がなんと彼女にとって初となる全米1位を記録したからです。このシングル自体じわじわチャートアップした曲ではありますが、確かに夏の暑い季節にぴったりのレゲエ調のナンバーで、時機を得たものと思います。
ところでこの作品、顔出しNGの感じ含め前作の作風を踏襲しているものの、コンセプトととして特筆すべきが「他アーティストへ提供予定だった楽曲の横取り」という売れっ子ソングライターでしかなしえない発想があること。前述のナンバーワンソングも実はリアーナ用に作られたものでした(テイスト的に納得)。それ以外にもいろいろなアーティストへの提供を意図しており(実は拒否されたといえる楽曲だけど)、その痕跡がライティングクレジットとして残っているものもあり興味深いです。とは言いつつ、ふたを開けてみればどれもこれもシーアでしか表現しえない世界観の楽曲群ではあるのですか。
ということでさっそく内容を見ていくことにしましょう。前作と同様、プロデュースにグレッグ・カースティンが関わっているほか、ジェシー・シャトキンも大きく関与しています。
(1)Birds Set Free
プロモシングルとしてリリースされた曲で、前作の"Chandelier"を彷彿とさせるような、煽情的ともいえるシーアの声がインパクト大なナンバー。元々は『ピッチ・パーフェクト2』のサントラ用に作られたものでリアーナが歌う予定だったとか。なるほど、という感じです。さすがにリアーナだとこんなに激しく歌えないでしょう。顔隠しパフォーマンスは相変わらずですね。
(2)Alive
正式なリードシングルであり、暑苦しいくらいのシーアの声が響き渡る彼女らしいパワーポップ。なんとアデル用に共作されたということで、アデルのクレジットもありますが、彼女はこんなに激しくはきっと歌い上げないでしょう(似てるかもしれないけど)。アデル視点で曲は書かれたとのことです。PVには日本人の空手家の女の子(高野まひろ)が出演しています。
(3)One Million Bullets
3曲続けて力強いパワーポップといった面持ちですが、それほどシーアの特徴的なヴォーカルが押されたわけではなく、いったい誰用の曲なのか気になるところです。そういえば前作ではナイフということばを使った曲がありましたが、この手の武器のメタファーは偶然でしょうか。
(4)Move Your Body
ちょっと変化球な一曲で、マーチングバンド風のリズム隊も印象的。どうやらシャキーラ用らしいということで妙に納得。ポップで力強い歌声が継続しており、ポップモード全開です。
(5)Unstoppable
コンセプト的にそうなのか意図的なのか、シングルカットできそうな大曲が並びます。さらっと聞き流せないような暑苦しさですが、歌詞が「誰にもわたしを止められない」と強気の内容なのは納得です。
(6)Cheap Thrills
夏らしいレゲエを取り入れた大ヒット曲ですが、リアーナのようにレゲエ調の歌いまわしでなく、あくまでシーア流という歌唱です。パワフルな楽曲がここまで続いていたので、夏らしい曲であるにもかかわらず妙に清涼感があるのが不思議です。シングル版でもサウンド的にはほぼ一緒ですがショーン・ポールの声でだいぶ雰囲気が変わります。
(7)Reaper
なんとクレジットにカニエ・ウエストの名前が。どうやらこれもリアーナ用らしい(リアーナにどんだけ曲を書いているんでしょうw)。こちらも少しクールダウンした面持ちで、それでもシーアが歌うと一生懸命感がすごいんですが、力が抜けたような印象を持ちます。リアーナ版だったきっともっと音を削っちゃうんでしょうが。
(8)House On Fire
アレンジのせいもあるでしょうか、タイトルのように燃える何かを感じます。アルバムの中では比較的おとなしめの楽曲かもしれませんが。前作同様に今度は炎のメタファーですね。フックで「燃え続けたいの」と連呼してますから。
(9)Footprints
一説ではビヨンセ用とも言われていますが、彼女がこんなに明るい曲を歌うわけないというぐらいにポップであります。もう「またこの手の曲か」と少しうんざりするほどですが。
(10)Sweet Design
誰用なのかわかりませんが、シーアの楽曲と考えると明らかに冒険した感のあるアレンジが特徴的。ヒップホップ的な感じもします。だけど、異様なまでに明るいポップ。なつかしのシスコ"Thing Song"をサンプリングしています。
(11)Broken Glass
和のテイストを取り入れたサウンドの楽曲。少しダークな雰囲気ですが、この手の楽曲をもう少しアルバムに入れた方がまとまるように思います。
(12)Space Between
最後だけに穏やかなアレンジのバラード。それでもシーアの歌声ははじけていますが。
全12曲でヒットしているショーン・ポール版はオリジナルには入っていません。それにしても暑苦しいぐらいのシーアの声で、ポップさ全開の作品になっています。正直、ちょっとうるさいぐらいかもしれません。だけど、日本人にとってはこれぐらいの音でちょうど、というぐらいのポップ加減であります。
アルバム単位よりシングル単位で聞いた方がある意味楽しめる作品かもしれません。
ちなみにすでにあと2枚ほどアルバムが完成しているとの話がありますね。ソングライターとしてしばらくは安泰そうです。
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