そういうの書くみなさんって、たくさん音楽を聴いてると思うんだけど、どうやってランキングつけてるんでしょうね。やっぱり、ググっと来るポイントみたいなのを作品ごとに掴んでいるんでしょうか。ある意味、センスを問われる作業だから、競合する意識も働くかもしれませんね。毀誉褒貶激しい作品やスルーされている作品で自分がお気に入りの場合特に「いや、これはいいよ!」って言いたくなるものだったりするし。
さて、ランキングは別にして、わたしの中で今年の1枚を選ぶとするなら、意外かもしれませんが、このニッキー・ミナージュのセカンド・アルバムになると思います。リリースは今年の4月。振り返ると、よく聴いたなーと思いますね。特にドライブデートの時に役立ったっのが大きい! だって、ふだん洋楽なんて聴かない相方がミナージュさんの曲をお気に入りにあげていたんだもん。それだけ、あの曲のインパクトが強かったなあと(もちろん「Starships」ね)。個人的なエピソードではあるけど、そういう外部への訴求力みたいなのはバカに出来ないんですよね。
ということで、今年最後にこのアルバムについて紹介しておきたいと思います。
ニッキー・ミナージュ、彼女はアメリカのヒップホップの歴史において最も成功した女性ラッパーの1人と言ってもいいと思います。前作から「Super Bass」というメガヒット曲を生み出し、数々の客演仕事をこなし、いまやヒップホップ界のVIPになった彼女が満を持してリリースされたこのアルバム・・・ではあったのだけど、その内容には賛否両論がありました。わたしも最初聴いた時は、「あれ?」と思ったんですよね。これはどういうことなのか、と。
問題点はおそらく、彼女がスターとしての要素をいくつも持っていて、そのスター性を一挙にアルバムの中に詰め込もうとしたことにあるのではないだろうかと思います。ラッパーとして独特の存在感を示しながら、一方でシンガーとしてラッパーとは思えないほどの立派な歌声を披露する、そしてファッションリーダー的な立ち位置でヴィジュアル的にも独自の世界観を提示する。その結果として生じたある種の過剰さというのが、このアルバムの「締りのなさ」にあらわれてしまったのではないかと思いますね。
彼女は「これがわたしなんだから引き裂こうとしないで」と思ったのかもしれませんね。ラッパーとしてヒップホップもするし、シンガーとしてEDMもバラードもやりたいんだと。だからスタンス的に決してぶれているわけではないと思うんだけど、純粋なヒップホップ・ファンからすると、今回のアルバムに異様なまでの「ポップ要素」が含まれることに対して忌避感を抱いてしまったとしても、驚きではないと思います。それだけ、同じアルバムとは思えないほど曲調に幅があるから。
では内容を確認して行きましょう。通常版で全19曲(デラックスだと3曲追加)の大ボリュームです。
(1)Roman Holiday
オープニングはいきなりミナージュらしいフリーキーなラップが炸裂する一曲。キュートな歌声と相まって、アルバムの期待感を高めますね。
(2)Come on A Cone
(3)I Am Your Leader
ともにヒット・ボーイがプロデュースした、ミニマルなビートが癖になりそうなストリート感ある曲。
(4)Beez In The Trap feat. 2 Chainz
今年ブレイクした2チェインズをフィーチャー。こちらも音の数を絞ったミニマルなビートに合わせてミナージュがクールなラップを披露するイマドキなヒップホップ曲。2チェインズの力強いラップもいいですね。
(5)Hov Lane
(6)Roman Reloaded
似たようなミニマル路線で突き進む感じ。ここまで聴くと、確かにミックステープ的な印象すら受けますね。ストイックにラッパーとしてのミナージュをアピールしていく感じですかね。ただ、ポップなものを期待する人にとってはこの序盤の流れは退屈なものかもしれません。
(7)Champion feat. Nas, Drake & Young Jeezy
ナズ、ドレイク、ヤング・ジジィーをフィーチャーした、どちらかというとドレイクが得意とするようなビートを用いた豪華なマイクリレー。いいですね。彼女がフックも担当しているけど、こういう曲はミナージュに合っていると思います。
(8)Right By My Side feat. Chris Brown
クリス・ブラウンを迎えたR&Bナンバー。後半に客演的にラップが入るけど、基本的には歌もので、こういうことを出来るのが彼女の強みでありますよね。
(9)Sex In The Lounge feat. Lil Wayne & Bobby V
リル・ウェインとボビー・Vをフィーチャーしているのだけど、ミナージュの存在感がかなり希薄で、どちらかというとボビー曲じゃねえの?ってすら思ってしまいますね。曲は悪くないのだけど、もうちょっとミナージュが絡まないと弱いなあとw
(10)Starships
ここから雰囲気がガラっと変わります。あのイントロのギターから一気にテンションが高まる、大ヒットした「Super Bass」の続編的なEDM曲。レッド・ワンがプロデュースしています。これはかなりわかりやすいし、ミナージュのラップと歌唱がうなく組み合わさった良曲だと思います。っていうか、ちょっとテンション上げたいなーって時に、このアルバム10曲目から再生するとかよくやるんですよね(そういう人いません?)。こっからの流れは、ヒップホップ・ファンには失望のネタかもしれないけど、ポップスファンにとっては、ハイテンション・ゾーンなんですよね。いや、どっちもファンのわたしにとっては、単純に楽しめる流れではあるんだけど、確かに前半ともギャップは激しいよね。そういえば、PVもなんだかよくわからない仕上がりではあるw
(11)Pound The Alarm
レッド・ワン制作、同じ路線で突き進みます。トリニダード・トバゴで撮影されたPVも、お祭り騒ぎ的な雰囲気で楽しいです。
(12)Whip It
(13)Automatic」
同じくレッド・ワン制作のクラブバンガー。批評家のみなさんは、ココらへんのEDM曲に対して軒並み批判的で、それはそれでおもしろい現象ではあるけど、まあ、StarshipsがOKなら、これも全然ありだと思いますよ。
(14)Beautiful Sinner
アレックス・ダ・キッドが制作しつつ、同系統の路線を継続。
(15)Marilyn Monroe
(16)Young Forever
(17)Fire Burns
ともにミナージュが力強く歌い上げる、ミッドテンポのポップバラード。一切ラップしてませんw (15)は最近活躍の少ないJ.R.ロテムが制作に関与、(16)はケシャのヒット曲でもおなじみのDr.ルークが制作した一曲。どんどんブラック・ミュージックから離れていく感じがなんだか面白いのだけど、流れとしては過剰だけどわかりやすいなと思いますね。
(18)Gun Shot feat. Beenie Man
レゲエ界のスターDJ、ビニーマンとの共演。ところどころレゲエ的な歌いまわしを披露しつつ、なぜか感動的な大団円に着地するというのが・・・(爆)
(19)Stupid Hoe
最後は、流れとしてほとんどおまけ的なプロモ曲。リル・キムへのディス曲とも言われているけど、ニューオリンズ・バウンスを取り入れつつ、フリーキーなラップが炸裂するこの曲がもうちょっとヒットしてたら、アルバムの中身ももう少し違ったものになったのかもしれないなと思いつつ・・・これはこれで好きな曲ですね。ハイプ・ウィリアムズ作のPVもインパクト強し!
ということで、前半と後半で別ジャンルといアルバムに仕上がっているのがおもしろいと思うのだけど、それだったらビヨンセみたいに2枚組にでもすればよかったのにね、とも思います。でも、ひとつの中に複数の要素が混在しているというのがミナージュさんの魅力だとすれば、このように提示してこそ意味があるということなのでしょうね。
ただ、ヒップホップ・サイドの楽曲であまりインパクトを残せていないので、そこら辺が残念なのかなと。次はゴリゴリのヒップホップ・アルバムを出して欲しいなあ。
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