2012年12月28日金曜日

The Game『Jesus Piece』(2012)

ザ・ゲームの通算5枚目となる新作。インタースコープからリリースされる最終作でもあります。前作の『The R.E.D. Album』はリリースまでに何度も延期を繰り返して「やっと出た~」って感じでしたけど、今回は案外あっさりと出ました。まあ、タイトルは何回か変わりましたけどねw ビルボードチャートでは初登場6位を記録しています。

ザ・ゲームは好きなラッパーの1人です。全国区でウェッサイレペゼンしてる数少ないラッパーだし、固有名詞を織り交ぜたお得意のラップスタイルから、彼のヒップホップに対する愛を感じることもできますよね。そして、毎度毎度、タイトでドープなサウンドとラップを聞かせてくれて、ブレないところが素晴らしいなと思います。

さて、今作ですが、まずジャケ写が話題になりましたね。上のは通常版(21歳で射殺された5つ上のお兄さんの写真を使用)ですが、デラックス版のジャケ写ではブラッズ(西海岸のストリートギャング)の象徴である赤い衣装を身にまとったアフリカン・アメリカンのキリストが描かれています。ギャングスターにも信仰はある、ということですよね。

アルバムのサウンドも、そうした宗教的なコンセプトを反映したものになっており、冒頭からどちらかと言えば暗い感じのサウンドが続きます。複数の曲でゴスペル的なコーラスが基調音として使われており、そうした演出も宗教的で厳かな雰囲気を醸し出すのに一役買っています。そして言うまでもなく、現代風のポップな曲は全くなし。全編これソウルといった感じでしょうか。 

全体の監修は前作で相性の良さを見せたクール&ドレーが担当、5曲でプロデュースにも関与してます。それと、意外だったのが、かつてアフターマスと契約していたこともあるスタット・クオが共同監修でクレジットされているということ。どうやらザ・ゲームと共同でレーベルを立ち上げた模様。これから、二人で何か仕掛けていくのでしょうかね。そこら辺も注目ですね。

ゲストはかなり豪華、というか多すぎ感アリですね。過去作を見ても毎回たくさんゲストは呼んでるから、この過多傾向は今回に限らないのだけど、本作では(9)「Heaven's Arm」以外の全曲に客演がついているのだから、これはちょっとなあと思われても仕方ないですよね。ただ、実際に聴いてみたらわかるけど、こんだけゲストがいながらも、決してゲームの存在感が失われないというか、むしろゲームのラップを引き立てるかのようにゲストをうまく使っているのは、さすがですね。


気になる曲をいくつかピックアップしておきます。


(3)Jesus Piece feat. Kanye West & Common
カニエ・ウエストとコモンと客演が豪華な表題曲。でも、カニエはプロデュースしてるわけでなく、フックで"Something like my Jesus piece"って言うだけっていう、贅沢な起用の仕方。ストリングスと低音のピアノにコーラスが重たく響くアルバムを象徴するような一曲。

(6)All That (Lady) feat. Lil Wayne, Big Sean & Fabolous
これはもう反則ですよw まさかのディアンジェロ使い! 3作連続起用のリル・ウエインにビッグ・ショーン、ファボラスがマイクリレーを繰り広げるポッセカットです。

(7)See No Evil feat. Kendrick Lamar
今年大ブレイクしたケンドリック・ラマーを迎え、フックでタンクがソウルフルな歌声を聞かせる夜の静寂を思わせるような一曲。ラマーのラップがやはり圧倒的で、ちょっと主役喰われ感がするのがおもしろいです。

(11)Freedom feat. Elija Blake
新進気鋭のシンガー・ソングライター、イライジャ・ブレイクを起用し、チャールズ・マン(←マイナーな歌手らしい?)の曲を早回しサンプリングしたソウルフルな一曲。地味だけどいいですね。聴いていると実質的なアルバムのラストみたいな感じがします。

(12)Celebration feat. Chris Brown, Tyga, Wiz Khalifa & Lil Wayne
アルバムの最後を飾るのはリードシングル。ボンサグの「1st Of The Month」を大胆にサンプリングし、クリス・ブラウン、タイガ、ウィズ・カリーファ、リル・ウエインがマイクリレーを繰り広げるアルバム中でもっともキャッチーな一曲。ザ・ゲームがボンサグっぽいフロウを披露するというのが聞き所でしょうかね。ただ、アルバム全体の雰囲気からはちょっと外れるから、どちらかというとボートラっぽい扱いなのかなあと思いますね。


いやあ、今回も期待を裏切らない出来だと思います。地味によい。クラブバンガー的な曲がほとんど入ってないからリスナーを選ぶアルバムではあるけど、ハードコアで骨太な作品を求めているなら、これはオススメです。



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