2014年5月18日日曜日

Michael Jackson『Xscape』(2014)

最初にお断りしておきますが、わたしはマイケル・ジャクソンについて何がしか熱く語れるほどのファンではありません。世間でよく知られているほどのポピュラーな曲はわたしもよく知っていますが、再編集されたベスト盤で聴いたことがあるぐらいの認識しかない人だったりします。

それは、わたしが洋楽に興味を持ち始めた時期に彼のアーティストとしての存在感がすでに「過去のもの」になりつつあったからもしれません。わたしにとって、マイケルといえばデーヴ・スペクターに事あるごとにワイドショーでネタにされる海外セレブというのが、まず思い浮かぶことで、彼の素晴らしい音楽やパフォーマンスを知らなかったわけじゃないけど、いまみたいにyoutubeもない時代に、彼の偉大なる遺産に触れることなく、時間は流れていったというのが、正直なところでしょう。

英語では"posthumous"ということばが使われたりしますが、本作は「死後」2作目となるアルバムです。前回の『Michael』は、正直言うとあまり興味が湧きませんでした。訃報の前にも新作制作の話題はずっとあったわけで、ああいう作品が出てくるのはある意味当然みたいな部分もあったけど、まあ、いままでマイケルにそんなに興味なかったのに急に手を伸ばすなんてことはあり得ず、また先行リリースされたいくつかのシングルなんかも、ちょっとどうなんっていう思いがあったんですよね。

しかしですね、今回はすぐに購入しようと思いました。それは、純粋に事前に公開されたアルバム収録曲を聴いて「カッコイイ」と思ったからです。「ちゃんといまの音になっている」というわけですね。それに、ヴォーカルもあのマイケルだし(前作のはちょっとヴォーカルに難がありましたよね)。そして、その立役者の一人がティンバランドであるのを知って「おー」ってなったのです。やっぱり、彼の生み出すサウンドは特別ですから。

おもしろいことに、今回は膨大な未発表音源の中から、わずか8曲だけがピックアップされた形になっているのですが、デラックス盤には現代風にアレンジされた正規の楽曲に加え、オリジナルの音源をまるっと収録するという特典付き(制作の裏話が聞けるドキュメンタリー風のDVDもついています)。ファンにとっては、両者を比較できるというおいしい聞き方ができるし、実際に比較することでどのようにオリジナルが現代化されたのかが誰にでもわかるようになっているというのは、実に挑戦的な試みだと思います。だって、こんなのプロダクションに自信がなかったらとてもできないでしょ。

ということで、さっそくこの期待の本作の中身に移っていきたいと思います。


2014年5月1日木曜日

Kelis『Food』(2014)

ケリスの6枚目となるニュー・アルバムのタイトルは、「フード」と名付けられています。

料理好きとしても知られ、かつて料理本を出したり、オリジナルソースのプロデュースをしたり、最近では料理番組のホストを務めるなど、その活躍の幅を広めているケリス。今作は、そうした彼女の一面が音楽にも投影された形になったのかもしれませんね。

さて、前作の大胆なEDM化から4年経ち、今度はどんな音楽を聞かせてくれるのか、もう誰も予想できなかったと思うのですが、フタを開けてみたら、「あらまあ」と驚くほどの直球なソウル・アルバムでした! 元々ソウルフルな歌声の持ち主なだけに、こうしたアプローチには全く違和感がないのですが、どちらかといえば尖ったサウンドで勝負してきた彼女だけに、いまのこのタイミングでこうしたオーソドックスとも言えるスタイルに回帰したのは、意外ではありました。

今作は「ニンジャ・チューン」というインディー・レーベルからのリリースになります(というか、前作まではメジャーでのリリースだったんですね!)。イギリスのレコード会社ではありますが、これまでも本国よりもイギリスでヒットを多く飛ばしてきた彼女だけに、これも納得な気がします。そして、注目すべきは、今回はデイヴ・シーテックという人物が全面的にアルバムをプロデュースしているということ。デビュー作が全面ネプチューンズ仕様だったこともあり、こうしたガッツリタッグを組んでのやり方は初めてではないものの、思わず「誰それ?」と言ってしまうほどになじみがなく、検索しないとその正体がわからないほどにはR&B系じゃない人選だったりします(これまで手がけてきたアーティストリストを見てもほとんどロック分野で、ラッパーのワーレイの作品に参加しているのが例外的なぐらいですね)。 

ということで、やはりメインストリーム的なものからは距離を置くスタンスが顕著なケリスらしい、新たな環境にて制作された今作の内容をさっそく見ていくことにしましょう。