2014年12月26日金曜日

The 5 Best Album of the Year 2014/今年のベストなアルバム5枚

今年も残す所わずかになってきました。もうブログの更新ペースが落ちまくりで、ちょっと残念なことになっていますが(汗)、音楽への興味を失わない限り、続けたいとは思います。

さて、年末なので昨年に引き続き、個人的に印象深かったアルバムを取り上げておきたいと思います。前回は勝手にカテゴリー組んで「~~賞」みたいな感じでやりましたが、もう面倒なのでカウントアップ形式です。しかも5枚だけw

いや、振り返ってみて思うに、実はそれほど突き抜けた作品が個人的になかったような気がしています。うーん、聞き逃した作品もたくさんあったかもしれないけど、そういうのも含めて、今年ってどうだったかなあという印象を持っています。

背景としては、このブログの主軸であるR&Bやヒップホップ分野に元気がなかったということかもしれません。まあ、年末に向けて話題作がちらほらと出ましたけど(ディアンジェロとか)、どうも昨年末のビヨンセ騒動以降、元気がないような気がするのは何なんでしょうね。イギー・アザリアのブレイクとか、新風もあったにはあったけど、ああこれで今年も終わるのねと思うとなんだか切ない・・・

何はともあれ、さっそく5位からいきませう。

2014年12月5日金曜日

Mary J. Blige『The London Sessions』(2014)

メアリーJ.ブライジの今年2作目となるニュー・アルバムがいよいよリリースされました。通算13枚目。齢43にして、いま脂が乗っているといってもいいかもしれません。

しかし、正直いうと、個人的にはかなり不安がありました。以前別記事で書いたことだけど、ここ最近のメアリーといえば、サントラ盤にクリスマス盤に、そしてタイトルそのままにロンドンで制作された今作と、企画物が続いています。この動きというのはある種の賭けとも言えるもので、40歳を越えて新たな試みに挑もうとしているR&Bレジェンドの果敢な姿勢の現れとも捉えられるし、しかしながら一方で仮に商業的に失敗したとしても「企画物だから」という逃げ道のあるリスクヘッジに基づいたものとも言えるわけです。サントラが大コケした後だけに、果たして今回はどうなんだろうと、発売前からドキドキさせられました。

振り返れば、正統的なオリジナル作である『My Life II』(2011年)は、いまいち垢抜けない作品でした。続き物がオリジナルを越えられないという定説を、あざとくも証明するような形になってしまったわけです。そこで、メアリー自身も何か感じたのでしょう。企画物を続けることで、アーティストとして何か新しい自分を見出そうとしたのかもしれません。一線で活躍し続けることの難しさですね。

ここで、このアルバムの背景を一応紹介しておきましょう。この企画の発端となったのはイギリスのエレクトロデュオ、ディスクロージャーの「F For You」のリミックスへのヴォーカル参加でした。これ自体なかなか斬新な組み合わせではありましたが、このリミックスのヒットを機に、メアリーはディスクロージャーとEPを制作できないか画策します。そして、新たなサウンドを求め、彼女は1ヶ月のロンドン滞在を決め、そこで現地のミュージシャンとのコラボレーションを重ねることになります。その成果が今作というわけです。アルバムの制作にあたっては、旧知の仲であるロドニー・ジャーキンスが音楽面での指揮を取ることになるのですが、よくもこの短時間でこれだけのプロジェクトを完成させることができたなあと思いますね。彼女がロンドンに滞在していたのは7月ですからね。どこまで彼女が動いたのかわからないけど、今作のためにキャピトルと契約まで結んでいるわけで(ちなみに企画盤ではヴァーヴ、エピック、キャピトルとレコードディールを替えていますが、インタースコープとの契約はもう切れたんでしょうか?)、そう思うとこの行動力はさすがと言えます。

前回のサントラとは違い、今回はプロモーションもたっぷりと行われました。9月にはiTunes Festival
への出演を果たしたほか、各種テレビへの登場もありました。しかし、残念なことに、先行リリースされたシングルはどれもチャートインせず、という厳しい結果に。R&Bシーン自体の停滞という側面もあるかもしれませんが、この反応の薄さは想定外だったかもしれません。

しかし、延期することなく今作は無事に発売されました。これは潔いことだと思います。何はともあれ、この待望の新作の中身を紐解いてみることにしましょう。

Faith Evans『Incomparable』(2014)

フェイス・エヴァンスが通算6作目となるニュー・アルバムをリリースしました。2年前には『R&B Divas』というグラミーにもノミネートされたコンピレーションのリリースもありましたが、純然たる新作ということになると、4年前の『Something About Faith』以来ということになります。

ちょうど、音楽キャリアをスタートしてから20年という節目の年にリリースされた今作ではありますが、20年にしてようやく6作目とは・・・なんとも寡作であります。前回取り上げたキーシャ・コールが10年足らずで6枚のアルバムをリリースしたのとは対照的です。たくさん出せばいいってわけじゃないし、実際には、アルバムのリリースにはレコードディールやプロモーションなどさまざまな条件があるわけで、作ったからといってすんなり出せるというわけでもないんだけど、まあ、ゆっくりながら着実に活動しているという印象ですね。

寡作といえば、同じく90年代半ばにデビューしたブランディーやモニカもそうですね。共通しているのは、子育てとシンガーの両立ということでしょうか。フェイスもご多分にもれず、振り返ると波乱の私生活を送っているわけですが、さまざまな経験や困難が歌へと昇華される姿を見ると、やはりアーティストだなあと思わされます。

急いで付け加えなければいけないのは、これだけマイペースに作品を発表しているフェイスではありますが、彼女のR&Bシンガーとしての特異な位置、その存在感はこの20年に渡り決して揺らぐことはなかったということです(少なくともわたしはそう思います)。今作のタイトルはいみじくも"Incomparable"(比較できない、唯一無二の)なのですが、まさしく、R&B業界においてこれだけ特徴的な、存在感のある声の持ち主はそういるわけではありません(魅惑のソプラノヴォイスですね)。そして、20年の時を経ても、全く衰えることがないというのも驚くべきことでしょう(むしろ成熟している)。

ここ最近の彼女といえば、リアリティ・ショーの『R&B Divas』への出演が話題でしたが、昨年から今作へ向けて動き始めており、今年になってアルバムのタイトルの発表がありました。そして、そのリリースの口火を切ったリードシングルがミッシー・エリオットとの共演ということで、ファンの間で話題を呼びましたね(たぶん)。チャート的にそれほど盛り上がったわけではありませんが、個人的には「キタ~」と思いましたよ。

ということで、いよいよリリースされた彼女のニュー・アルバムを紐解くことにしましょう。今回はほぼ全曲でフェイスがソング・ライティングのみならずプロデュースに関わっています。

2014年11月7日金曜日

Keyshia Cole『Point of No Return』(2014)

キーシャ・コールの通算6枚目にして、インタースコープからの最後のリリースと言われているニュー・アルバムを今回は取り上げます。

前作の『Woman To Woman』はこのブログでも取り上げましたが、それから約2年ぶりの新作ということで、リリースのペースとしては順調と言えるのではないでしょうか。

ただ、実際にこのアルバムに関してはいろいろと思うことがありまして、今回はそのことをまずは書きたいと思います。

まず、困ったのは今回のアルバム、大阪の大きなCDショップをいくつか回ったのだけど、輸入盤ですらフィジカルで流通してないのねw これには驚きました。すでにリリースしてから1月経っているけど、いまでも状況は変わらず・・・本国でもマイナーと思われるようなCDも取り揃えるような店で、彼女のCDを取り扱っていないのはなぜなんでしょうね。しかも、その店のウェブサイトではリリースされたことが告知されているのですよ。不思議過ぎます。

今後もしかしたら入荷の予定があるのかわからないけど、仕方ないので今回はitunesでダウンロードしました。当然ですが、今作は国内盤も出ないでしょうね。これでは、話題にもならないままフェイドアウトしても仕方あるまい・・・

それよりも、問題なのはこのアルバムの中身でしょう。具体的なことはこれから述べますが、この作品を聞きながら私の中にあることが思い浮かびまして、それは、ポスト『Beyoncé』時代をR&Bシンガーはどう生き残るのかということです。

この前も書いたけど、女性R&Bシンガーにとって今年は厳しい時代になりつつあります。確かにヒットチャートをみると女性アーティストが大活躍しているわけです。ただし、そこにR&Bシンガーは居てない。昨年末にビヨンセが一人勝ちして以降、ある意味R&Bはヒットの方程式を見失ってしまったかのような気さえします。ニューカマーとして期待されたジェネイ・アイコやティナーシェですら、チャート上でそこまでのインパクトを残せたわけではありません。

おそらく、その象徴がメアリーJ.ブライジの企画物CDであって、今月リリースの新作がどのような反応があるかわからないけど、少なくとも今年6月に出したサントラはあり得ないほどの大失敗。1年に2作という冒険は素晴らしいのだけど、一方で「企画物だから」という逃げも用意されている・・・メアリーですらそういうリスクを計算しなければいけない状況なわけです。

この前取り上げたジェニファー・ハドソンは、ある意味その解答の一つかなと思います。つまり、PBR&Bとの距離の取り方というか、そのムーヴメントにどこまで乗っかるのか、乗っからないとして、ではどういう方向性を目指すかということです。彼女の場合は、EDMという路線も避け、70年代のディスコ・ソウルへその活路を見出したわけですね。ただし、チャート的には成功しなかった。

では、キーシャ・コールの場合はどうか、という話なわけですね。結論から言うと、やっていることが中途半端というか、これは駄作と言わざるを得ない。彼女の良さが全然伝わらない。そして、彼女がこんなアルバムを作らざるを得なかったいまの時代とは、いったい何なのだろうと考えてしまったわけです。

ということで、さっそく中身をチェックしていきましょう。今回はブックレットがないために詳細がわからないのがツライのですが、分かる範囲で書きたいと思います。

2014年10月26日日曜日

Kem『Promise To Love』(2014)

アメリカR&B/ソウル業界における最右翼!とすら言いたくなる、ケムのニュー・アルバムを今回は取り上げます。

ケム…彼の名を知っているとすれば、相当にR&Bフリークなのではないでしょうか。そうであるが故に、音楽好きに「ケムとか好きなんだよね」とか言っちゃった日には「あんたどんだけ渋い趣味してんのよ」と突っ込まること間違いなしのアーティスト、それがケムです(笑)

なにせ、この徹底した普遍志向とでもいいましょうか、タイムレスでエバーグリーンなサウンド、土臭いソウルというよりも洗練されたジャジーなソウルを追求したその姿勢は、音楽業界におけるある種のバックラッシュ的な働きを果たしていると言えるものです。そこにあるのは「ただグッドミュージックを届けたい」という志のみ(たぶん)。トレンドへの意識とかクラブで盛り上がろうとか、そんなものへの関心は微塵もありません。

そんなケムが、貪欲に進化をしつづける現代のR&Bに食傷気味なリスナーの心の拠り所となったとしてもおかしくはないでしょう。

さて、ケムとは何者か。国内盤も出ておらず情報が少ない中ではありますが、紹介の意味を込めて少しまとめております。

ケム(本名はキム・オーウェンズ)は、デトロイト出身のシンガー・ソングライターです。ケムを語る上で避けて通れないのが、彼のいくつかの決定的とも言える経験、すなわち、高校卒業後に体験したホームレス生活とドラッグ中毒です。彼はこの経験を通じて、自身のスピリチュアリティを見つめなおす機会を得、そして音楽の道へと進むことになります。90年代の出来事です。

それから月日が経ち、2001年ついにデビュー作『Kemistry』をインディペンデントでリリースします。しかしすぐにヒットしたわけではありません。草の根の音楽活動をしながら徐々に認知度を広めていった彼は、現在も所属しているレコード会社であるモータウンと契約し、アルバムを再リリースすることになります。

このアルバムから最初のヒット曲「Love Calls」が生まれます。主にアダコン系のラジオを中心に話題となったこの曲のおかげもあり、デビュー作は50万枚を超えるヒットを記録します。

その後、2005年にはセカンド・アルバム『AlbumII』をリリース、これがいきなり全米5位の大ヒットを記録、そして5年のブランクを経たサード『Intimacy: Album III』はなんと全米2位を記録。彼にとって最大のヒットになるとともに、グラミー賞で2部門にノミネートされるなど、着実に実績を残していきます。

そんな彼の、クリスマス盤を挟んで4作目を、それではさっそく鑑賞してみたいと思います。

2014年10月13日月曜日

Jennifer Hudson『JHUD』(2014)

ジェニファー・ハドソン、通算3枚目のアルバムを今回は取り上げます。

ですが、このアルバムの紹介をする前に、ビルボードの記事の中に興味深い文章があったので引用することから始めたいと思います。

ビルボード曰く、「女性R&Bシンガーにとっては不遇の時代である。現在[この記事の執筆時点]のR&B/ヒップホップチャートでトップ25にエントリーしているのはわずかにティナシェ、ビヨンセ、ジェネイ・アイコだけ」と。男性シンガーとラッパーがチャートを席巻するというのが、いまの全米のチャートであるというわけです。

つまり、そういう状況において彼女は新作をリリースしないといけなかった、ということです。音楽をめぐる状況が一定であるはずはなく、女性シンガー大活躍の時代も過去にはあったわけですが、、ただ、いまはそうなっていないということですね。

言われてみれば「なるほど」と思うと同時に、このジェニファー・ハドソンも、チャートアクションでは確かにかなり苦戦を強いられているなあということを思い起こしました。

まず本作へ向けた動きをみると、リードシングルとして昨年9月に発表された「I Can't Describe」はファレル作ということで話題にはなりましたが、R&B/ヒップホップチャートで29位どまり。今年に入って、ティンバランド作「Walk It Out」で反転攻勢を試みるも46位とチャート的には奮いませんでした。

それでも、アルバムがリリースされたのは喜ばしいことではありますが、その影響もあって、今作も全米初登場10位と過去の彼女の実績からすれば、かなり落ち込んだ結果になりました。

ただ、それと作品の質は別物。70年代の音楽にインスピレーションを得たというこの新作をさっそくチェックしたいと思います。

2014年10月3日金曜日

Jhené Aiko『Souled Out』(2014)

ロサンゼルス出身の女性R&Bシンガー、ジェネイ・アイコの待望のデビュー・アルバムを今回は取り上げます。

母親が日本人とアフリカ系アメリカ人のミックスということで、アジア系の出で立ちが我々にも親近感を抱かせる彼女ですが、現在26歳でありながら、その音楽キャリアは苦節14年を誇る、苦労人でもあります。

彼女が音楽業界に足を入れたのは2000年の頃、姉がGyrlというグループで活動していた縁で、クリス・ストークと知り合いになり若干12歳にしてエピックと契約、当時彼がプロデュースして勢いのあったB2Kのアルバムに参加したりツアーに同行しながら、自身のソロデビューへ向けても準備を進めますが、これが残念ながらお蔵入り。その後、一度音楽活動を休止し学業に専念、彼女の20歳の頃にはR&Bシンガーのオライオン(オマリオンの弟)との間に娘のナミコを授かり、一児の母になります。

それから時を経て、2010年頃から彼女は音楽活動を本格的に再開。まずは西海岸のラッパーの作品にゲスト・ボーカルで参加し知名度を上げます。それも、ケンドリック・ラマーにスクールボーイQにアブ・ソウルと、なかなかに濃いメンツ。そして、自身も2011年に初のミックステープとなる『sailing soul(s)』をリリース、カニエやドレイクまで参加した豪華な作りのこのアルバムが業界で高い評価を得ることになります。そこから、デフ・ジャム傘下にあるNo.IDのレーベル、アーティウム(ARTium)レコーズと契約し、2013年には本作の前哨戦とも言えるEP『Sail Soul』をリリース。全米8位を記録します。

そして、今年になっていよいよ発表されたのが本作というわけですが、すでに業界的な期待値が上がっていた中でのリリースということで、彼女の歌声を知っていた人にとっては、随分と待たされたという気がしないでもありません。プロモーションに十分に時間をかけたと言えそうですが、その効果もあって、本作は初登場全米3位のヒットを記録しています。先行シングルが目立ったヒットをしていない中で、これは大健闘といえるでしょう。

ということで、期待の新人でもある彼女のデビュー作の内容をさっそくチェックしていきましょう。

2014年9月26日金曜日

Tank『Stronger』(2014)

タンクの通算6作目となる新作を今回は紹介しましょう。

タンクということでわたしの脳裏にはふと「アニキ系R&Bシンガー」ということばが浮かびました。何と言っても、2001年のデビューアルバムで披露した見事な肉体美(特に上腕二頭筋ね)、あの過剰なまでのマッチョイズムの印象は強烈でしたからね。そして、セカンドでは一度引っ込んだその肉体表現が、5年の時を経たサードでさらにバージョンアップして復活した時の衝撃といったら・・・上半身裸の自身の肉体をジャケ写に用いるアーティストは多くいても(これ自体興味深い現象ではありますが)、あそこまでムキムキなのはタンクをおいて他にいないでしょう。

まさに「アニキ~」と呼びたくなるようなヴィジュアルなのですが、そのヴィジュアルに反して歌は甘くて繊細だったりするから、またそのギャップにやられてしまうんですよね。歌声にそれほど特徴があるわけではないけど(失礼!)、それでも彼に虜になるファンがいるとしたら、そんな要素もあるかもしれません。

急いで付け加えますが、彼はさまざまなアーティストに楽曲を提供する優れたソングライター/プロデューサーでもあります(アリーヤ、ビヨンセ、モニカなど…)。だからこそ、あのムキムキの意味はいったい何なのだろうとわたしは考えてしまうのではありますが、彼が高校時代にアスリートとして活躍していてもともと肉体的に恵まれていたことと、R&Bの一要素とも言えるセックスアピールを強調したイメージ戦略というのが関係あるのではないでしょうか。余談ですが、振り返れば1枚目、3枚目、5枚目と奇数のアルバムで裸を披露しているので、次作ではまた裸のタンクを拝むことができるかもしれません。

さて、「アニキ系~」と言えば、昨年すごいプロジェクトが業界で話題になりました。そう「TGT」(タイリース、ジェニュワイン、タンクの頭文字をとったグループ名)ですよ。肉体的にも素晴らしい三人のアーティストによる夢の共演で(ってすごい括りですが)グラミー賞にもノミネートされるなど、R&Bファンにはたまらない活躍をみせました。

そんなタンク兄の2年ぶりとなるアルバム。シンガーソングライターとしてコンスタントに活動を続ける彼の最新作をさっそくチェックしましょう。

2014年9月19日金曜日

Jennifer Lopez『A.K.A.』(2014)

ジェニファー・ロペスの8枚目となるオリジナル・アルバムです。あまり日本語で取り上げているサイトがないので、今回はこの作品をレビューしたいと思います。

言うまでもなく、ジェニファー・ロペスといえばさまざまな映画への出演経験(もちろん主演多数)のある大女優であるとともに、音楽業界においてもコンスタントにアルバムをリリースしヒットを飛ばすシンガーであります。アーティストがが映画に出るパターンは幾多あれど、始めから両軸あって活動を続けられる人はアメリカでも稀であり、彼女の特異な立ち位置を示していると思います。

そんなJ.LOの最近の音楽業界での動きを少し振り返っておきましょう。

近年の彼女の大ヒットといえば「On The Floor feat. Pitbull」ですね。音楽性的にはR&B/ヒップホップを主軸にして時にラテンフレイバーの楽曲を制作するというのがこれまでの彼女だったわけですが、この曲では大胆にEDMを取り入れ、誰もが知る「ランバダ」のサンプリングとともに、新たな地平を開いたと言えます。

この曲のヒットを受けてリリースされたアルバム『LOVE?』(これも何度も延期を繰り返しレコード会社を移籍してようやくリリースされたという作品でした)では、いままでになくダンサブルなサウンド満載の弾けたJ.LOを堪能することができました。かつてジャネット・ジャクソンのバックダンサーを務めたこともあるとのことですが、パフォーマンスでも40代とは思えぬキレのあるダンスを披露してまだまだ現役であることをアピールしていましたね。

そんな彼女ですが、昨年には新たにキャピトル・レコードと契約を結び、新作へ向けてのレコーディングを続けてきました。その第1弾となったシングル「Live It Up」は、レッドワン制作のEDMチューンでクラブヒットはしたけどチャート的には盛り上がらず、今作にも残念ながら収録されていませんが、逆にそのことが今作の方向性を定めたのでしょう。事前情報でR&Bサウンドへの回帰が謳われ、フタを開けてみれば確かに従来の彼女の延長にあるアーバンなサウンドになっていました。あれだけブームに乗っかったEDMとは一度別れを告げたわけですね。

ということで、さっそく内容にうつっていきたいと思います。

2014年9月11日木曜日

Ariana Grande『My Everything』(2014)

アリアナ・グランデの約1年ぶりとなるセカンド・アルバムです。去年このブログでデビュー作を取り上げてから1年、こんなに早く次作のレビューをするとは思いもしませんでした!

それにしても、スター街道まっしぐらですね。現在21歳ということで、アーティストとしても勢いのある時期だと思いますが、このハイペースでのリリースはもしやポストリアーナ的なポジションを狙っているのかと思わせるほどです。普通、こんなに早いインターバルでアルバムを出しませんからね。

そして、今年に入ってから来日も果たしていて、キュートなルックスも相まって日本での知名度も着々と上げつつあるのが素晴らしい。リアーナよりは確実に日本受けがいいだろうとは思いますが、押さえるところを押さえているのはさすがですw

アリアナちゃんのここ最近の動向を振り返っておきましょう。今年の1月には早くも次のアルバムに向けて動き出しているとの情報があり、実際に4月下旬にはイギー・アゼリアと組んだリードシングル「Problem」を発表、これがいきなりの大ヒットになります。全米チャートで見事2位を獲得、イギー・アザリアの「Fancy」がヒットしていたタイミングでもあり、この時機を得たコラボで一気に流れをつかみます。

そして、このヒットの勢いを保ったまま、次にセカンド・シングルとして「Break Free」を投下、こちらもいま勢いのあるDJ、Zeddとのコラボレーションで全米4位を記録します。さらには、ジェシー・J、ニッキー・ミナージュとのコラボである「Bang Bang」も同時期にリリースされ、こちらも全米4位のヒットとなります。

短期間でこれだけヒットチャートの上位にシングルをランクインさせるのは並大抵のことではなく、彼女の勢いを感じさせる出来事だと思いますが、この勢いのままにリリースされたのがセカンド・アルバムということになります。

では、さっそく中身をみていくことにしましょう。

2014年9月9日火曜日

Sam Smith『In The Lonely Hour』(2014)

今年デビューし、いきなり大ブレイクを果たした新生、サム・スミスのデビュー・アルバムを紹介したいと思います。

サム・スミスは1992年生まれ、ロンドン出身の22歳。10代の頃(っていっても最近ですけど)から音楽学校に通い、ジャズ・シンガーにも師事しながら、歌とソングライティングの勉強に勤しんだそうで、初めて曲を書いたのは18歳の時とのこと。

そんな彼が世間で初めて注目されたのは2012年の頃。UKのエレクトロ・デュオ、ディスクロージャーの「Latch」にフィーチャーされ、この曲がUKチャートで11位を記録したことがブレイクのきっかけとなりました。この曲自体今年に入ってから全米でも7位になるなど再注目されているのですが、クールなトラックと彼のぬくもりのある声の組み合わせがリスナーの心をつかんだのかもしれません。

翌年の2013年には、いよいよデビュー・シングルの「Lay Me Down」をリリース。しかし、さっぱりヒットしませんでした。ただ、この年の5月、エメリー・サンデなども手がけるプロデューサー/DJのノーティー・ボーイの「La La La」でフィーチャーされ、こちらは全英1位の大ヒットを記録、この客演仕事で彼自身への注目度が一気に高まることになります。

今年に入ってから、セカンド・シングルの「Money On My Mind」をリリース、これが全英1位に大ヒットを記録し、一気にアルバムリリースへの手がかりをつかみます。そして、今年の5月に本作はリリースされ、全英のみならず全米でも大ヒットを記録することになります(全英1位、全米2位)。

サム・スミスといえば、リリース前後での精力的なプロモーションとともに、あることが話題になりました。それは、彼がゲイであることを告白したこと。フランク・オーシャンほどのインパクトはなかったかも・・・と思いつつ、こうしてまた、ゲイであることを公表しながら活躍の場を広げる歌手が増えたことは、ヲキャマ的には嬉しいことですw

ちなみに、彼は音楽的な影響を受けたアーティストとしてエイミー・ワインハウスを真っ先に上げていますが、同様にホイットニー・ヒューストンやビヨンセ、マライア・キャリーも好きだとのことで、なるほどーって感じですよねw

さて、肝心のアルバムの方ですが、さまざまな恋愛模様が歌われています。ただし、どれも「片思い」とのことで、男性への叶わぬ思いが歌に昇華されたといったところでしょうか。さっそく、中身をみていきましょう。

Marsha Amrbosius『Friends & Lovers』(2014)

マーシャ・アンブロジウスの待望のセカンド・アルバムを今回は取り上げたいと思います。

「待望の」と書いたけど、前作から3年というブランクはアメリカの音楽事情を考えると決して長いとは言えないでしょう。ただ、すでに2年前に次のアルバムからのシングルとして「Cold War」という曲を発表しており、その後ニーヨを迎えての「Without You」の発表もあったことから(いずれも残念ながら今作未収録)、リスナーとしてはそれなりに待たされたことにはなるわけです。

はっきり言って、先行シングルがどれもヒットしなかったわけで、これ以上待ってもしょうがないから出したんだとは思うんですよね。ただ、確かに前作からは「Far Away」がヒットしたとはいえ、もともとそういう売れ線のアーティストではないとも言えるので、まあ、とにもかくにもアルバムをリリースしてホッといったところかもしれません。

ところで、マーシャ・アンブロジウスとは何者かみたいな話を今更するのはなんだかなあと思うんですが、R&Bフリークじゃないとなかなか知らないかもしれないので簡単におさらいしておきます。

イギリスのリヴァプール出身のマーシャは、2000年代に同郷のナタリー・スチュワートと"Floetry"を結成し、アメリカで活動します。アルバム2枚とライヴ盤1枚をリリース、いわゆるネオソウル系のサウンドを志向しながら、歌とポエトリー・リーディングという例をみない組み合わせで注目を集めます。しかし、グループはその後事実上の解散、二人はソロとしてのキャリアを歩むことになります。

マーシャは、ソングライターとしてアリシア・キーズなどと仕事をいっしょにした他に、一時期ドクター・ドレーのアフターマスと契約していたこともあり(結局リリースできずじまいの塩漬けパターンではありましたが)、ヒップホップアクトとの共演も多く果たします。ソロシンガーとしても着実に地を固めていったわけですね。

そんな中、2011年にソロ第1作目となる『Late Nights & Early Mornings』をリリース、いきなり全米2位のヒットを飛ばすことになります。このアルバム、一言でいうとエロいんです。スロージャムが主体の非常に官能的な作品で、マーシャの歌声がときにまるで喘ぎ声のように聞こえたりする、すごくアダルトな仕上がり。トラックは生音主体で、時流とか関係なくやりたいことやってます感が伝わる、ソロ作に相応しい内容でした。

そのマーシャのソロ第2作なわけですが、この口唇ドアップのジャケ写が物語るように、今回も官能的な作風を堪能できそうです。すでに37歳のマーシャなので、どんだけアダルト路線で攻めてきても驚きはしないわけですが、優れたソングライターでもある彼女がセカンドでどんな歌声を聞かせてくれるのか・・・さっそく、中身にうつるとしましょう。

2014年9月4日木曜日

Sia『1000 Forms of Fear』(2014)

書く機会をいつの間にか逸していましたが、久しぶりにブログ再開します。

たくさんCD買ったし、書きたいネタもいくつもあったのだけど、仕事が忙しすぎてブログなんか書いている暇がないという・・・実情はそんなところです。別に音楽から離れていたわけではありませんよ。

ただ、そんな中でも、「これについては書いておかないと」という作品があって、それがこのシーアの新作です(リリースは7月の初頭でした)。

とにかく、いろいろと衝撃を受けたというか、彼女のシンガーソングライターとしての才能に驚かされたというか。エネルギーをたくさんもらえる音楽だと思いました。

まだ国内盤は出ていないようなので、詳しく知らないという人へ向けて、今回は彼女の新作を紹介していきます。

まずは、シーアとは何者か、ですね。わたしが初めて彼女の声を聞いたのはデヴィッド・ゲッタの「Titanium」を通じてでした。

当初メアリー・J.ブライジが担当するはずだったというこの曲で、彼女はヴォーカルを務めます。そして、EDMブームの波にも乗って、シーアという世界的にはまだ無名のアーティストの個性的な声が、この曲のヒットを通じて世界に紹介されるようになったわけです。もちろん、わたしもそこで初めて彼女の声を聞いたわけですね。ただ、彼女のキャリアを振り返ると、ポッと出の新人ではなく、すでに下積みのある人物であることがわかります。

1975年生まれ、オーストラリアのアデレード出身の彼女は、両親がミュージシャンだったこともあり、幼少からさまざまな音楽に親しみ、自分でも音楽活動をするようになったそうです。10代後半にアシッド・ジャズのバンド"Crisp"を結成し、アルバムを2枚リリース、その後脱退し、ソロ活動へと移行します。1997年に"Sia Furler"名義でデビュー・アルバム『OnlySee』をオーストラリアでリリースするも成功しませんでした。

2000年代に入るとロンドンへ移住し、ソニーのDance Poolというレーベルと契約、『Healing Is Difficult』というアルバムをリリースします。このアルバムの収録曲「Taken For Granted」がUKで初のトップ10ヒットを記録しますが、それ以上の成功には至りませんでした。

その後も、レコード会社を転々としながらアルバムのリリースを続けます。特に2010年にリリースした5作目となる『We Are Born』は地元オーストラリアで多くの音楽賞を受賞するなどして、評価が徐々に高まっていきました。そして、デヴィッド・ゲッタ作でのヒット以降は客演仕事のみならず、ソングライターとしても活躍の場を広げ、クリスティーナ・アギレラ、ニーヨ、リアーナ、ビヨンセ、ケシャ、ケイティー・ペリー、ブリトニー・スピアーズなど、アメリカのトップクラスのミュージシャンの曲を次々と手がけるようになり、一気にその才能を開花させます。実はそのような華々しい活躍の裏に、バセドウ病との闘いやアルコール中毒や自殺未遂など、彼女自身にはさまざまなトラブルがあったのですが、それはここでは置いておきましょう。

そんな中、いよいよ彼女自身がソロ活動を再開させます。しかしながら、そのコンセプトは一筋縄ではいかないもので、アルバムのジャケ写にも象徴されているように、自分自身の顔は一切出すことなく、プロモーション活動においても、敢えて自身が顔を出すことをしませんでした(最初からレコード会社とそのような条件で契約したようです)。裏方として成功したことを逆手に取ったと言えそうです。

いくつかのテレビ番組にシーアは実は登場したのですが、そこで披露されたのは「後ろを向いたまま決してカメラに顔を向けることなく歌う」というパフォーマンス。替りに前に出たのは、プロモーションビデオでも登場したマディー・ジグラーという少女ダンサー。この斬新な演出が、結果的に話題を呼び、プロモーションの効果を発揮することになりました。

このようなパフォーマンスも功を奏して、このアルバム、全米で見事1位を獲得する大ヒットを記録しました。まあ、発売のタイミングがたまたまよかっただけだったりするのですが、この後、リード曲の「Chandelier」もロングヒットを続けていることから、シーアにとって過去最大の大躍進を果たしたと言ってもいいでしょう。

さて、こうしてリリースされたシーアの新作。中身をさっそく見ていくことにしましょう。プロデュースは一曲を除き、全てグレッグ・カースティン(リリー・アレン、ケリー・クラークソン、ピンクなど、女性アーティストのプロデュースを得意としています)が前作から続投、ソングライティングはもちろんシーア自身が行っています。

2014年8月17日日曜日

Joe『Bridges』(2014)

※途中まで書いて1月以上放置していた記事です。タイミングを逸した感もありつつ・・・公開します。

この回復力の早さと言ったら! そう言わずにはいられない、R&B界のジェントルマン(いや、プレイボーイかw)、ジョーの通算11枚目となるオリジナル・アルバムがリリースされました。

昨年『Doubleback: Evolution of R&B』というアルバムを出したばかりだというのに、もう次の新作が出るなんて、ファンにはたまりませんよね。すでにベテランの域に達しているジョーが、いまなおクリエイティヴである姿には驚かずにいられません。

しかも、今回は長年のビジネスパートナーであるキダー・マッセンバーグと決別し、自身のレーベルからのリリースになります。インディーズになったからリリースに関してもより自由な姿勢で臨めているのでしょうが、自分のレーベルも立ち上げて、ここに来てエンジン全開なのがな
んとも頼もしい限りです。

さて、今作の布石としてケリー・ローランドとのデュエット曲が発表されました。前作に収録されていた「Love & Sex」の続編だったのですが、これがリリースされた時には「リパッケージ版でも出すかな?」ぐらいの感じで受け止めていました。それが、フタを開けてみたら、この新作からのリード曲だったわけです。非常に興味深い展開だなと思いました。まさに前作から今作への”橋渡し的”な曲として機能させたわけですね(まあ、ヒットはしなかったわけですが)。

前作では収録曲の半分をジョー自身がプロデュースしていましたが、今回のソングライティングのみで、アルバムの大半をデレク・アレンがプロデュースしています。前作で相性が良かったからでしょうか、もともと多くのプロデューサーとタッグを組まないタイプなので、今回はベテランの彼に委ねたのでしょう。

では、さっそくアルバムの中身にうつりましょう。


2014年6月29日日曜日

Mary J. Blige『Think Like A Man Too』(2014)

このアルバムをどのように捉えるべきか、というのは野暮な問いかもしれません。メアリーJ.ブライジの新作であるとこの際はっきりと言ってしまいましょう。

昨年末にメアリーはヴァーヴからクリスマス盤をリリースし、新境地を開きました。あのアルバム、中古で少し遅れて入手したのですが、見事なまでにR&B要素はなく(ゴスペル風味の曲はあったけど)、ホリデイアルバムのマナーに沿った非常にクラシカルな作風で驚いたのを覚えています。色々とやってきたメアリーだからあれもありかもしれないと思いつつ、何か物足りなさを覚えたりもしました。シンガーとしての彼女の歌声を堪能するにはあれもまたひとつの趣きだったのかもしれません。

まあ、あれはああいう企画物だからよかったのですが、まさかその次作までも企画物で攻めてくるとは・・・これには意表を突かれました。サウンドトラックなんですよね、今回は。しかも、サントラなのに全曲メアリー姐さんの新曲っていうサプライズです。いままで多くのサントラに参加してきた彼女ではありますが、全曲メアリーっていうのは言うまでもなく初めてのことです。サントラとして考えても大胆な試みだと言えるし、メアリーのキャリアの中でも、一度あるかないかぐらいの特別な作品と言えるのではないでしょうか。

一応映画のサントラということで、音楽の中身も映画を意識したものになっているとは思うのですが、肝心の映画を観ていないので、世界観がどうシンクロしているのかというは評価することはできません(日本公開ってそもそもあるの?)。ただ、一つ大事なのは、この映画にメアリー自身は出演していないということ。過去にプリンスやマライア・キャリーが自身の主演映画に合わせてサントラアルバムを出したりしましたが、そういうことでもなく、純粋に彼女の音楽がサントラとして採用されたというわけなんですね。これは彼女の女性R&Bシンガーとしてのステータスと無関係ではないでしょう。メアリーだからこそ可能な企画だったと思います。

さて、そのサントラの中身ですが、全14曲中7曲をトリッキー・スチュアートとザ・ドリームのコンビが手がけています。過去にもメアリー曲を手がけたことがある2人ですが、今回はメイン級での扱い。やや旬が過ぎてしまった感の二人ではありますが、実力があるのは間違いないので、どんなサウンドになっているか期待が高まるところです。

ということで、さっそく中身をみていくことにしましょう。

2014年6月17日火曜日

Mariah Carey『Me. I Am Mariah...The Elusive Chanteuse』(2014)

マライア・キャリーの通算14枚目となるアルバムです。何というか、これだけのスーパースターなのだから、毎回作品が話題になるのは当然なのではありますが、今回もなかなかに考えさせられる内容でして、レビューするのも大変だなあと思ってしまいました。「なんて素晴らしいの!」と素直に言えればいいんだけど、そうもいかないようでして(汗)

まず、事実から言いましょう。セールス面ではマライア史上もっとも売れていないアルバムということになります。全米初登場3位でしたが、5万8000枚という数字は彼女にとってもっとも低いセールスであり、そして、今後ロングヒットで持ち直すかどうかどうかと言われたら微妙と言わざるを得ない。とにかく、売れていない!

まあ、過去にも何度かコケたことはあるわけで、コケてもタダでは起きない彼女だと信じたいのだけど、しかし、今回のコケっぷりは、ちょっと深刻なのではないかと思ってしまいます。

このセールス不信の背景を探ってみましょう。一つにヒットシングルに恵まれず、アルバムのリリース日を何度も延期したという経緯があります。かろうじて昨年出したミゲルとのコラボシングル「#Beautiful」はヒットしたものの、そのタイミングでうまくアルバムをリリースできず、その後に出したシングルも軒並みコケたこともあり、今回のアルバムリリースはもう「これ以上シングルヒットを待っても仕方ない」という諦めのようなものすら感じさせるものでした。そういえば、タイトルも当初は『The Art of Letting Go』でしたからね。レコード会社の思惑もあったとは思いますが、リスナーからしたら自信のなさの表れと取られても仕方のない対応だったような気がします。

それ以前に、彼女のアーティストとしての旬が過ぎてしまったという見方もできるかとは思いますが、マライア・キャリーの代わりなどいるはずもなく、期待の値がそれほど下がったとは考えにくいことです。まあ、前作の『Memoirs of an Imperfect Angel』も大してヒットしなかったわけだから、セールス的な面ではすでに落ち着いて来ていたと言えるかもしれませんが。

わたしがイケ好かないなあと思ったことを言います。それはこのアルバムタイトルと、ジャケ写です。まず、この長ったらしいタイトルは、彼女の煮え切らぬスタンスを表しているようで、どうにも好きになれません。過去にも自分の名前を冠したアルバムをリリースしたことがありますが、いまさら自己紹介してどうするよ!っていうツッコミを入れたくなります。まあ、それが「elusive」(つかみどころのない)の意味するところかもしれないけど。

そして、ジャケ写です。スタンダード盤では相変わらずボディコンシャスな格好なマライア様なのですが、どうみても修正してるでしょ、っていうね。マライアのFacebook見てると、いろいろな写真流れてくるけど、比べるにこんなに体型細くないのはまるわかりなわけで・・・

こういう言い方したらアレですけど、やっぱりマライアの現在形っていうのを見たいわけですよ。でも、アートワーク一つとっても、どうにも後ろ向きな気がしてしまうんですよねえ。過去の栄光を再び、みたいなね。でも、もうそういうことしている時点でアウトじゃないですか。新しいリスナーを開拓しようという意欲がないんだったら、そりゃそういうところに落ち着くだろうっていうね。

さて、いろいろと書きましたが、肝心なのは何はともあれ音なわけですよ。そして、この部分こそがなんとも悩ましいのですね(笑)

まあ、ウダウダ言っててもしょうがないので、中身にうつっていくことにしますね。今作も全曲マライアがプロデュースに関わっています。

2014年6月14日土曜日

Kelly Price『Sing Pray Love, Vol.1: Sing』(2014)

すでにベテランと言っていい経歴をほこるR&B/ゴスペルシンガー、ケリー・プライスの通算7作目となるニュー・アルバムがリリースされました。いまはなきデフ・ソウルからデビューしたのは98年なので、もう15年以上の時が流れたことになりますね。実力派のシンガーだけに、こうしてコンスタントに作品を発表してくれるのは、R&Bファンとしてはうれしい限りです。

さて、2011年にリリースした前作の『Kelly』は、セールスこそあまり振るわなかったものの、4つのグラミー賞ノミネーションを受けるなど、業界内での評価は非常に高いものでした。かく言うわたしも、ゴスペルを経由してのR&B作ということで、いっそうパワフルになった彼女の歌声に元気をもらった一人なのですが、時流に流されることなく、王道のR&B作品に仕上がっていたのがとにかくよかったなと思いました。

そんな彼女ですが、芸能的な話題では、リアリティショーへの出演というトピックもありました。2013年に始まった『R&B DIva: Los Angels』という番組ですね。詳細は不明ですが、なかなかの嫌な女っぷりがこの番組では露呈されたみたいで、彼女に対する見方が良くも悪くも変わったという評価があるみたいです。話題作りにはなったかもしれませんが、音楽活動に影響がなければいいですよね・・・まあ、新作がこうして出たのだからあまり気にする必要はないかもしれません。

そのケリー・プライスの最新作ですが、今回はeOneからのリリース。過去にも共作しているシェップ・クロフォードが全面プロデュースということで、今回もきっとR&Bの王道ともいえる作品に違いない、と期待してしまいますね。

ということで、さっそくレビューにうつっていきましょう。

2014年5月18日日曜日

Michael Jackson『Xscape』(2014)

最初にお断りしておきますが、わたしはマイケル・ジャクソンについて何がしか熱く語れるほどのファンではありません。世間でよく知られているほどのポピュラーな曲はわたしもよく知っていますが、再編集されたベスト盤で聴いたことがあるぐらいの認識しかない人だったりします。

それは、わたしが洋楽に興味を持ち始めた時期に彼のアーティストとしての存在感がすでに「過去のもの」になりつつあったからもしれません。わたしにとって、マイケルといえばデーヴ・スペクターに事あるごとにワイドショーでネタにされる海外セレブというのが、まず思い浮かぶことで、彼の素晴らしい音楽やパフォーマンスを知らなかったわけじゃないけど、いまみたいにyoutubeもない時代に、彼の偉大なる遺産に触れることなく、時間は流れていったというのが、正直なところでしょう。

英語では"posthumous"ということばが使われたりしますが、本作は「死後」2作目となるアルバムです。前回の『Michael』は、正直言うとあまり興味が湧きませんでした。訃報の前にも新作制作の話題はずっとあったわけで、ああいう作品が出てくるのはある意味当然みたいな部分もあったけど、まあ、いままでマイケルにそんなに興味なかったのに急に手を伸ばすなんてことはあり得ず、また先行リリースされたいくつかのシングルなんかも、ちょっとどうなんっていう思いがあったんですよね。

しかしですね、今回はすぐに購入しようと思いました。それは、純粋に事前に公開されたアルバム収録曲を聴いて「カッコイイ」と思ったからです。「ちゃんといまの音になっている」というわけですね。それに、ヴォーカルもあのマイケルだし(前作のはちょっとヴォーカルに難がありましたよね)。そして、その立役者の一人がティンバランドであるのを知って「おー」ってなったのです。やっぱり、彼の生み出すサウンドは特別ですから。

おもしろいことに、今回は膨大な未発表音源の中から、わずか8曲だけがピックアップされた形になっているのですが、デラックス盤には現代風にアレンジされた正規の楽曲に加え、オリジナルの音源をまるっと収録するという特典付き(制作の裏話が聞けるドキュメンタリー風のDVDもついています)。ファンにとっては、両者を比較できるというおいしい聞き方ができるし、実際に比較することでどのようにオリジナルが現代化されたのかが誰にでもわかるようになっているというのは、実に挑戦的な試みだと思います。だって、こんなのプロダクションに自信がなかったらとてもできないでしょ。

ということで、さっそくこの期待の本作の中身に移っていきたいと思います。


2014年5月1日木曜日

Kelis『Food』(2014)

ケリスの6枚目となるニュー・アルバムのタイトルは、「フード」と名付けられています。

料理好きとしても知られ、かつて料理本を出したり、オリジナルソースのプロデュースをしたり、最近では料理番組のホストを務めるなど、その活躍の幅を広めているケリス。今作は、そうした彼女の一面が音楽にも投影された形になったのかもしれませんね。

さて、前作の大胆なEDM化から4年経ち、今度はどんな音楽を聞かせてくれるのか、もう誰も予想できなかったと思うのですが、フタを開けてみたら、「あらまあ」と驚くほどの直球なソウル・アルバムでした! 元々ソウルフルな歌声の持ち主なだけに、こうしたアプローチには全く違和感がないのですが、どちらかといえば尖ったサウンドで勝負してきた彼女だけに、いまのこのタイミングでこうしたオーソドックスとも言えるスタイルに回帰したのは、意外ではありました。

今作は「ニンジャ・チューン」というインディー・レーベルからのリリースになります(というか、前作まではメジャーでのリリースだったんですね!)。イギリスのレコード会社ではありますが、これまでも本国よりもイギリスでヒットを多く飛ばしてきた彼女だけに、これも納得な気がします。そして、注目すべきは、今回はデイヴ・シーテックという人物が全面的にアルバムをプロデュースしているということ。デビュー作が全面ネプチューンズ仕様だったこともあり、こうしたガッツリタッグを組んでのやり方は初めてではないものの、思わず「誰それ?」と言ってしまうほどになじみがなく、検索しないとその正体がわからないほどにはR&B系じゃない人選だったりします(これまで手がけてきたアーティストリストを見てもほとんどロック分野で、ラッパーのワーレイの作品に参加しているのが例外的なぐらいですね)。 

ということで、やはりメインストリーム的なものからは距離を置くスタンスが顕著なケリスらしい、新たな環境にて制作された今作の内容をさっそく見ていくことにしましょう。


2014年4月29日火曜日

Kelis『Fleshtone』(2010)

R&Bシンガーのケリスが先日ニューアルバムをリリースしました。そこでさっそくそのアルバムを取り上げようかと思ったのですが、その前にこの前作について先に紹介しようと思います。

このアルバム、ケリスらしいと言えばそうと言えるし、「あららどうしちゃったの?」と言えるような、彼女のキャリアからしたら特異なアルバムだったりします。自分の中では「あれって何だったの」感なきにしろあらずで、新作が出たいまだからこそ語れるのかなあという気もします。

ケリスといえば、1999年にネプチューンズの全面バックアップを受けて登場したシンガーで、その強烈のデビューシングルも印象的でした。「あんたなんか大嫌いよ」ってシャウトする例のアレですね。ビジュアルもショッキングピンクなアフロ
ヘアというR&Bでは珍しい出で立ちでした。

彼女はネプ(しかも90年代後半の尖った時代)とのタッグからも想像できる通り、どちらかといえば、王道を行くというよりも、よりエッジーでアーバンなテイストを売りとするアーティストというイメージがあります。その流れからすると、この5作目において、彼女が時代の流れであるEDM路線に大きくシフトしてもおかしくはないように思えます。そして、このアルバム、ウィル・アイ・アムのレーベルからのリリースということ(彼はその前の『Kelis Was Here』にも参加しています)で、EDM化した彼に合わせたように、彼女も新たな一歩を踏み出したわけです。

ケリスといえば、なんといってもそのハスキーなヴォーカルが特徴的なだけに、その声とダンストラックの相性がどれほどのものなのか、気になるところではありますが、さっそくアルバムの中身を見て行きたいと思います。全9曲+ボートラ一曲の極めてコンパクトな仕様になっています。


2014年4月16日水曜日

Jazmine Sullivan『Fearless』(2008)

久しぶりの更新ですね・・・すんません。忙しくて、ブログ書くヒマありませんでしたわw

もちろん、音楽は聞いているんだけど、ほとんど作業用というか、何となく流しているっていう感じが多いですね。じっくり味わうとか、そういう鑑賞スタイルになかなかならないというのが現状でございます。

で、久しぶりに取り上げるCDがこのジャズミン・サリヴァンのデビュー作なわけです。

結論からいうと、傑作だと思います。当時まだ21歳というのが信じられないくらいに成熟した歌声と、完成度の高いプロダクション。いまでもたまに無性に聞きたくなってしまうんですよね、このアルバム。

セカンドも大好きなんだけど、今回はあえてファーストを選びました。一時期、音楽業界から遠ざかるみたいな話もあったりして、どうなるかと思いきや、今年に入ってライヴ活動なども再開しているとのこと。そこで、いろいろな期待を込めて、このアルバムを掘り下げたいと思います。

彼女の来歴ですが、フィラデルフィア出身です。「フィリー・ソウル」なんて言われるぐらいに、ソウル・ミュージックのメッカで、数々のアーティストを生み出してきたこの地に生まれた彼女、幼少の頃からコーラス隊で歌をうたっていたそう。そして、驚くべきことに、わずか16歳でジャイヴレコードと契約を結んでいます。しかし、当時予告されていたアルバムは残念ながら日の目を見ることがありませんでした。ただ、そこでいっしょに曲作りをしたミッシー・エリオットとの関係は継続させ、まずはソングライターとして下積みを重ねることになります。クリスティーナ・ミリアンやジェニファー・ハドソンらへ楽曲を提供しています。それとともに、新天地であるJレコーズとの契約も交わすことになります。

そこからリリースしたデビューシングル、「Need U Bad」がいきなりにヒットを記録します。そして、その勢いにのってアルバムをリリース、初登場6位を記録したほか、グラミー賞でも複数ノミネートされるなど、彼女の快進撃が始まるわけですね。

そんな彼女のデビューアルバムをさっそく聞いてみることにしましょう。全ての楽曲で彼女がソングライティングを担当しているほか、メイン・プロデューサーとしてとサラーム・レミが起用されています。

2014年3月19日水曜日

Ashanti『Braveheart』(2014)

久しぶりの更新ですが・・・今回はアシャンティです。やっと出た!と言ったところでしょうか。せっかくなので、まずは彼女のこれまでの歩みを簡単に振り返っておきたいと思います。

彼女がデビューしたのは2002年の頃、当時は「Hip-Hop/R&Bのプリンセス」とキャッチフレーズが付けられたりもしていました。ポストメアリーJ的な立ち位置の若手シンガーとして、いきなりブレイクを果たしたのが、アシャンティというわけです(そういえば、Hip-Hop/R&Bということば自体がいまや死語になりつつありますが、これも時代の流れですね)。

何しろ彼女のデビューアルバムは初週でいきなり50万枚も売り上げたわけですからね。女性シンガーのソロ作でそこまで売り上げられるアーティストは本当に限られているわけで、振り返ると、すごい快進撃と言えます。

彼女は新興レーベルであった「マーダー・インク」(後に「ジ・インク」に改名)に所属していました。看板ラッパーであるジャ・ルールとともに、彼女がこのレーベルの稼ぎ頭だったことは間違いありません。そのことを象徴するかのように、1年に一枚のペースでセカンド、サードアルバムを立て続けにリリースし、ヒットを飛ばしました。

しかし、レーベルのいざこざも起因して、彼女の活動は失速してしまいます。実質、彼女がトップランナーとして活躍したのは3~4年ということになります。その後は、女優としての仕事をこなしながら、次のアルバムリリースに向けて、音楽活動を地道に続けていくことになります。自主レーベルを立ち上げたりもしましたね。

そうして、約4年というブランクを得てリリースされたのが、4枚目のアルバム『The Declaration』(2008年)でした。モータウンからの発表だったのですが、このアルバムはこれまでの3作とは違う、彼女の新たな一面を見せる素晴らしい作品だったと思います。デビュー当初の彼女は、作風としてはクールさを前面に出したような印象でしたが、今作ではエモーショナルな表現やポップな曲調など、従来にないアプローチが目立ち、彼女の成長が垣間見れる仕上がりになっていました。

さて、そこからこの新作の発売に至るまでに約6年の歳月が流れました。ファンにしてみれば、だいぶ待たされたなあという感想です。実は、3年ぐらい前から新作リリースの話は流れており、シングルを何枚かリリースした他、アルバムのジャケ写も公開されていたのですが、シングルがヒットしなかった影響もあって、延期を繰り返していました。

さすがに1年以上延期を繰り返すと、このままリリースされずに流れてしまうのではという危惧も生まれるものですが、今年に入ってようやくリリースの運びとなったということで、これはよかったなと思います。

ということで、さっそくですが、この作品の内容に移っていくことにしましょう。

2014年2月20日木曜日

Toni Braxton & Babyface『Love Marriage & Divorce』(2014)

90年代のR&Bを席巻した二人によるデュエット・アルバムです。二人を知る人にとって、こういう形で新作が発表されるというのはうれしい驚き意外の何物でもないのだけど、それにしても、これはスゴイ組み合わせだなあと思います。

そもそも、男女のデュエット・アルバムなど今も昔もそう滅多に出るような代物ではなく、ぱっと思い浮かんだのといえばマーヴィン・ゲイの一連のデュエット盤ぐらいのもの(すごく古いですねw)。つい最近では、ノラ・ジョーンズとビリー・ジョーのコラボ作なんてありましたけど、ビッグネームの二人にも関わらずひっそりとリリースされ、あまり話題にもなりませんでした。

それだけ、こういう企画を実現させる、それをヒットさせるのは難しいということなのだと思います。余技的な要素がどうしても強くなりますからね。でも、このアルバム、どう考えても「お遊び」じゃないわけです。これは売れることを意識したアルバム。最近では裏方として大人しくしているように見えたベイビーフェイスが前に出て、内容もカバーではなくオリジナル、トニ・ブラクストンという大物とがっぷり四つに組んだのだから、これはタダ事ではありませんよ。

ここ最近の二人の動きを振り返っておきましょう。まず、今作で全曲のプロデュースを担当し、シンガーとしてあの甘い声を披露しているベイビーフェイスですが、シンガーとしては2007年に『Playlist』という作品を出して以来の新作ということになります。もちろん、ソングライター、プロデューサーとしての一面もある彼なだけに、最近でもアリシア・キーズやアリアナ・グランデ、アンソニー・ハミルトンなど若手からベテランまで、R&B中心に手堅く仕事をこなしています。ちなみに、御年54歳でございます。

一方のトニ・ブラクストンといえば、ここ最近で注目されたのは例のリアリティショー(『ブラクストン・ファミリー・バリュー』)でしょうか。音楽的には2010年にアトランティックに移籍して『Pulse』というアルバムをリリースしましたが、あまりヒットせず(内容はよかったけど)、それ以後は、SLE(全身性エリテマトーデス)に罹患していることを公表、疾患の影響もあって、目立った活躍をしていませんでした。そういえば、2012年に「I Heart You」という意表をつくダンサブルなシングルを発表しましたが、あれは何だったんでしょうね。あまりヒットしませんでしたが。一説では彼女の「ファイナル・アルバム」につながる曲だったみたい。いったい今後どうなるのか、個人的には気になるところです。

そう、トニブラといえば、引退宣言が話題を呼びました。昨年の2月頃のことですね(→こちらの記事を参照)。病気の影響などもあり、音楽活動に前向きになれなかったそうです。それに対し、待ったをかけた一人がベイビーフェイスでした。そこから話はなぜかデュエットアルバムの制作へと進み、こうして見事リリースまでこぎつけたというわけです。本当に何があるかわかりませんね。

そもそも、二人の音楽的な関係は、ベイビーフェイスの92年作「Give U My Heart」にまで遡ります。映画『Boomerang』に収録されたこの曲で、デュエットの相手を務めているのがトニというわけです。その翌年には、ベイビーフェイスは大ヒット作となる彼女のデビュー作でも手腕をふるい、彼女を一躍スターダムにまでのし上げることに成功します。彼女の初期の輝かしいヒットの多くをプロデュースしてきたベイビーフェイス、彼の存在なくしていまのトニは存在しないと言ってもいいでしょう。

そんな二人が20年以上の時を得て、こうして再演するというのは、この二人の歩みを考えると感慨深いものがあります。タイトルに表されているように、双方ともに結婚と離婚を経験したということもそうですが、円熟した二人だから表現できる世界というのがきっとあるのだと思います。

ということで、アルバムの中身に移っていきましょう。言うまでもなく。ベイビーフェイスが全面的にプロデュースしており、主役の二人に加えて旧知のダリル・シモンズやここ最近よくタッグを組むアントニオ・ディクソンらもソングライティングに加わっています。


2014年2月15日土曜日

Happy Valentine's Day: Music Gifts/バレンタインに音楽の届け物

もう一日過ぎちゃいましたけど、昨日はバレンタインでした。みなさまは、チョコレートあげたりもらったりしましたか?

日本ではバレンタインデーと言えば、国生さゆりのあの曲が不動のポジションをいまだに誇っていますね。それ以外にも曲はあるかもしれないけど、「シャラララ~」の必殺フレーズに勝る曲は今後もそう現れることはないでしょう。あの一曲で、バレンタインデーにおける音楽的需要をほぼ満たしてしまっているのだから恐ろしいものですw

そういえば洋楽でバレンタインソングってあまり思い浮かばないですね。まあ、日本でもそんなにあるわけではないけど、クリスマスほど音楽ネタとしては価値がないということかもしれません。

そんなバレンタインデーですが、アメリカR&B業界ではこの日に合わせて、複数のアーティストがギフト的に新曲を公開しています。せっかくなので、そんなサプライズとも言えるプレゼントをまとめて紹介しておきたいと思います。

2014年2月11日火曜日

Macklemore & Ryan Lewis『The Heist』(2012)

マックルモア&ライアン・ルイス。彼らの快進撃が止まりません。

先日行われた2014年グラミー賞においても、ベスト・ニュー・アーティスト、ベスト・ラップ・アルバム、ベスト・ラップ・ソング、ベスト・ラップ・パフォーマンス、ソング・オブ・ザ・イヤー、アルバム・オブ・ザ・イヤー、ベスト・ミュージック・ビデオの7部門でノミネートを受け、前者3部門で見事受賞しています。

特筆すべきは、ラップ4部門中で3部門を制覇したこと。ケンドリック・ラマーやジェイZ、ドレイクなど強力なライバルを押さえての受賞ということで、これは業界にとっても衝撃と言っていいほどだと思います。というのも、彼らがヒップホップのコアなファンから熱烈な支持を受けているかと言われると、決してそうとは言えそうにない、という複雑な事情があるからです。

たとえば、ケンドリック・ラマーはどうなのかというと、これは誰もが認めるヒップホップ界のニュー・ヒーローです。あのラップモンスター、エミネムの最新作においても唯一ラッパーとして参加を許されたのが彼だったわけですが、いまや彼の参加は作品に泊をつけるほどの存在になったと言えるでしょう。かつてほどクルーを意識しなくなったエミネムが、若手をフックアップするという必要もない状態で、いま敢えて彼を選んだのだから、それがどれだけ特別なことか想像に難くないと思います(まあ、実はアフターマスつながりではあるのですが)。

一般に、ラッパーが支持されているかどうかの指標として、「どれだけ他アーティストの作品に呼ばれるか」というのがあります。もちろん、エミネムみたいなアーティストの場合、逆に大物過ぎて易々と共演しない(下手に絡むと主役食いのおそれがある)ということもあるのですが、2チェインズやフューチャー、ラマーといったアーティストの「客演の多さ」を見ると、いまの業界のトレンドというのがどこにあるのかよくわかるというものです。

では、彼らはどうなのか。それが問題ですね。

結論から言うと、他アーティストとの共演というのは極めて少ない、ということになります。しかし、それはこれまでの話であって、これからは変わるかもしれません。

ただ、彼らがここまで突き抜けたのは、おそらくそういう王道的なブラックネスをまとったラッパー達とは一線を画したというか、別のところからのし上がったということが逆に大きいと思うんですよね。それは、ヒップホップ業界における「人種的問題」にも絡んでいるのですが、そういうラップを愛好するコアなファン層とは違うところから支持を得て行ったところが、彼らの斬新さと言えると思います。

改めて、いろいろなサイトで紹介されていますが、彼らのこれまでの道筋を簡単にまとめておきます。残念ながら、ここまでヒットしていて来日も決まっているのですが、いまだに国内盤は出ていない状態だったりするのでね(いや、このブログ読むような人って、そういうのにお金払わなry)。

まず、このユニット名のやる気のない感じがおもしろいですが、文字とおり、マックルモアさんとライアン・ルイスさんのユニットです。まず、マックルモアですが現在30歳、シアトル出身でルーツはアイルランド系とのこと。初めてラップを書いたのは14歳のとき、かつてはプロフェッサー・マックルモアを名乗り、2000年にはEPを制作、2005年にLP(『Open Your Eyes』)をインディペンデントでリリースしています。2006年頃にライアン・ルイスと出会い(最初はフォトグラファーとして)、そこから徐々に音楽的なコラボレーションを深め、2009年~2010年にはデュオとして2枚のEP(『The VS EP』『The VS Redux』)をリリースしています。その後、彼らはデュオとして制作を続け、2012年の10月にいよいよこのアルバムをリリース、いきなり全米2位の大ヒットを記録して一躍注目を集めることになります。

一方のライアン・ルイスは現在25歳、同じくシアトルの出身で、プロデューサー、DJであると同時にプロカメラマンとしてのキャリアもある多才な人です。ただ、年齢からもわかるように、それほど下積みがあるわけではなく、マックルモアと組んでいきなりブレイクしてしまったということだと思われます。

そんな二人がリリースしたこの『The Heist』ですが、なんとインディーズでのリリースです! すでにインディーズ作品が~とかいう時代ではないかもしれないけど(だって、グラミー受賞者の50%がインディーズって話があるぐらいなので)、まあ、アングラ止まりなアーティストも数多いるなかで、よくここまでブレイクで来たなあというのが本音でしょう。それだけ、楽曲が良かったということなのだと思いますが。

そして、そんな事情もあって、日本ではいまだに国内盤が販売されていませんね。今後も出るかどうかわからないけど、キャッチーな楽曲が多いから、日本でもプロモーションしたら十分に売れる可能性あると思いますよ、これ。やっぱり権利関係が難しかったりするのかあ?

ということで、前置きが長くなりましたが、本編のレビューに参りましょう。全曲ライアン・ルイスがプロデュースしています。

2014年1月29日水曜日

Rihanna『Unapologetic』(2012)

先日2014年グラミー賞の授賞式が行われ、このアルバムが見事「Best Urban Contemporary Album」を受賞しました。過去にシングルでの受賞はあるものの、アルバムでのグラミー受賞は初めてのこと。ビルボードチャートで初めて1位を獲得した作品でもあり、このアルバムの完成度の高さを伺わせる結果と言えそうです。

ということで、今回はリアーナのこのアルバムを取り上げたいと思います。

まず、グラミーでの件のカテゴリーについてですが、これは昨年から創設されたR&B分野のサブカテゴリーで、現代的な要素を含むR&B作品であり、その中にはアーバンポップ、ユーロポップ、ロック、オルタナティブといったプロダクション要素を取り入れたものであってよいとの規定があります。時代の流れに従って多様化するR&Bミュージックへグラミーが対応したということでしょうね。ちなみに、2012年までは「Best Contemporary R&B Album」というカテゴリーが存在しましたが、こちらの方は「Best R&B Albums」に吸収される形となっています。

さて、話をリアーナに戻しまして、2005年にデビューして以来、ほぼ1年に一枚のペースでアルバムをリリースし続け、今作で7枚目のアルバムになります。ここまでハイペースでリリースを続けるアーティストは全米では稀有な存在であり、それを可能にする彼女の勢いというのは破格であると言えるでしょう。さすがに去年は一旦小休止ということでアルバムをリリースしませんでしたが、アルバムからのシングル・カットにエミネムやワーレイとのコラボなどでチャートを賑わせ、相変わらずの存在感を提示しています。

そんな彼女ですが、ハイペースでのリリースを可能にする理由として、本人はあまりソングライティングに関与していないということが上げられるでしょう。いまやアイドルでも楽曲制作にかかわるのが当たり前の音楽業界ですが、そこで敢えてヴォーカリストに徹することで、制作のプロセスは簡略化されます。もちろんそのためには本人が納得できるような魅力的な楽曲の提供が必要なわけですが、これまでの作品を見ていても、幅広いプロデューサーと手を組んで、つねに最新のサウンドを取り入れた作品を制作していることがわかります。むしろ、そうして旬のトレンドヒッターと手を組めることが彼女の強みと言えるのではないでしょうか。

そうして快進撃を続ける彼女の通算7枚目のアルバムですが「Unapologetic=弁解しない」という強気なタイトルを付けてきました。ジャケ写は上半身裸のこれまた大胆かつシンプルなもの、前作もそうですが挑発的なアートワークにより、当初のアイドル的なスタンスから新たなステージへ向かおうとする意思が伺えます。

それでは、中身を見ていくことにしましょう。

2014年1月21日火曜日

Robin Thicke『Blurred Line』(2013)

年が明けると寂しいもので、話題作のリリースというのが途絶えてしまうのです。みんな年末に大作をぶつけてきますからね~。

ということで、フレッシュなブログネタがない! 仕方なく?去年買ったけどレビューできていないアルバムって何かなかったかな~、と思っていたのですが、そんなときにふとこのアルバムの存在に気づきました。

全米シングルチャートでついに年間1位に輝いたあの大ヒット曲を含むこのアルバム、なのにまだレビューしてなかったじゃありませんかw そりゃ、いけませんね。でも、そういえば、曲単位では何度も聞いたけどアルバムとしてはそんなにリピートしてなかったかもしれない・・・別に内容が悪かったわけではないのだけど、とにかく1曲目のインパクトがデカすぎてw

せっかくなので、今回はこのアルバムを取り上げたいと思います。

ロビン・シック、前作『Love After War』以外は手元に揃っているのだけど、不思議なことに、ジャケ写がどれもこれも垢抜けない人ですねw R.ケリーよりマシかもしれないけど、あまりそういうヴィジュアル面で勝負していない人なのかもしれません(元がイケメンだからか)。ブルー・アイド・ソウルという立ち位置が逆にそうさせているのかもしれませんが、とにかく今作のアートワークも、あのインパクト大のPVに比して平凡なのはなぜなのか、気になってしまいます。

それはさておき、彼の音楽活動を振り返ると、シンガーソングライターとして彼がすでに長いキャリアを誇っていることがわかります。最初にクレジットが確認できるのは、ソングライターとして、あのブランディのデビュー・アルバムに登場します。1994年、いまから20年も前ですよ。逆算すると彼は当時15~16歳ということになりますね。早熟です!

しかし、彼がそれからシンガーとしてブレイクするにはもう少し下積みが必要でした。8年後の2002年に『Cherry Tree Blues』(翌年『The Beautiful World』としてリイッシュー)というアルバムでようやくデビューしますが、これがさっぱりヒットせず。さらに時間が経ち、2005年にはネプチューンズが主宰するスター・トラックと契約。その後にリリースされた2006年の『The Evolotion of Robin Thicke』でいよいよそのチャンスをつかみました。これも、すぐにヒットしたわけではなく、2007年になってシングル「Lost Without U」がじわじわヒットしたことを受けてのブレイクでしたね。ちなみにこの曲、「こんな地味な曲が受けるのかー」という程に、静けさ漂うソウルナンバーなんですが。

それ以降、コンスタントにアルバムをリリースし、客演仕事も着実にこなしてきたわけですが、これまでは、表舞台で華々しく活躍するというよりも、どちらかというと通に愛されるような王道のソウルを地道に生み出す音楽家というイメージでした。

だからこそ、あの「Bluured Lines」のビッグヒットには、本人が一番驚いているのではないでしょうか。自作自演系なのにファレルのレーベルに在籍しているということが、逆に今回のチャンスの一因ではあったのですが、これまでのイメージとは違う「はっちゃけた」彼の姿というのもまた、新たなファン獲得の要因となったのではないかと思います。とにかくインパクトがすごかった!

そんな彼の通算6枚目となる本作をさっそく見ていきたいと思います。基本的には彼と相棒のPro-Jの共同プロデュースですが、何曲かで外部プロデューサーが参加しています。


2014年1月16日木曜日

Eminem『The Marshall Mathers LP2』(2013)

昨年一年を振り返って、やっぱり難しいなあと思うことがあって、それはヒップホップのアルバムについて語ること。確かに何枚か取り上げたけど、やっぱり歌モノの方が比較的書きやすいんですよね。だから、あんまり取り上げていない。

実際のところ、普段聴くアルバムとしてもR&B系の方が多いということもあって、購入はしていてもレビューするまではいかないというがのが実情かもしれません。まあ、書きたいと思わせる作品に出会えなかったというだけかもしれませんけどね。

ヒップホップ系への関心が個人的にはやや薄れつつあるのは一面としてはあるかもしれませんね。そういえば、せっかく期待して買ったのにほとんど聴いてないアルバムってのがあったりしますからね(汗)

ただ、作品自体の好き嫌いの問題はあるにしても、ヒップホップを取り上げるのが難しい理由っていうのは別にあって、要は前にもどこかで書いたけどラップって理解するのが大変なんですよ。いまじゃ、ネットで検索すればリリックの書き起こしなんてすぐに見つかったりするのだけど、それ読んだところで「これどういう意味?」みたいのたくさんあるわけです。

わからないなら対訳ついている国内盤買えばっていう話ではありますが、実際にライナーノーツってマジマジ読んだことないんですよね。どうにも、わからないなりに自分で訳した方がなんとなく納得できる、という困ったちゃんでして(だってあの手の対訳ってさあ・・・)。

もちろん、一つのやり方としては音楽的な側面だけ取り上げたら済むのだけど、なんかそれだと、なんでラップ聴いてんの?って話ではあるのでね。書くにしてもどこまで踏み込むのかというのは、悩ましい問題だったりします。

さて、閑話休題。エミネムですよ。

もちろん、期待に胸膨らまして、この13年ぶりの続編を手にしたわけです。が、アルバムのブックレットを見て仰け反りました。珍しくリリックが全て掲載されているのだけど、あまりにも文字の量が多すぎて! この圧倒的なラップこそがエミネムそのものなのではあるけど、これを全て解読せよと言われたら泣きそうになります。

ただですね、まあそれだけ語り甲斐のあるアルバムではあると思うのです。当然のごとくヒットしてますし、スルーするのもあれなので、今回はこの大作に挑もうと思います。


2014年1月6日月曜日

大野愛果『Silent Passage』(2013年)

みなさま、明けましておめでとうございます!

本年もマイペースにレヴューをしていきたいと思います。毎度毎度あまり大したこと書いてませんけど、みなさんとこれからも音楽への関心の輪を広げていけたらと考えています。

さて、新年一発目はJ-POPですよ! 以前、浜崎あゆみについて何か書いたことあるけど、こうしてアルバムを取り上げるのは初めてですね。たまには日本の音楽も取り上げよう! ということで、この作品を取り上げてみました。

なんていうか、久しぶりに3000円のアルバム買いましたw 洋楽CDってもっと安い値段で売ってるから、たまにこうした国内の作品を買うと、その高さに驚いてしまいますね。ビンボー人には手を出せないシロモノだわと思ってしまいます(汗)

それはさておき、なぜこのアルバムを買おうと思ったかというと、実はわたし昔からZARDの大ファンなんですね。こんなブラックミュージックのサイトやっといて何ですけど、そういう音楽に触れる前に、ZARDを始めとするビーイングの諸作品との出会いというのがあったわけです(まあ、わたしも昔は世の中のヒット曲を聴いて育ったフツーの青年だったわけです。時はミリオンセラー連発の90年代だし。いつからヲキャマ化したのかしらw)。わたしにとってZARDは言ってみれば青春そのものですよ。だから、いまでもコテコテのヒップホップに食傷気味になった時とかに、ふと清涼剤のように昔のアルバムを再生したりするわけです。それは一種のノスタルジーかもしれないけど、いわば心の支えみたいなもんだったりするのです。

そして、そんなZARDの後期(って書き方がとても切ないのですけど)に、数々のヒット曲を提供したのが、今回登場する大野愛果さんです。今作にはそのZARD提供曲のセルフカバーが収録されています。これはとても貴重ですよ。だって、あれだけポピュラリティーのある歌手であるにかかわらず、ZARDのカバーって世の中にほとんど存在しないんですから(オフィシャルなやつでね。非公式にはたくさんあると思います)。

その理由はいろいろ考えられますが、個人的に思うのは、坂井さんがああして悲し過ぎる最期を迎えてしまったということ、彼女のイメージがあれだけミステリアスな存在であったにも関わらず強固であるということ(ZARDのブランド力ですよね)、そしてビーイングがそのイメージを守るために身内以外に使用を許可していないこと、なのかなあと。内在的にも外在的にもカバーしづらいということですね。

ということで、今作はZARDファンにとってもスルーすることができない作品だと思います。

さて、話を大野愛果さんの方に戻しましょう。彼女はビーイング専属の作曲家として、これまでに数々のヒット曲を世に送り出してきました。職業作曲家、しかも女性であるということで、日本の音楽業界においても貴重な存在だと思います。そんな彼女も、作家活動を開始してから15周年という時間が過ぎたそうです(おめでとうございます)。今作はそんな彼女のこれまで辿ってきた「静かな道程」を照らす、セルフカバー集になっています。

彼女の出世作といえば、倉木麻衣さんのデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」が有名でしょうが、彼女が職業作家としてデビューしたのはその1年前。それがWANDS「明日もし君が壊れても」でした。実は、この曲の作詞は坂井泉水さん(後にZARDとしてセルフカバーしています)で、デビューの時からいわば「黄金タッグ」だったんですよね。彼女の原点に坂井泉水という存在がいた。だからこそ、彼女もZARDには特別な思いがあるのだろうと思われます(インタビューではそのことにあまり触れていませんが)。

その大野さんですが、過去に『Shadows of Dreams』『Secret Garden』(ともに2002年)というアルバムをリリースしています。両者ともに他アーティストに提供した楽曲のセルフカバーなのですが、この時は全編英語詞で歌われています。デモテープは英語で歌われることが多いとのことで、その雰囲気を再現しようとするための工夫だとのこと。彼女自体もミステリアスな存在だったので、そのイメージを守るためにそうした方法をとったとも言えそうですね。

作曲家ということもあって、彼女の歌手としての活動は多くありませんが、多くの作品にコーラスとして参加しています。また、ZARDの追悼ライブなどにもコーラスとして参加しており、人前に出る貴重な機会となっています。youtubeではライヴハウスで行われた彼女の貴重なパフォーマンスも公開されていますので、興味があればチェックしてみてください(→たとえばコレとか。意外としっかり歌える人です)。

さあ、そんな大野愛果さんの3枚目とアルバムが今作になります。なんと11年ぶりのリリース。そして、今回ははじめて原曲のまま日本語詞で歌っています。いったいどんな仕上がりなっているのか、さっそく中身にうつっていきましょう。