2014年4月29日火曜日

Kelis『Fleshtone』(2010)

R&Bシンガーのケリスが先日ニューアルバムをリリースしました。そこでさっそくそのアルバムを取り上げようかと思ったのですが、その前にこの前作について先に紹介しようと思います。

このアルバム、ケリスらしいと言えばそうと言えるし、「あららどうしちゃったの?」と言えるような、彼女のキャリアからしたら特異なアルバムだったりします。自分の中では「あれって何だったの」感なきにしろあらずで、新作が出たいまだからこそ語れるのかなあという気もします。

ケリスといえば、1999年にネプチューンズの全面バックアップを受けて登場したシンガーで、その強烈のデビューシングルも印象的でした。「あんたなんか大嫌いよ」ってシャウトする例のアレですね。ビジュアルもショッキングピンクなアフロ
ヘアというR&Bでは珍しい出で立ちでした。

彼女はネプ(しかも90年代後半の尖った時代)とのタッグからも想像できる通り、どちらかといえば、王道を行くというよりも、よりエッジーでアーバンなテイストを売りとするアーティストというイメージがあります。その流れからすると、この5作目において、彼女が時代の流れであるEDM路線に大きくシフトしてもおかしくはないように思えます。そして、このアルバム、ウィル・アイ・アムのレーベルからのリリースということ(彼はその前の『Kelis Was Here』にも参加しています)で、EDM化した彼に合わせたように、彼女も新たな一歩を踏み出したわけです。

ケリスといえば、なんといってもそのハスキーなヴォーカルが特徴的なだけに、その声とダンストラックの相性がどれほどのものなのか、気になるところではありますが、さっそくアルバムの中身を見て行きたいと思います。全9曲+ボートラ一曲の極めてコンパクトな仕様になっています。


(1)Intro
イントロだけど、3分半あります。バーンズさんがプロデュースしているのだけど、いったいどんな人かよく知りませんw 聞こえてくる音像は、確かにこれまでとは違い、シンセの音が派手に鳴り響いているのですが、歌声はケリスそのものですね。違和感はまったくないです。おお、なるほど、って思わせるサウンドです(って形容になってませんが)

(2)22nd Century
さっそくエンジン全開・・・かと思いきや、同じようなフレーズを反復しながら徐々に展開していくといういかにもクラブサウンドな流れで、ケリスの歌声はささやくようで地味な感じです。クールな曲ですね。

(3)4th of July (Fireworks)
セカンドシングル。DJ Ammoがプロデュース、サウンド同様にケリスのハスキーな低音と高音のメリハリが利いた、陽性なEDM。

(4)Home
ここでまたテンポアップして、ノリノリな展開になります。EDMっていうか、80年代的なダンステクノサウンドって感じでしょうかね。

(5)Acapella
ファーストシングルとしてリリースされ、UKではトップ5まで上昇、スマッシュヒットを記録しています。おなじみデヴィッド・ゲッタがプロデュースを担当し、ケリスの気怠いヴォーカルがアップビートと妙にマッチして、これは新機軸と呼ぶにふさわしい一曲だったのではないかと思います。

(6)Scream
サード・シングル、こちらもゲッタさんがプロデュース。楽曲の構造というか展開としては、どうしても同じような感じにはなってしまうのですが、ノリノリな展開で押し切ってしまうような、そんな勢いも感じさせます。

(7)Emancipate
ベナッシ兄弟によるプロデュースで、少し曲調が変わったかなという感じです。フックで繰り返される"Emancipate Yourself"の呪詛的な響きがクセになりそうです。

(8)Brave
こちらもベナッシ兄弟の手による曲なのですが、個々に来てようやくクレジットにウィル・アイ・アムの名前を確認することができます。4枚目のシングルとしてカットされています。

(9)Song for the Baby
あら、もう最後なの?というラスト。(4)と同じフリー・スクールというプロデューサーによる楽曲で、かもなく不可もなくなエレクトリックダンスナンバーですね。


全体を通して、EDMです(爆)

いや、もう、そうとしか言いようがないほどに、全てエレクトリック・ダンス・サウンドなわけです。R&BのEDM化みたいなクロスオーバー現象も一般化しつつある業界ではありますが、そういうのとも違って、ガチで彼女はやっているわけです。だから、もうこのジャンルに興味がない人にはおもしろくないアルバムであるのは間違いないと思います。

ということで、彼女の本気度が伝わってくる意欲的な作品である一方、これまでの彼女のファンにしてみたら、「今回はちょっと」と思われても仕方ない作風でもあります。評価はわかれるんじゃないでしょうかね。

かくいうわたしは、こういうの聞きたい気分のときにはいいかなと思いつつ、ケリスのハスキーなヴォーカルってどう転んでもポップな感触にならないから、それほどリピートしようとも思えず・・・なアルバムだったりします。コンパクトにまとめているのは好印象ではあるんですが。

この挑戦的なアルバムの後で、彼女の次の展開はどうなったのか・・・次回は彼女の最新作を紹介したいと思います。




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