2014年6月14日土曜日

Kelly Price『Sing Pray Love, Vol.1: Sing』(2014)

すでにベテランと言っていい経歴をほこるR&B/ゴスペルシンガー、ケリー・プライスの通算7作目となるニュー・アルバムがリリースされました。いまはなきデフ・ソウルからデビューしたのは98年なので、もう15年以上の時が流れたことになりますね。実力派のシンガーだけに、こうしてコンスタントに作品を発表してくれるのは、R&Bファンとしてはうれしい限りです。

さて、2011年にリリースした前作の『Kelly』は、セールスこそあまり振るわなかったものの、4つのグラミー賞ノミネーションを受けるなど、業界内での評価は非常に高いものでした。かく言うわたしも、ゴスペルを経由してのR&B作ということで、いっそうパワフルになった彼女の歌声に元気をもらった一人なのですが、時流に流されることなく、王道のR&B作品に仕上がっていたのがとにかくよかったなと思いました。

そんな彼女ですが、芸能的な話題では、リアリティショーへの出演というトピックもありました。2013年に始まった『R&B DIva: Los Angels』という番組ですね。詳細は不明ですが、なかなかの嫌な女っぷりがこの番組では露呈されたみたいで、彼女に対する見方が良くも悪くも変わったという評価があるみたいです。話題作りにはなったかもしれませんが、音楽活動に影響がなければいいですよね・・・まあ、新作がこうして出たのだからあまり気にする必要はないかもしれません。

そのケリー・プライスの最新作ですが、今回はeOneからのリリース。過去にも共作しているシェップ・クロフォードが全面プロデュースということで、今回もきっとR&Bの王道ともいえる作品に違いない、と期待してしまいますね。

ということで、さっそくレビューにうつっていきましょう。


(1)Sing Pray Love Interlude
2分ほどのイントロ。ケリーの語りから始まり、いきなりのゴスペル歌唱。彼女にとって喉鳴らしといったところかもしれませんが、伸びやかな彼女のヴォーカルにのっけから圧倒されます。

(2)It's My Time
アルバムからのリードシングル。アップテンポなナンバーで、シンセサイザーの使い方などいまの時代を意識しつつも、ポップ過ぎることなく、うまくまとめた感じ。歌詞は彼女らしい人生の応援ソングのような趣きで、2番では例のリアリティ・ショーに絡めたようなフレーズ(「信じないで みんなが言ってることなんて 捻じ曲げようとしてるのよ たくさんのフィクションや醜聞を織り交ぜて」)も出てきますね。

(3)Back To Love feat. Ruben Studdard
アメリカン・アイドル2代目ウィナーのルーベン・スタッダードとのデュエット。こちらもアップテンポな曲調だけどそれほど派手さはなく、あくまでヴォーカルが主体のトラックになっていますね。ルーベンとケリーがコーラスとメインと交互に役割を替えながらも、一曲を通じてずっと絡み続けるのがいいですね。

(4)The 14th
ミディアムテンポの楽曲で、彼女の力強い歌唱は継続。マイナー調でちょっとシリアスな楽曲なんだけど、こういうタイプの曲は彼女の真骨頂のような気がしてしまいます。それにしても、タイトルの「The 14th」って何を指しているんでしょうね。

(5)Think Again (Shep's Sermon)
ミディアムテンポの地味目な一曲。コーラスワークは低音域で渋い感じなんだけど、後半にかけて彼女らしいフェイクを交えた歌唱でまたもや弾けていきます。

(6)Last Night
ピアノとストリングス、ヴォーカルが主体の静かな楽曲。リズムパートはごくわずかで、これまたシリアスな展開。低音域でもしっかりと響く彼女の声に驚愕だけど、後半に向けて力強いコーラスワークとともに歌もヒートアップしてくるというのは、もうお決まりの流れですねw

(7)Through The Fire
言わずと知れたチャカ・カーンの名曲カバー。なぜこの曲を取り上げたのかはわからないのだけど、さすがの歌唱力だけあって、彼女らしいドラマティックなバラードに仕上がっています。アレンジはもう少し冒険してもよかったかもしれないけど、後半にかけての熱唱とコーラスワークはさすがとしか言いようがありません。

(8)Neva Been Scared
前曲からつながるようにして始まるアップテンポなナンバー。フックでヴォーカルにフィルターをかけるなどの試みがあり、アルバムの中では挑戦的な一曲かなという気がします。

(9)Conversations with HER feat. Algebra Blessett 
最近アルバムをリリースして復活をとげたアルジェブラとの濃厚デュエット。ストーリー仕立ての歌詞で、ケリーの「Friend of Mine」(親友と旦那が関係を持っていたという寝取られソングの代表格)の続編を想起させる内容。

(10)Our Love
こちらもベースラインが印象的なアップテンポ曲。良くも悪くもなくみたいな、アルバムの流れの中にある一曲ですね。

(11)Metamorphosis
ラストは、再度ケリーの語りから。トラックは意外にもジャジーなテイストの一曲。歌の方もゴスペル歌唱とジャジーな要素を織り交ぜた感じで、夜のおしゃれな雰囲気が漂う中でアルバムの幕を閉じるという小粋な演出になっていますね。


全11曲収録。ゴスペルの雰囲気を多分に漂わせつつ、ケリーならではの歌唱が今回も全面的に押し出された作品になっていると思いました。ここまで歌えるシンガーってそういないから、やっぱり聞いていて気持ちいいですね。

タイトルが示唆するところでは、続編となるボリューム2、3も出そうとしているみたいですね。そちらがどんな仕上がりになるのかも楽しみではありますが、彼女の歌声をこれからも聞けることを期待しつつ、いまはこの最新作を堪能したいと思います。



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