2016年5月23日月曜日

Ariana Grande『Dangerous Woman』(2016)

しばらく遠ざかっていましたが、久しぶりにブログを書いてみることにしました。レビューしてみることにしました。

正直、いまの音楽業界の流れというか、何がいい音楽なのかそうでないかというのが、もうよくわからなくなっている自分がいます。一応、新作と呼ばれるものをチェックしたりはしますが、なかなか興味が持てないというか、ちょっと時間を置いたりしないとなじまなかったりということが当たり前のように起きています。歳をとったなあと感じます。

たとえば、ビヨンセの新作。レビューしようかとも思いましたが(2500円もしたし)、あることでわたしは躓きました。ビジュアルアルバムということで1時間の映像がセットなのですが、はっきり言うと通して観るのがツライ。いまだに最後まで行けてません。アルバム自体は聞きましたけどね。でも、あれ観ないとさすがにレビューできないでしょう。それに、歌詞や映像に込められた意味とか、ちょっと読み解く体力がない。

ドレイクの新作も購入してみました。尺が長すぎるw 物量といえばスヌープやエミネムも毎回すごいけど(というか、ひと昔のヒップホップ作品ってやたら詰め込む傾向あったよね)、ちょっとセールスダウンした『Nothing Was the Same』が1時間弱のコンパクト作だったことを反省したのか、大量に曲を入れ込んで来て、驚きでした。ファンはうれしいのかもしれず、確かに粒ぞろいの楽曲群だということもわかるけど、正直これには浸れないかなあと。

ということで、じゃあ何を聞いてレビューすればいい?と考えていたときに現れたアリアナちゃんの新作! 過去2作レビューしてるし、アルバム自体コンパクトじゃありませんか。難しいことは考えなくてよさそうだw よし何か書いてみようというわけですな。

とは言いつつ、彼女もまた難しい選択に迫られているのではないか、とそんな気がします。というのも、結局、アリアナ・グランデの魅力というか、これが売りだよみたいなのって、歌がうまいのとキュートなの以外にあまり思い浮かばないのですよね。まあ、その二つで十分という話もありますが、どういう音楽キャリアを築き上げればよいのかについて、きっとまだ方向性が定まらないというか試行錯誤の状態が続いているのではないかと勝手に推測しています。

そういえば、「Focus」というシングルがありました。ニュー・アルバムからのリード・トラックという触れ込みで、そこそこチャートヒットもしましたが、結局、正規のトラックリストからは漏れてしまいました(国内盤はボートラで聞けます)。それに、アルバムのタイトルも当初『Moonlight』という当たり障りのないものだったのが、気づけば『Dangerous Woman』へと変更。公表されたジャケ写もウサ耳コスプレの怪しいものへ。明らかに路線変更というか、より攻めた内容へ行こうとしているのがよくわかります。リード・トラックの反響がイマイチだったことから、売り出し方を再度検討したのかもしれません。 

ということで、日本でのプロモーションも盛んなアリアナちゃん(実は気がかりな動きだったりしますが)、渾身の3枚目がリリースされました。たぶん、過去作ほど売れないと思うけど、チェックしておく意味は十分にあるでしょう。

さっそく、行ってみたいと思います。

(1)Moonlight
当初のアルバムタイトルだったオープニング。オルゴールの音に合わせて静かな歌い出し。リズム系も抑えられ、メルヘンチックなサウンドに仕上がっています。デビュー作で感じられた甘酸っぱいサウンドが原点回帰に思えますが、いかにも優等生的な気もします。プロデュースしたのは過去2作にも参加しているTB Hitsことトミー・ブラウン。よくわかっていますね。

(2)Dangerous Woman
ここからが新機軸ということでしょうか。今作の総指揮を務めているマックス・マーティンらのプロデュースで、気怠くダウナーなロックバラード調の曲。キャッチーさはあまりなく、これトップ10入りさせたのってすごいと思うんだけど、何回も聞いているとスルメ的になるやつかもしれないです。歌詞も「オトナのオンナ」を意識したものに。

(3)Be Alright
トミー・ブラウンらが関与、ハウスっぽい曲調で、音数はミニマルに抑えられ、アリアナの歌唱も張り上げ系ではなく力を抜いて鼻歌を歌っているような軽さ。ダンスサウンドかといわれると微妙な路線で、ローテンションな楽曲が続く序盤であります。

(4)Into You
アルバムからのセカンド・シングル。マックス・マーティンとイルヤ・サールマンザーデ(Ilya)のプロデュース。これまたEDMと言い切れるほどに派手じゃない、無難といえば無難なダンスポップに仕上がっていますが、それなりに盛り上がる曲だとは思います。でも、ちょっと地味かもね。

(5)Side to Side feat. Nicki Minaj
過去にも共演のあるニッキー・ミナージュを起用、ビヨンセ「Hold Up」やドレイク「One Dance」など、ここ最近のレゲエ再興のトレンドに共鳴するように、レゲエ調のサウンドに挑戦しています。とは言っても、歌いまわしはまったくレゲエっぽくないんだけどね。でも、意外といいです。あと、このサウンドにミナージュさん担ぎ出すのはさすが。シングル化したら意外とヒットするかもね。

(6)Let Me Love You feat. Lil Wayne
リル・ウェインを起用、プロモシングル扱いでしょうか、PVも作られていますが、これまた地味でダークなR&Bといった趣。(2)と同じで、オトナのアリアナアピールが濃厚な一曲になっています。トミー一派のプロデュース。

(7)Greedy
80年代のディスコ調なファンキーなナンバー。のっけからテンション高く歌い上げるアリアナ。ようやく彼女らしいポップでノリノリなサウンドの登場という感じがします。それにしても、マックス・マーティン一派の手を変え品を変えのサウンドが今作は冴えていますね。

(8)Leave Me Lonely feat. Macy Gray
まさかのメイシー・グレイとの共演。のっけから、おどろおどろしいしゃがれた低音で登場、オンナの怨念感満載の3拍子系バラードになっています。アリアナの高音との対称性がおもしろいナンバーかと思います。

(9)Everyday feat. Future
これもミディアムテンポの楽曲で、フューチャーの起用の仕方は完全に想定範囲内でおもしろくはないけど、サウンド的には一番いまっぽいかも。正直、こればっかりされたらうんざりって感じもあるんだけど。

(10)Sometimes
アコースティックギターのサウンドとともに、さわやかな曲調に仕上がっています。なんとなくアルバム終盤の感じがあり、まったりとしてますが、これで終わっちゃうのかよっていう気もする展開ではあります。

(11)I Don't Care
というわけで、スタンダード版のラストです。フィンガースナッピンな静かなサウンド。一曲目と対になるような、ドリーミンな締めくくりです。


全11曲収録。もっと聞きたい人はデラックスに手を伸ばしてください。あと5曲聞けます。そして、結構はじけた曲が多いです。つまり、今作が何を優先して楽曲を収録したかがよくわかる裏版的なものとして機能していると言えます。

全体の印象としては、やっぱりちょっと地味かな。イメージ的にすでにマライア・フォロワー的なものはすでに払拭されているようには思うのだけど、じゃあアリアナらしさって何っていう話になると、今作の路線が答えとはどうしても思えず、何か物足りなさを感じてしまいました。歌とかコーラスワークの安定感はさすがなんだけどね。




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