2013年1月24日木曜日

Ne-Yo『R.E.D.』(2012)

ニーヨの5枚目のアルバムを中古CDでゲット! なんとデラックス輸入盤が早くも500円で売ってました・・・値崩れしすぎでしょ、さすがに。うれしいような悲しいような、ちょっと複雑な心境ではあります。

このアルバム、昨年の11月にリリースされ、全米チャート最高4位を記録しています。モータウン移籍後初リリースということで、それなりに気合を入れて作ったとは思いますが、初週のセールスが46000枚とかなりの苦戦。コケたといわれる前作よりも半分以下の売り上げしかなく、しかもその後のチャートアクションも悪い。すぐにトップ10圏外に落ちてしまいました。

それにしても、アメリカの音楽業界というのはとても厳しい世界で、ニーヨのようにソングライターとしてもシンガーとしても一定の地位を確立したかに見えるアーティストですら、これだけのセールス不振に見舞われているわけです。これじゃ、アルバムのリリースを何年も待たされるアーティストが何人もいても不思議ではないですよね。ヒットし続けることがいかに難しいのか、ということを思い知らされますよね。

ただ、R&Bに関して言うと、ミックステープだろうがインディーだろうが、素晴らしい内容の作品は毎年のようにたくさんリリースされているわけで、決してジャンルとして凋落しているとは言えないと思うんですよね。セールスにかかわらず、いい内容であるのなら、それが正当に評価されるべきだと思います。

ということで、内容にうつりましょう。今作もニーヨらしい素晴らしいメロディーの楽曲がたくさん収録されていますよ。何曲かピックアップして、コメントしておきます。


(1)Cracks in Mr. Perfect
シア・テイラーがプロデュース、レトロソウルっぽい音作りで、ストーリーテラーとしてのニーヨ節が冒頭から飛び出す味わい深いナンバー。

(2)Lazy Love
同じくシア・テイラー制作。アルバムからのリードシングル。力強いドラムビートを主軸にしたスロウR&Bで、少し気だるく官能的な要素も秘めた一曲。PVもエロいですw


(3)Let Me Love You (Until You Learn To Love Yourself)
おなじみスターゲイトがプロデュースしたセカンドシングル。ビート的には控えめな感がするけど、シンセサイザーがこだまするエレクトロ系ダンス・ポップ。最初聴いた時「ああ、またこっち路線で来たのね」とちょっとシラけたのだけど、しっかりトップ10ヒットしてるわけで、まだまだこっちに需要があるんだなあと思ったりしました。


(4)Miss Right
同じくスターゲイト制作の正統派R&B。こちらは安定感のあるニーヨらしい美メロナンバー。インパクトはあまりないけど、こういう曲は聴いていると心地がいいですね。

(6)Don't Make Em Like You feat. Wiz Khalifa
ウィズ・カリファが客演した3rdシングル。ヒップホップ的な要素も感じられるアップテンポなナンバーで、ウィズのゆるいラップもうまくハマってます。

(9)She Is feat. Tim McGrow
カントリースターのティム・マクグロウとの共演。アコギ主体のさわやかな一曲。少し変化球で攻めてきたって感じですが・・・ちょっとダルいかなあ。

(11)Forever Now
ここで再びEDMを投入。スターゲイト制作の(3)と同路線のダンスナンバー。ただ、ここで思うのはさすがにスターゲイトと言うべきか、そこまでド派手な作りじゃないってことですね。確かに後半にかけシンセサイザーがきらびやかではあるのですが、下世話な感じになってないのがいいと思います(デラックス収録のカルヴァン・ハリス曲と比較すると違いがわかるかも)。(12)Shut Me Downもダメ押しのEDMを展開してます。


通常版は全13曲収録。デラックスには4曲追加されていて、カルヴァン・ハリスとのアレとか、サラーム・レミのツボを押さえたプロダクションとか、こちらも注目曲があるのですが、ここではスルーしておきます。

このアルバムを聞いて、そして去年1年のR&B業界を振り返って思うのは、やはりEDMとR&Bの共存というのはうまくいかないのではないかということ。このアルバムにそれらしい曲は3曲ほどしか入っていないのだけど、だからこそかえって浮いてしまうという部分があって、EDMが好きな人はそれしか聴かないし、R&Bが好きな人は敬遠してしまう、というような感じで、リスナーを統合するのではなくむしろ分断する方向に働いてしまうのではないかと思うんですよね。ポップスとR&Bどっちのリスナーにも、という意図は結果的にどっちのリスナーにも届いていないのではないかと。

そう思うと、ある意味硬直した世界ではあるなという感じがするのですけどね。ただ、ファンとしては深いものを求めているという部分はあると思うんです。そのニーズにどう応えていけるのか。そこがニーヨのような職人的なR&Bスターには求められているのではないかと。

今作は決して悪くないんだけど、そういうブレた感じが物足りなさにつながり、セールス不振につながったのかもしれませんね。



0 件のコメント:

コメントを投稿