2013年11月18日月曜日

Katy Perry『Prism』(2013)

ケイティー・ペリーの4枚目のアルバムです。

絶好調ですね。売れてます(余裕の全米1位!)。前作『Teenage Dream』からシングル・カットした曲が軒並みヒットチャートの上位に食い込み、ポップディーヴァとしての地位を確固たるものにしたと思えば、そこから大きくブランクを開けることなく、新作のリリース。そして、先行シングル「Roar」をいきなりチャートトップに送り込むなど、快進撃は止まりそうにありません。

そんなペリーちゃんですが、彼女のことをそこまで知らないという人のために、ここで簡単に来歴をまとめておくことにしましょう。

まず、現在29歳です。シンガーソングライターであり、楽曲のほとんどにライターとしてクレジットされています。少し調べればわかることですが、彼女がデビューしたのは2001年(17歳の時ですね)、内容はポップスではなく、ゴスペル~クリスチャン・ロックでした(当時は「ケイティー・ハドソン」名義)。若いころはゴスペル音楽しか聞かせてもらえなかったようですね。残念ながらアルバムはヒットはしなかったのですが、10代のことから音楽を志していたことがわかります。

本格的なブレイクは、それから7年後の2008年まで待つことになります。そう、あの「I Kissed A Girl」のヒットです。このあっけらかんと「女の子とキスしたの。だって気持ちいいんだもん」と歌われるクイアな曲のインパクトは、アメリカのPTAで議論になる程でした(教育上よくないだとか・・・え?)。

そんな過激な曲を歌う彼女だけに、きっと次のアルバムも過激なものになるだろうと予想していたのですが、その次に出た『Teenage Dream』は、なんともアメリカ~ンな王道なポップ路線でした。ここら辺のことは機を改めて書けたらと思っています。

さて、そんな彼女の待望の新作ですが、さっそく中身を見ていくことにしましょう。アルバムの半数がドクター・ルーク、マックス・マーティン、サーカットのチームによるプロデュースで、前者二人はアルバムのエグゼクティブ・プロデュースも務めています。


(1)Roar
全米1位の大ヒット曲からスタート。一聴してこれはヒットするだろうなと思いました。ずっしりしたビートに小気味良い弾けるピアノ、そして語呂のよい前向きな歌詞、フックにかけての盛り上がり方など、ヒットするだろう要素がこれでもかと盛り込まれた、パワーポップです。映像ではリリック・ビデオがまず公開されたのですが、これがSNSでのメッセージのやりとり風で秀逸だと思いました。一方の公式の方は、ジャングルの女王ですかね・・・動物愛護団体からクレームがついたそうですw 

(2)Legendary Lover
2曲目もヒットポテンシャルの高いポップナンバー。彼女らしいちょっと抜けた歌いまわしやフック前の畳み掛けるようなメロディー、ブレイクに使用されるシタールやタブラの音など、聞きどころが多いですね。

(3)Birthday
プリンス風味?なファンク調のごきげんなナンバー。囁くようなヴォーカルとファルセットを重ねた二重歌唱でセクシーな雰囲気を醸し出したかと思えば、フックではのびやかな歌声を披露。これもヒットしそうだなあ。

(4)Walking On Air
オリエンタル風味の"Walking On Air"というサンプリングっぽいフレーズから始まり、さわやかなダンスナンバーへと展開。いまどきのEDMではなく、もっとベタなハウスっぽい雰囲気で、後半にはゴスペルのコーラスも追加され、とにかくいろいろな要素を盛り込んだ壮大な一曲ですね。

(5)Unconditionally
セカンド・シングル。サウンド的にはここで少し落ち着くのですが、「無条件の愛」をペリーちゃんらしい伸びやかでエモーショナルな声で歌い上げていますね。目下発表されているリリック・ビデオも注目で、この映像におけるジェンダー撹乱的な表現は、彼女のクイア的な要素を表しているのかもしれませんね(作成者がそのイメージを利用したということなのでしょうが)。

(6)Dark Horse feat. Juicy J
本作中唯一のゲストがジューシーJってw スヌープおじさんとの共演にもびっくらこいたけど、なんとも刺激的な人選ですね。しかも、今度は曲調もトラップ系のヒップホップ風。さすがにラップはしなかったけど、彼女にしてはストリートっぽい楽曲。トレンドを押さえていてさすがですね。

(7)This Is How We Do
バキバキのシンセやピコピコ系の音を効果的に用いた、軽快なポップナンバー。"Japanese-y""Mariah Carey-oke"など、ことば遊びも印象的。タイトルはどう解釈すればいいのか迷うのだけど、「これがわたしたちのやり方よ」と、パーティー大好きなライフスタイルを肯定する歌詞、と言えそうです(違ったらごめんね)。

(8)International Smile
こちらも軽快なポップナンバー。誰もが憧れる女性アーティストをモチーフにした歌詞で、"'Cause she's a little bit of Yoko. And she's a little bit of , "Oh no"といったフレーズも登場します(オノ・ヨーコみたいにステキ、と言いたいのでしょうね)。ちなみに、ブックレットの方には「FOR MY MUSE, MIA MORETTI」と記載されているので、彼女のリミックスなどを手がけるDJミア・モレッティに捧げた歌ということなのだと思います。

(9)Ghost
ややダウンテンポした曲調で、亡くなってしまった恋人のことを歌っています。曲調はそこまで悲しい感じがしないんだけど、詩の内容は重たいですね。

(10)Love Me
9曲目まではすべてマックス・マーティンが関与していたのですが、ここに来て、彼のプロデュースから外れ、この曲ではマドンナなどの作品でお馴染みのブラッドシャイがトラックを制作しています。派手な仕掛けるような音色はないのですが、疾走感のあるビートで、流れ的にいいアクセントになっていますね。

(11)This Moment
スターゲイトのプロデュース。壮大なミディアム・テンポの楽曲になっています。何となくエンディングが近づいているなあと感じさせるような、そんな曲調ですね。

(12)Double Rainbow
グレッグ・カースティンがプロデュース、シアがソングライティングに参加した一曲。タイトルから勝手にクイアな内容を想像してしまうのだけど、これは見つけるのが難しいダブル・レインボーを、恋愛における「めぐり逢い」の難しさ(であるがゆえの見つけてしまったときの運命感)と重ねた表現ですね。

(13)By The Grace of God
最後はピアノ主体のしっとりしたバラード。歌詞の内容は、「27歳の頃・・・」というフレーズから始まるように、彼女自身の心情が率直に表現されたような内容。結婚~離婚を経験したことがもっとも色濃く反映された歌のように思えます。


全13曲収録(デラックスは3曲追加)。

一聴して、ヒットポテンシャルの高い曲のオンパレードで、この先、このアルバムからどれぐらいヒット曲が量産されるのだろう、と想像すると恐ろしくなりますね。

全体として、サウンド的には過去作に見られたポップ・ロック色が後退して、よりダンサブルなポップスが志向されているなという感じがしました。とにかく聴きやすいです。そして、一つの楽曲の中にいろいろな要素が交じり合っているのだけど、あくまでポップスというフィールドにこだわっている印象で、これぞアメリカン・ポップスの王道だなあと思いました。

マイリーちゃんみたいに屈折することなく、こういうどストレートなポップスを制作できるのも、彼女が前作でヒット量産し、スターとしての地位を確立したからとも言えそうです。

ただ、いまのアメリカの音楽業界を見渡すと、こういうベタなことをしてヒットを飛ばせるアーティストも少ないわけで、これはこれで貴重な存在だなあと、思います。



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