2013年11月9日土曜日

Miley Cyrus『Bangerz』(2013)

久しぶりにポップスを取り上げる気がするけど、マイリー・サイラスちゃんです。もうすぐ21歳になります。え、まだそんな若いの? 

なんせ、ディズニーの看板を背負ったティーンエイジ・アイドルとして大ブレイクしたのは7年前なのだから。10代からすでにショウビズ界で活躍しているわけです。

そして、過去に4枚CDをリリースし、その内2枚は全米1位を獲得している・・・アメリカではもうお馴染みの存在なわけですね。

そんな彼女だからこその、今回の大胆すぎるイメージチェンジは波紋を呼びましたよね。ヒップホップを意識したダーティサウスな音楽的なスタイルしかり、ロングヘアをバッサリカットして、露出の強い衣装でパーティーに明け暮れるヤンチャなPVしかり、全裸鉄球(笑)PVしかり、しまいにはロビン・シックと放送ギリギリのライヴパフォーマンスを披露したり・・・まあ、こうした攻めの姿勢に、従来のマイリーを知るもので驚かない人はいないでしょう。たとえば、同じくヌーディーな衣装を着るにしても、マドンナやレディー・ガガ、あるいはブリトニーだったらこうはならないわけです(彼女たちはセクシーさをある種の売りにしているのだから)。まさに、従来のファンをあざ笑うかのような振る舞いと言えそうです。

じゃあ、彼女はそうしたマドンナに続くようなポップアイコンになろうとしているのか、と言われたら微妙なところではあります。なぜかって、脱いでも彼女全然セクシーじゃないでしょ(笑)。

いや、それは半分冗談なんだけど、ただ、今回のこの大胆な路線変更は、極めて計算されたものであることは間違いないと思うんですよね。アメリカの音楽業界って移り変わりが激しく、ティーンアイドルとして大成功を収めてしまったが故に、そのイメージに捕らわれて次の一歩に進めないってことは十分考えられると思うんです。だからこそ、この挑発的な新作は、彼女がアイドルから脱皮して一人のアーティストに生まれ変わるために必要な儀式みたいなもんじゃないか、と傍からみてそう思うわけです。

ということで、実は過去作をきちんと聞いたことがないので、これまでとの違いを比較する視座を持っていないのですが、いわゆるアメリカン・アイドルからの脱皮をはかる意欲作はそれ自体魅力的ではあるので、さっそく中身にうつっていくことにしましょう。


(1)Adore You
ピアノの低音が響き渡るどっしりとしたビートにのせて気だるく歌うマイリー。キャッチーさなし、一見さんお断りみたいな、そんな挑戦的なオープニング。オーレン・ヨエルという無名のプロデューサーによる曲で、ソングライティングは新進気鋭のステイシー・バースが担当。歌詞の内容はストレートなラヴ・ソングで、じわじわと来る感じかな。でも、だからこそ、この曲の歌い手として相応しいシンガーがいるんじゃないか、とふと思ってしまいました。

(2)We Can't Stop
アルバムからのリードシングルであり、新生マイリーを象徴する、ダーティーサウスなパーティー賛歌。本作のエグゼクティブ・プロデューサーであり、アルバムの楽曲の大半を手がけるマイク・ウィル・メイド・イットにとっても、売れっ子プロデューサーとしての地位を確立した重要曲として記憶されるでしょうね。全米2位の大ヒットを記録しています。この曲の素晴らしいところは、パーティー大好きソングなんだけど、曲調はそれほど弾けてないというところ。ベタなダンスナンバーとしてではなく、でも確実に盛り上がる一曲という、マイク・ウィルの絶妙なプロダクションがヒットのポイントだったのではないかと思います。もちろん、このインパクト大なPVもね。

(3)SMS (Bangerz) feat. Britney Spears
前曲から一転、軽快な、それでいてあくまでアーバンテイストな一曲。そして、意外な組み合わせ、ブリトニー・スピアーズとの共演。実はブリちゃんが歌ったほうがしっくりくるような感じなんだけど(っていうとアレだけど)、そんなノリノリで勢いの一曲です。

(4)4X4 feat. Nelly
ビート聞いたら、すぐにわかるんですよね・・・ファレル曲です。今年はファレルの年でもありましたが、やっぱりみんなファレル詣したいんだなあと。おもしろいのは、アコーディオンやスパニッシュギターの音を用いたラテンフレイヴァーな楽曲に仕上がっていること。さすがの引き出しの広さw ネリーがラップで参加していますが、マイリー自身もラップしていて、いろいろな要素がごちゃまぜな、ある意味これぞポップな一曲ですね。

(5)My Darlin' feat. Future
マイク・ウィルと相性のよいフューチャーを迎えた、ダークな雰囲気のミディアムナンバー。ラップというより完全にデュエットしてますね、フューチャーさん。ここでも例のロボチックな歌声を披露しているわけですが、二人で声を重ねても、まったく溶け合わない感じが、また何とも(笑) そこでフューチャー要る?と思わずツッコみたくなってしまいます。そして、よく聴くと、フックで使用されているメロディーがベン・E.キングの名曲「Stand By Me」という・・・なんかもうめちゃくちゃですなw

(6)Wrecking Ball
ドクター・ルークとサーカットがプロデュースした、ドラマティックなポップバラード。セカンド・シングルとしてリリースされ、すぐさま全米1位を獲得しました。そして、なんといっても印象的だったのが、全裸鉄球ですよ! まあ、パーティー賛歌から一転して、物憂げなバラードを発表したという、その振れ幅みたいなのもインパクトが大きかったと思うんですけどね。

(7)Love Money Party feat. Big Sean
これまたゴリゴリなヒップホップ・チューン。マイク・ウィルが得意とする曲調なのだけど、タイトルがまんま過ぎて(笑)。そしてこの曲ではマイリーちゃんが、威勢よく捲し立てるように早口で歌いまくります。また、ビッグ・ショーンがラップで参加していますが、あんまり存在感がありません(汗)

(8)#Getitright
口笛とギターがごきげんなフレイヴァーを醸し出す一曲。こちらもファレル曲で、それはやっぱり一聴してわかるレベルのわかりやすさなのだけど、例の口笛&ギターをチャド・ヒューゴが担当しているというのが、うれしいサプライズかもしれませんね。

(9)Drive
こちらも歌い上げ系のミディアム・バラードなんだけど、マイク・ウィルのトラックはやはりクールで(6)とは違う質感をもたらしていますね。

(10)FU feat. French Montana
ラミ・サミア・アフニという人がプロデュース(どんな人か知らないのだけど)。マイク・ウィル一辺倒にならないように、いろいろなプロデューサーの曲をうまく配置してバランスを取ってますね。こちらも、激しく歌い上げるマイリーが印象的。3拍子系のナンバーです。こういう曲は彼女に合っているなあと思うだけど、フレンチ・モンタナ、いるかな? なんでこんなにラッパーを登場させるのだろう、と個人的に思うのですが。

(11)Do My Thang
共同プロデューサーという形でウィル・アイ・アムが関与。曲の展開からここで4つ打ち来るかと思わせてそっちいかないっていう、安易にEDMに流れないスタンスは好きですね。この曲でもマイリーはラップ唱法を披露しています。

(12)Maybe You're Right
クレジットにジョン・シャンクスの名前があります。ということで、生ドラムとピアノが力強く響くロックテイストな一曲です。従来のファンはこの手のサウンドの方がなじみがあるのかもしれませんね。

(13)Someone Else
最後まで攻めますね。マイク・ウィル得意のシンセやピコピコ音が響き渡るクールなトラック。あんまりエンディングっぽい感じがしませんけどね。


全13曲収録。デラックス盤はさらに3曲追加されていますが、個人的には通常版だけでお腹いっぱいという感じです。チャートでは、彼女にとって3枚目の全米1位を記録しています。

全体として、マイク・ウィルはやはりいい仕事をしているし、アルバムのタイトル通り、バンガーと呼ぶにふさわしいインパクトのあるダンスナンバーも多数収録されていて、彼女らしいエネルギーに満ちたポップアルバムに仕上がっていると思います。もちろん、方向性としてはアーバンであり、ダークでエッジィなサウンドだから、過去作の延長的な意味での「ポップ」ではないのだけど、このある種のゴチャゴチャした感じは、ポップとしか言いようがないなあと感じました。

もちろん、このようなアプローチに対して好みはわかれると思うし、マイリーちゃんらしさって結局なんなのだろうという話ではあるのだけど、逆にいままで彼女のことを知らなかったという人にはぜひオススメしたい作品ですね。

いまのアメリカにおけるポップスのあり方みたいなものが象徴されたアルバムではないでしょうか。




2 件のコメント:

  1. ディズニー出身のアーティストは皆さん、大胆イメチェンかましてきますね(笑)
    ブリトニーやらアギレラとか。
    まだこのアルバムチェックしてないので、今日辺り聞いてみたいと思います!

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  2. Miley ダイエットに成功してからすごいですよねーいろんな意味で。
    バンガーズ1曲目のadore youのPV
    最近出来上がったみたいです
    下着姿でお布団のかなでゆるーい感じ♪
    おすすめでーす
    とちゅうでいっつもねむたくなる曲

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