2013年7月13日土曜日

Ciara『Basic Instinct』(2010)

シアラの新作『Ciara』がリリースされたので、早速聞いています。なかなかの意欲作なのだけど、そのアルバムを聞きながら、「では結局アレは何だったのだろうか」と思い、ふと聞き直したのが、このアルバムでした。

「Ride」というヒット曲を生み出しながら、セールス的には散々な結果に終わったこのアルバム。このどん底の失敗から見れば、新作における起死回生のハードルはあまりに低いように思えます。が、しかし、今回は万全の対策をもって勝負してきたようです。おそらく、そのことはチャートにある程度反映されるでしょう。そもそも、あれだけコケてしまうと、同じ舞台に立つことすら困難になるんですから、それは努力の表れと言っていいと思います。

さて、このコケたアルバム、全米チャートでは初登場44位という過去作からすると信じられない結果を残しています。リリースのタイミングが悪かったのかもしれません。でも、内容的に決して酷いという訳ではないんですよね・・・これが。スルーするのはもったいないと思うので、これを機に、このアルバムについてレビューしておきます。やっぱり、この作品があってこその次作であることには違いないのでね。

今作ではエグゼクティブ・プロデューサーとしてトリッキー・スチュワートとザ・ドリームを迎え、アルバムの大半を彼らがプロデュースしています。いわばヒットメーカーの鉄板コンビなわけですが、コケた原因を考えると、この二人に頼りすぎたということもあるかもしれませんね。全体としてシアラの特徴をうまく引き出したプロダクションではあるのだけど、これまでのシアラを反復しただけという感じもするので。


内容に移ることにしましょう。


(1)Basic Instinct(U Got Me)
ギターの音がインパクト大なオープニング。シアラのラップというか語りのようなイントロがあり、その後にフックへ展開。変則的な感じで、曲の後半に向けてどんどん盛り上がっていく感じですね。これからの期待感を煽る一曲だと思います。

(2)Ride feat. Ludacris
R&Bチャートで3位を記録したヒットナンバー。これはかなり聴きましたねw めっちゃカッコイイ。トランス的なシンセループが曲全体を支配していて、アップテンポなダンスビートのような錯覚を覚えるのだけど、実際はダウンテンポのR&Bだったりするのがおもしろいです。最近また注目されているスクリュー・ヴォイスを取り入れてますね。あと、ここでのリュダクリスの客演仕事はさすがとしか言い様がない。ビー・メジャーによるリミックスではアンドレ3000もまた味のあるラップを披露してますが、残念ながら本編には収録されていません。そういえば、エロ過ぎるPVでのコレオグラフも話題でした。


(3)Gimme Dat
シアラらしいアップテンポなダンスナンバー。彼女の代表曲である「Goodies」や「1,2 Step」あたりを高速にしたようなサウンドになっています。3rdシングルとしてリリースされました。


(4)Heavy Rotation
(3)と同じようなノリのベース・ミュージックが基調になった一曲。シアラらしいダンサブルな曲調。

(5)Girl Get Your Money
ベースから少し離れ、クラップやマーチング・バンド的な音にシンセのグルーヴを交えた、非常にポップな一曲。元気があります。ラップっぽい歌いまわしも交えつつ、ちょっとアイドルっぽい雰囲気も醸し出しているのが魅力w

(6)Yeah I Know
少しスローダウン。きらびやかなシンセが渦巻くフックと不穏なベースが鳴り響くヴァースのコントラストが印象的。

(7)Speechless
アルバムからのセカンド・シングルですが、残念ながらヒットしませんでした。トランペットっぽいシンセがやかましいなあという印象w 


(8)You Can Get It
跳ねるようなピアノからしてドリーム節全開の、ミッドバラード。

(9)Turn It Up feat. Usher
ここに来て再度ギアチェンジ。同じレコード会社に所属しているアッシャーを客演に迎えて、エレクトロ調のダンス・ポップに挑戦しています。せっかくのアッシャーが・・・と言いたくなるのだけど、アッシャーもこの手のサウンドに参入してきた時期だったので、利害は一致していたと言えるかもしれないですね。結果、共倒れだったと思うんですけどw

(10)Wants for Dinner
裏打ちのリズムでレゲエっぽいのかと思いきや、シアラは全く意識することなく普通に歌ってるという、なんとも方向性が不明確な一曲。アルバムの中では間違いなく変化球なのだけど、よくわからない感じに仕上がってますね。

(11)I Run It
アルバムのラストを飾る、ミディアムテンポのR&B。メロウな雰囲気で、これもシアラらしいですね。


全11曲収録。全体としてシンセサイザーの音を主軸に、ポップさが全面に出た作品だなと思います。その分、R&Bシンガーとしての魅力があまり発揮されず、物足りなさを感じる部分もあるのかなあとも。あんまりポップすぎるのって向こうじゃ評価されないからなあ。

とにかく「Ride」は良かったんですけどね。他の曲でそれほど魅力的なダンスナンバーを生み出せなかったことも、失敗の要因かもしれませんね。



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