2013年7月20日土曜日

J.Cole『Truly Yours 1,2,3』(2013)

J.コール。いまもっとも勢いのあるラッパーの一人と言ってもいいでしょう。

ラップだけでなく、自らトラックメイキングもこなす、この若き才人が先日セカンド・アルバム『Born Sinner』をリリース、ヒットを飛ばしています。

当初は6月25日に発売が予告されていたものの、カニエ・ウェストの問題作『Yeezus』がその1週間前に発売されることを受けて、あえて前倒しして同日リリース。結果、チャートアクションでは僅差ながら2位につけこみ、その後、2週間して1位に登りつめるという大躍進を遂げました。セールス自体、初週で30万枚近くの売り上げで、ヒップホップのアルバムとしてはかなりのヒットと言えると思います。

ということで、このアルバムをレヴューしようと思ったのだけど、実はまだあまり聴きこめていないのです(汗) 代わりと言ってはなんですが、結果的に3部作へと変貌を遂げた『Truly Yours』の諸作を今回は取り上げたいと思います。



この『Truly Yours』シリーズの第1弾は2月12日にリリースされました。5曲入りのフリー・ミックステープ。プロモーションの一貫だと思いますが、内容的には『Born Sinner』からのレフトオーバー。コレ自体十分に聴くに値する楽曲群だと思います。

Download Mixtape | Free Mixtapes Powered by DatPiff.com

(1)Can I Holla At Ya
ローリン・ヒルの「To Zion」をサンプリング、あの爪弾くギターのイントロから始まるトラックまんまに、ラップしてますね。権利関係があるので、これを本編に入れるのは大変かも・・・ある意味ミックステープならではという感じでしょうか。

(4)Tears for ODB
故オール・ダーティー・バスタードへのオマージュでしょうか、ピアノ主体のドラマティックなトラックで、ラップも力強く感動的。

(5)Stay (2009)
最終的にはNasの「Life Is Good」に収録されることになった、No.ID制作のトラック。もともとJ.コール用だったとか・・・比較するとトラックも少し手が加えられているようですが、思わぬ形でJ.コール版がお披露目となったわけですね。


この第1弾から2ヶ月が経過した4月30日には、アルバムの発売日の告知とともに、第2弾となる『Truly Yours 2』がリリースされました。今度は6曲入りのミックステープです。今回は、ヤング・ジージーや2チェインズなどのゲストの参加もありますね。

(1)Cole Summer
再度ローリン・ヒルを引用、今度はディアンジェロとの濃厚デュエット「Nothing Even Matters」を使用していますね。歌詞に「ミズ・ヒル、オレを訴えないでくれ」との一節があって面白いのだけど、歌詞は自己言及的な感じになっていますね。

(2)Kenny Lofton
マンハッタンズの「Hurt」を早回しでサンプリング、ソウルフルなトラックになっています。ケニー・ロフトンさんは、おそらく野球選手の名前でしょう。

(5)3 Wishes
ジェイク・ワンがプロデュース。2分半の短い曲ですが、その中に込められた3つの願いが・・・かなり暗い感じです。


この2つのフリーEPを経て、いよいよリリースされた『Born Sinner』ですが、そのデラックス版(輸入盤のみ)のボーナス・ディスクとして登場したのが『Truly Yours 3』です。第3弾にして初めてのフィジカルリリースとなります。全5曲の収録です。

(1)Miss America
昨年の11月にリリースされたプロモーション・シングル。ダークでヘヴィーなトラックに乗せて、ヒップホップ業界に対するアレコレをラップしています。



(2)New York Times feat. 50 Cent & Bas
50セントとレーベルメイトのBasを迎えた一曲なんだけど、50セントがラップしてないw フックだけさせるとか起用法が大胆過ぎますね。でも、カッコイイですね。

(3)Is She Gon Pop
軽めのドラムパターンにレコードノイズを組み合わせ、不思議なグルーヴ感を演出したトラック、フックがなくてひたすらラップして終わりな2分45秒。

(4)Niggaz Know
ティンバっぽい細かく刻んだリズム・パターン。ビギー×ボンサグの「Notorious Thug」を引用し、どことなくボンサグっぽいフロウを披露。こういうラップもできるのね、という変化球。

(5)Sparks Will Fly feat. Jhene Aiko
デビューが待たれるシンガーのジェネイ・アイコを迎えての一曲。クリスチャン・リッチという人がプロデュースしており、この曲だけやはり音の質感がJ.コールのそれとは違いますね。エレキギターを大胆を取り入れたり、アルバムの中ではポップな部類かもしれないですね。





ということで、『Truly Yours』シリーズ、全部合わせたら16曲で、これだけでフル・アルバムのヴォリュームになりますね。『Born Sinner』が表だとしたら、こちらのほうが裏のJ.コールを垣間見れる作品群と言えるかもしれません。J.コールのファンにとっては、両方揃えると、かなりのお得感がありますね。

それにしても、商売上手だわ・・・彼の才能が為せる技ではあるけど。



0 件のコメント:

コメントを投稿